キャンセルというリスク
ニュースにも定期的にあがってくる飲食店のキャンセル問題。貸し切りの直前でのキャンセルでも日々発生していますし、少人数のキャンセルも含めると相当な数にのぼるのではないでしょうか。その後の有志によるレスキュー的購買や利用で美談にされがちな話題ですが、業界としてキャンセル問題というのは頭の痛い問題であり続けています。
飲食店にとっては、その席を確保するために他の予約を断っていたりした場合は大きな機会損失ですし、食材の事前の仕込みが必要な場合は食材のロスが発生し、こちらも大きなコスト要因になります。キャンセルに伴うルールを定めているところもありますが、それが確実に問題なく回収できるかというとなかなかそうは簡単にはいかないケースもあるようです。
キャンセルをしてきたお客さんが巡り巡って上顧客になってくれれば良いのですが、実際はむしろ逆のことも多く、店からするとキャンセルの問題は頭痛の種ではあってもなかなか解消のしようのないものではないでしょうか。
今回は、そうしたキャンセル問題を解消する一つのアプローチである、キャンセル待ちが簡単に行えたり、キャンセルされた席をマッチングしたりするシステムについて考えてみたいと思います。早速いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 キャンセル待ちを蓄積する
キャンセルが発生したとしても、すぐにその席が埋まるのであれば被害が最小限で済みます。とはいえ、キャンセルされてからの時間で、自然にその席が埋まるのを期待するのはリスクが高過ぎます。そもそも、キャンセルされたことを知るすべもないので、そのお店に興味がある人がいたとしても、ちょうど良いタイミングでコミュニケーションをとる機会は普通、ありません。
そこでキャンセル待ちを簡単に蓄積できるようにしましょう。同じ曜日でたまたま席が取れない場合に、電話応対で簡単にキャンセル待ち登録できるようにしましょう。予約者にもキャンセル待ちである旨を伝え、もしキャンセルが発生した際には、簡単な操作で通知を飛ばせるようにしましょう。
キャンセル待ちの権利を持つ人の回答には期限をつけ、順にキャンセル待ちから予約に進むかを確定していきます。これを1件1件電話となると現場の作業が増えすぎるので、SMSやメール等の手段で自動化し、1クリックでそのまま本予約へ進めるようにすべきです。キャンセルされた席が埋まれば、お店もハッピーですし、キャンセル待ちしていた人もハッピーです。ある程度の人気店や、人気の時間帯に限られるかもしれませんが、キャンセル待ちを資産として蓄積できるようにすることをおすすめします。
Point.2 各メディアで自動通知する
お店のファンが多くなってくると、近くに住んでいたり、勤めていたりする方の中には「今日空いてるなら行こうかな」という人がいるかもしれません。そうした方達に、簡単にキャンセルが発生して空きがでたことをお知らせする仕組みを持つべきです。とりわけ、常連さんと呼べるようなリピーターを抱えているお店は、こうした情報を積極的に発信すべきです。
もちろん、ブログやFacebookでそういった発信をしている人もいるかもしれませんが、キャンセルのように時間との勝負のものは相手に確実に届くPush型の情報発信手段を用いるべきです。例えば客層によってはLINEを軸にした運用も良いでしょうし、メールマガジンの仕組みを使うのも良いでしょう。スピーディーかつ簡単に送れることが重要です。
直前ではないキャンセルの場合はあまりおおごとのように告知するのは店の印象を下げる原因にもなり得ますが、直前のキャンセル対策としてはビール一杯無料等、何かしらのインセンティブをつけて発信するのがお勧めです。こうしたキャンセルによって空いた穴を埋める通知動作も、忙しい店舗業務の中でミス無く1分以内に行えるようにシステムを簡素化すべきです。
Point.3 適切なタイミングでリマインドする
キャンセルをする方の中には、キャンセルすることは決まっているのになかなか連絡してこない、または連絡すらしない、といった悪質な方もいます。そうした方に、できるだけ早くキャンセル連絡をしてもらうために、適切なタイミングでリマインドメールやメッセージを送信する仕組みにすべきです。例えば3日前に、「これ以降のキャンセルはキャンセル料が発生します」といった文言とともにリマインドメールを送信するのも一つです。さらに強くいくのであれば、予約時にデポジット、という話にもなりますが、まだまだ日本では一般的ではないため、お勧めしづらいのが実情です。
キャンセルをされたくないのでキャンセル連絡をするための動線を複雑にしてしまいがちですが、メールやメッセージでも、行く・行かないの意思表示が迷わずにはっきり行えるように設計すべきです。冷たいコミュニケーションだとただのキャンセル督促になってしまいますが、文面やタイミングの工夫で、お店でお迎えするためのコミュニケーションとしても使えます。
性善説と性悪説のはざまで
なかには営業妨害のために行く気もないのに予約をして、キャンセルをしてくる人もいるかもしれませんが、キャンセルする側には何かしらの事情が多いのも事実です。店側としてはキャンセル対策をすればするほど予約自体が減ってしまうことが怖いためになかなか大きな取り組みをできないというのもまた事実です。
高級レストラン等では、キャンセル料を設定しているところもありますが、ドタキャンの場合に実際にそのキャンセル料を徴収できるのかという問題が残ります。事前にクレジットカード情報を聞いて予約を確定する方法も考えられますが、気軽に予約ができる日本の慣習からすると相当強気な施策なため、すべてのお客さんに適応するのはリスクが大きく、なかなか踏み切れないオーナーも多いのではないでしょうか。
出来る限りキャンセルを未然に防ぎ、それでもキャンセルの人にはできるだけ早くキャンセルを連絡してもらう、この適切なバランスを見極め、キャンセルという魔物との戦いに挑んでみてください。