輝く個性
インターネットの普及は、日本酒業界にも大きな影響を与えています。今までは知る人ぞ知るだけだった銘柄が、一躍脚光を浴び、品切れとしてプレミアがつくという話も珍しくありません。いわば、埋もれていた個性が輝く時代になったと言えます。もともとこだわりを持った商品が多い業界だけに、良いものが世に出やすくなった、という意味では、業界として良い時代になったと言えるかもしれません。
その一方で、日本酒にまつわる情報はまだまだ少なく、どこで何が飲めるかといった情報も不足しているのが現状です。ワインのように世界的に情報が蓄積されているものに比べると、情報文化という意味ではまだまだこれからなのかもしれません。世界に向けてどんどんと輸出されつつはありますが、世界レベルでの認知形成という意味でも、まだまだやるべきことは多いようです。日本国内の流行と、海外での流行が必ずしも一致しないことも、生産者を悩ませる要因になることもあるようです。
今回は、こうした日本酒のレビューや情報をまとめたポータルサイトのシステムをどのように構築すべきかについて考えてみたいと思います。早速、いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 銘柄ごとの情報ページを基本に
日本酒は銘柄で選ぶことがほとんどだと思います。ポータルサイトの基本単位は銘柄にし、そこにレビューや関連情報を蓄積していくようにしましょう。銘柄は酒蔵の情報に属するようにし、一覧性や検索性を高めます。こうして情報を構造化しておくことで、結果として検索エンジン最適化にもつながります。ある程度自動化できる構造化もあれば、人の手により定期的に整理する必要があるものもあるでしょう。価値の源泉となりうる部分には手間をかけることを惜しまないのも重要です。
一つの銘柄のもとにたくさんの情報が集積することで、何より同じ商品が好きな人達が集まる場を作りやすくなります。レビューもそうですし、掲示板のような自由な意見交換の場があっても良いでしょう。
Point.2 銘柄認識のアプリ配布も
日本酒のラベルには非常にユニークなものが多く、それだけで銘柄の特定が容易にできるという特徴があります。情報ポータルサイトである以上、ユーザーのレビューを集めることもとても大切です。そのためにはレビューを投稿するハードルを下げる必要があるのですが、その一つのアプローチが、ラベルを撮影するだけで何の銘柄かを特定してくれるスマートフォンアプリの配布です。
これは応用アイデアのため必須ではないですが、丁度QRコードの認識のように、銘柄にカメラを向けるだけで、該当の銘柄のページへ誘導し、そのままレビューが書けるようにしましょう。もちろん、画像認識以外の方法でも銘柄を検索しやすくすることで、情報ポータルサイトを支えてくれるヘビーユーザーが快適にサービスを利用できるようにします。気づいたらサービスを利用していた、という自然な動線を用意できれば非常に有効でしょう。
銘柄登録が間に合わない場合や、画像認識の精度があがらない場合には、そのままユーザーに銘柄登録を行ってもらう機能をつけるのも良いでしょう。登録してくれたユーザーには何かしらのインセンティブがあるようにすれば、画像認識と人力の両輪で情報整備が加速します。
Point.3 別注品企画など手の込んだ仕掛けを
情報がたくさん載っているだけでは情報サイトとしては勝てない時代になってきました。情報自体は探せばどこででも手に入ることが多いため、いかに自サービスにしかない付加価値を演出できるかにかかっていると言えるでしょう。情報ポータルだからといって、情報だけで勝負する必要はありません。人が多く集まるという特性を活かして、様々なことに挑戦すべきです。
ユーザー数がある程度増えてきた段階で、酒蔵とのコラボレーションを積極的に検討してみてください。別注品など、ユーザーを巻き込むかたちで企画することで盛り上がりますし、ユーザーの満足度向上にもつながります。こうした企画運営はものすごく手間がかかるのは事実ですが、だからこそ価値があるものでもあります。手の込んだ仕掛けを厭わず、そうした企画に対応できるシステムに設計するのをお勧めします。また、企画もある程度の頻度がないとさびれていってしまいます。企画を継続的にうみだしていける組織体制も含めて検討してみてください。
深淵なる世界
日本には本当にたくさんの日本酒があります。同種のお酒も含めると、その世界はまさに深淵なるもの。その水先案内人としての情報ポータルサイトは、国内のみならず、国外からも参照されうるメディアに成長する可能性があります。多言語対応等、あらかじめ見越しておくことも事業展開を考えるうえで重要でしょう。成長のためにチャレンジできることは多いに越したことはありません。制限になってしまうシステムではなく、チャレンジを後押ししてくれるシステム作りを、是非意識してみてください。