手が離せない業務の効率化
ファーストフードを中心に、ドライブスルー業態は日本でも完全に定着しました。東京都内ではそこまで見かけませんが、少し郊外になるとそこはもう車社会。特定の時間に限れば、ドライブスルーのほうが売上が大きいというお店も多いと思います。
そこで問題になるのが業務効率です。ドライブスルー専用人員を割けるのであればいいですが、そうなると業務効率にばらつきがでがちです。理想は注文をさばきながらも注文を受け付けることができる機動力の高いドライブスルーではないでしょうか。とはいえ、注文を処理しながら、同時に次の注文を受け付けるのは、レジやPOSシステム等への入力も含めて大変です。それをこなせるスタッフの習熟度やスキルの問題も出てくるでしょう。
一つの具体案として考えられるのが音声認識AIを活用した注文受付です。とはいえ、人工音声に注文を受け付けさせるのではなく、補助的な役割としてのシステムです。どのようなものか、いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 会話内容から注文候補を作成
まだまだ注文などは、人間での対応が好まれる傾向があります。これは認識精度の面からも、社会的、心理的な側面からも当面はそうであることが予想されます。そのため、音声認識AIを活用するにしても、お客様と直接やりとりするようなものは時期尚早ともとれます。
そこでお勧めなのが、お客様との会話をモニタリングし、注文内容と思われるものを自動的にレジシステムと連動して表示する仕組みです。会話内容全体を抽出するのではなく、ドライブスルー対応者が「ご注文を確認いたします」といったような決まり文句以降の内容を精緻に解釈することで、精度の高い注文内容認識が可能になります。音声認識の精度は年々高まっており、発話内容を認識するのはすでに実用レベルにあります。あとはその入力情報をどう店舗側の注文として連携させていくかの問題になります。完全に人を代替することはできなくても、人の補助としての機能は十二分に期待できるでしょう。
ドライブスルー対応スタッフはレジの前にいなくても、何かをしながらでも、注文内容を正確に記録することができるようになり、また、注文された商品を作る前に忘れないうちにレジに立ち寄るという必要性が弱まるため、導線改善にもつながります。
Point.2 商品データベースや会話データから学習強化
注文確認の際にはできる限り正式名称で伝えるようにスタッフに伝達すべきですが、商品名が長すぎる場合や、略称がある場合、さらにはスタッフ固有のイントネーションの問題など、単純な音声認識AIでは精度があがらない場合も考えられます。
そこは継続的に人工知能の学習強化を行うことで精度を高めていきましょう。可能であればレジシステム側からその注文内容理解が正確だったのかをフィードバックできるようにすれば、学習スピードがはやまります。また、新規メニューなどの学習も継続的に行う必要があるため、システムのアップデートは本部で集中的に行えるような仕組みが望ましいでしょう。
スタッフの声を学習すればするほど精度があがっていくことが期待できるため、1ヶ月前は認識できなかったものも、当たり前のように処理できるようにもなるでしょう。
Point.3 声色認識でスタッフ識別も
これはどこまで必要性があるかは会社によりますが、注文の応対者を個別に識別したいという場合もあるでしょう。事前に声色をシステムに学習させることで、誰が応対したかを識別できるようにすることができます。これで多人数でのドライブスルー対応が可能になり、チーム内の手があいている人がマイクをとり、対応し、注文内容が作成される、という一連のフローが効率化します。
店舗数の多いお店などは、全国規模で声色マッチングを行うと誤認識のリスクもあがるので、声色認識に関しては店舗単位での限定にするのもよいでしょう。このあたりは人事管理システムと連動することができれば、その店舗にいる人、出勤している人は誰かといった絞り込みができますので、相当な精度が実現できます。
とはいえ、ここまで高度な連携は必要ないケースがほとんどですので、あくまで利用客側の認識にとどめ、システムの規模や複雑さを軽減するのも有効でしょう。あくまで業務効率向上、言うなればコストカットが目的なため、投資しすぎるのも必ずしも正解ではない場合があります。
裏方AIの可能性
とかく人工知能の話題になると、人にとってかわる、といったものばかりが注目されますが、より社会にインパクトを与えるのは、人の作業のスピードや正確さをサポートする人工知能と思います。音声認識はまだまだ途上の分野ですが、amazonやGoogleなど、急速に進化している分野でもあります。既に実務投入レベルにある技術ですので、裏方としてのAI活用を是非検討してみてください。