胃袋争奪戦
街を歩けばコンビニがある。この当たり前の光景が当たり前になってしまって何年も経とうとしています。コンビニはその汎用性から、各方面の胃袋をものすごい勢いで吸収し、色々な業界の統廃合を促している強烈な存在であることは今後も変わりません。一方で、仕出し屋や弁当屋と呼ばれる業態は、おもに事業者向けの昼食宅配や、旧来からの行事への食べ物提供のビジネスを続けています。スーパーマーケットの惣菜コーナーは引き続き強敵ですし、大口需要に熱心に取り組んでいるお店も珍しくありません。
この環境下で、仕出し屋に代表される、旧来からの胃袋業はどのような活路を見いだしていくべきか。法人向け需要は需要で争奪戦が加速するなか、ホームページを中心とした施策が何ができるのか、あらためて整理してみましょう。
Point.1 こだわりを可視化
仕出し屋も多種多様ですが、何かしらのこだわりを発掘することができるはずです。それが原材料に関することでも、製造工程や調味料のことでも構いません。玉石混交の中で、個人、法人問わずに「選ぶ理由」をどこも探しています。それが「値段」というところもあるでしょうし、「早さ」や「おいしさ」かもしれません。
その選ぶ理由をホームページ上で提示するのはとても有効であり、絶対にすべきです。「人様に誇れるこだわりなんてないよ」という方もいるかもしれません。本人が気付いていないだけで、第三者から見ればこだわりというのもよくある話です。自分達だけの殻に閉じこもらず、冷静な判断で中身を構築していってください。
もし自分たちでうまく見つけられない場合には、お得意様にたずねてみてください。それが安さなのか味なのか、はたまた早さなのか、色々な可能性がありますが、何かしらのヒントは得られるはずです。こうした自分たちの客観視は定期的に行うのがお勧めです。
Point.2 商圏の拡大
今までの商圏にとどまっているとじり貧、というのは、皆さんが体感している現象かもしれません。厳しい競争により廃業した仕出し屋も多いでしょう。そうした仕出し屋空白地帯の吸収も含めて、商圏は拡大していくべきです。
もちろん、配送の問題があるので、何でもかんでも対応できるわけではありませんが、朝の時間帯の配送エリア、昼の時間、夕方の時間と、時間帯によって配送エリアを変えたり、現状の配達エリアをベースに、「ついでに回れるエリア」を配送エリアに加えていく等の工夫は可能と思います。毎日が難しければ、水曜はこのエリアまで対象といった変則的なかたちで対応するのもありかもしれません。
大切なのは、こうしたことを「詳しくはご相談ください」とホームページ上で濁さずに、積極的に掲示していくことです。自分のエリアが配送エリアに入っていなければ、よほどのことがない限り訪問者はそこでページを閉じてしまいます。それであれば、問い合わせをしてもらえるように仮に断ることになっても配送エリアに加えておくべきです。
定期的に巡回はできなくても、曜日限定でエリアを広げることができるかもしれません。運営やスタッフの出勤状況と相談しながら、こうした合わせ技で対応エリアを広げられないかも検討してみてください。
Point.3 目的ごとのケース提示
仕出し屋に求められるニーズはどんどんと多様化しています。その一方で、個人ユーザーや、経験の浅い法人ユーザーを中心に「こういうことも頼めるのかな」という不安を抱えています。イベント需要であればなおさら不安でしょう。日常的に頼んでいない担当者からすると、新しい問い合わせをするというのは非常に面倒であり怖いことです。
サービス一覧のところに「こういうことができます」と掲載している仕出し屋は多いですが、それがあまりイメージしにくいものであることは否めません。コストありきの部分も大きいので、同じ弁当ひとつとっても、300円で作ってもらえるのか、2000円の豪華なものも作ってもらえるのか等、訪問者側の疑問は尽きません。
そこで、今までの事例をひもとき、どういったニーズに、どういった対応をしたかを積極的に掲載しましょう。例えば少しでも安くしたい、という弁当事例ではそのコスト削減への工夫を掲載したり、豪華な弁当をという事例では、いかにして品質をあげる努力をしたか、といった裏話を掲載してください。こうすることで、自店の対応力をアピールすることもできますし、「うちの要望もうまく対応してくれそう」と訪問者に思ってもらうことができるはずです。
事例掲載の際はできるだけその事例の背景にある依頼目的もわかるように文章化し、同じような境遇の人たちがインターネット検索経由で見つけられるようにしてください。
間に合わせ以上の価値を
仕出し屋業界は、ホームページ経由の問い合わせが少ないという理由で、ホームページが軽んじられている傾向があるように思います。むしろホームページが充実しているのは少数派で、タウンページの情報しかないお店も珍しくありません。
この状況下はチャンスです。仕出し屋自体の高齢化が進み、廃業も進む厳しい状況だからこそ、新しい需要を確実にとりにいく工夫を検討してみてください。