群雄割拠の時代
配送業者といえば、ヤマト運輸に佐川急便、日本郵便の三強が、個人向け配送の圧倒的シェアを持つ時代が長く続いてきました。そんな中、amazonのローカル配送業者との取り組み拡大を皮切りに、amazonが主導するかたちで中小の配送会社が膨大な量のamazonの配送を受け持つ状態になりつつあります。置き配という配送スタイルも定着しつつあり、大手各社もその流れに対応するような施策を打ち出しています。
小売り側が独自の指針をもって物流を飲み込もうという時代にきているわけですが、そんな時代だからこそ、中小の配送業者にとってはチャンスでもあります。この時代に生き抜いていくためのシステム構築について、いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 amazon等との高度な連携
発送側との連携をいかに効率的に行うかが、配送業務のコストを抑える上でとても重要です。さらに、当日配送が珍しくない昨今、スピードを担保するうえでも、可能な限り自動化できるものは自動化すべきです。そしてエラー処理も同様に洗練させてください。万が一、処理が失敗した場合に、その荷物が行方不明になっては影響が大きくなります。精度高く確実に処理できることは大前提になります。
amazon側のシステムと高度に連携し、発送依頼を柔軟に取り込めるようにしましょう。また、長期的な視点にたてば、amazon以外の荷受けもできる余地を設計段階から組み込んでおくべきです。一社依存はあまりに危険ですので、一つのシステム下で、複数の大口発送主と取引ができる体制を整えるべきです。
各社の連携や仕様変更への対応など、スピーディーに開発力が求められることも想定されます。社内、もしくは近しい位置に、機動力ある開発リソースを確保するのが良いでしょう。
Point.2 次、伺いますメッセージ機能の実装
大手配送業者にとっても、中小の配送業者にとっても、不在による持ち戻りというのはなんとしても避けたいことだと思います。宅配ボックスが普及しているとはいえ、数がたりません。そこで少しでも配達率を高めるために、「次に伺います」というメールまたはショートメッセージを送れるような機能を実装しましょう。
一部オンラインショップは、荷物の持ち出し時点でのスキャンデータをもとに似たようなことをしていますが、それに加えて、配送順の次になった時点で、ドライバーが1タッチでその配送先にメッセージを送れる機能を提供できると、さらに配達率が向上します。配送先の携帯電話番号がわかることが多いと思いますので、ショートメッセージによる送達が現実的です。受け取れる場合はそのままで良いでしょうし、受け取れない場合には、「もう少し後できて!」というリクエストを簡単に送れるようにするのも良いかもしれません。
5分前まではいたのに、といったニアミスを避ける効果が見込めるのはもちろん、ちょっと外出先にいた、というシチュエーションでも、受取人に自宅に戻るきっかけを提供することができます。現場の負担は増えがちにはなりますが、配送スタッフ用のアプリの工夫でなんとかなる領域でもあります。付加価値の一つとして検討してみてください。
Point.3 IVRによる自動音声対応
中小の配送業者になると、不在伝票の連絡先がドライバー直通の携帯電話になっていることも多いでしょう。これは直接連絡・調整ができるという意味ではとても便利ですが、多忙を極めるドライバーの負担を増やし、「なかなかつながらない」などの顧客クレームの原因にもなりがちです。ここは中央集中型の問い合わせセンターの構築を検討すべきです。
とはいえ、大量のオペレーターを雇うのは現実的ではありませんので、自動応答によるIVRシステムにし再配達依頼を自動化することで、最小限のオペレーター人数で運用することができます。現場ドライバーには最終確定のもののみが通知されるように、時間のすべてを配送に使えるようにすることで、ドライバーも会社も最大限の力を発揮できる状態が実現します。
さらに割り切るなら、電話での問い合わせを一切受け付けないという力技もなくはありません。電話で問い合わせしたい層は確実に存在するためそうした人たちからの不評を買うことにはなりますが、スマートフォンで簡単にアクセスできるようにすることで、大半の人にとっては問題ない仕組みは構築可能でしょう。一切受け付けないのではなく、LINEや、チャットでのみ対応するのも折衷案としてはあり得ます。電話と違って複数人の対応を同時にできることと、相手に対して情報を送ることができるので、一人のスタッフでより多くの問い合わせを効率的に処理できるメリットがあります。
小さく最適化
システムというと、どうしても資本力が勝る印象がありますが、小さくシンプルに構築することで、大企業に負けないシステムにすることは可能です。大きな会社になればなるほど、様々なサービスや様々なケースに対応しないといけないため、どうしても複雑になります。そこと差異化し、スピーディーかつ正確に荷物を届けることに特化したシステムにすることで、労働集約ではなく、自動化された業務体制が実現できます。
日々の業務に追われ、現状のシステムとなんとかやりくりする日々もいつか限界がきます。チャンスだからこそ、1歩でも0.5歩でも先んじた行動を検討してみてください。