一つの大きなコミュニティ
高齢化が当たり前のこととして受け入れられるようになり、いくばくかの年月が経ちました。介護制度の変更の度に事業者側の混乱は激しいものがありますが、高齢者の数が増え続けていくという構図はこれからも変わらず、介護施設の重要性もまた変わりません。実際、たくさんの事業者が参入しており、今後もその市場規模は拡大していくことが予想されます。
退出事業者、参入事業者が共に増え続ける中、本当の意味で強い事業者だけが生き残れる状況に変わりつつあります。顧客基盤、効率性、人材確保など、課題は山積みですが、地域に根付いた事業基盤を築くことができれば、この激動の時代は大きなチャンスと捉えることができるのではないでしょうか。無秩序な拡大期が終わった今からこそ、本当の勝負の時代と言えるかもしれません。
今回は、こうした老人ホームに代表される介護施設の運営管理システムについて考えてみたいと思います。どういったポイントに気をつけて構築すればよいのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 情報や通達の統合管理
老人ホームの直接のお客様は入居者ですが、重要な利害関係者としてその入居者の家族がいます。入居者の家族に対するコミュニケーションをどのように行えるかが施設の評判にも影響するため、慎重に取り扱う必要があります。常に良いニュースとも限りませんし、かといって情報共有を怠るのは別の問題を引き起こしてしまいます。
入居者の状況や毎日のケア内容等、システムで管理すると共に、簡単に家族が参照できるようにしましょう。1日に1回や週に1回等、自動でダイジェストを配信するのも一つです。毎日イベントがあるわけではないので、発信する内容に困るかもしれませんが、内容が多少事務的になるのは問題ありません。コミュニケーションは質も重要ですが、適切な頻度というのも重要になってきます。多すぎてもダメ、少なすぎてもダメという中で、最適なコミュニケーション設計を行ってください。
Point.2 ホームページ側への情報掲載も容易に
施設として何を行っているのかを発信することは、入居者の家族にとっても役立つ情報であることはもちろん、近隣の住民に対する説明責任を果たすことにもなりますし、未来の入居者へのマーケティング活動にもなり得ます。施設内での活動は積極的に対外的に発信できる体制を構築し、システムとして楽に管理できるようにしましょう。
もちろん、入居者のプライバシーには配慮してください。顔の映り込みを極力避けるのは当然のこととして、ぼかしなどの画像加工を行うのも有効でしょう。地域との交流を促進することにつながりますし、将来的な認知度向上にもつながります。
Point.3 情報のアクセス権限の管理
老人ホームや介護施設の顧客情報は、入居者や利用者だけのものにとどまりません。家族や関係する人全員の情報を管理することになり、非常に繊細なプライバシー情報を抱えていると言えます。これが誰にでもいくらでもアクセスできる状態というのは非常に不健全です。情報の持ち出しや、個人情報を濫用したトラブルなど、想定される事故はいくつものパターンが存在しています。
そこでスタッフにアクセス権限を付与し、この情報はマネージャー以上だけ、といったような権限コントロールを行いましょう。あわせて、スタッフ権限で見ることができない情報も、上司に簡単に閲覧をリクエストできる機能をもうけ、上司がそれを承認すれば一時的にそのスタッフが情報を見ることが出来るようにするのも、アクセス制限を行うことで過剰に実務を滞らせない配慮としては検討してみても良いでしょう。
その他、操作履歴を記録したりと、情報管理上できることはいくつもあります。あまりやりすぎると業務が滞ってしまったり、スタッフのモチベーションに影響を与えたりしてしまうことも考えられるため、ほどほどのバランスを見つけてみてください。
IT武装が武器になる業界
介護業界は、主たるターゲットがシニア層のため、なかなかIT化が進んでこなかった業界です。ですが、入居者の家族はもう一回り若い世代ですし、昨今のスマートフォン普及を考えると、ますますのIT化による効率化が可能になってきたとも言えます。
効率化はスタッフの時間を生み、サービスの質を向上させます。効果的なシステムはまさにスタッフ以上の働きをしてくれるものですので、人材不足や業務効率の悪さにお悩みであれば、システムの導入や刷新を検討してみてください。