チャネル統合とEC

ECサイトに比べると、カタログ通販の方が長い歴史があるわけですが、カタログ通販会社も積極的にECサイトに取り組み、その垣根は年々無くなっていっているように感じます。オムニチャネルといった言葉が叫ばれるようになった昨今、さらにその流れは加速しているのではないでしょうか。

各社がカタログとネットショップの統合に躍起になっている今、紙かネットかといった狭い視点ではなく、トータルでの顧客体験という視点でリノベートしていく必要があるのは言うまでもありません。どちらで買ったとしても、同じレベルの購買体験を実現すべきです。ユーザー側も、カタログとネットショップの垣根など意識していない時代になってきています。

今回はこうしたカタログ通販会社がどういったポイントに気をつけてECサイト/ネットショップの構築やリニューアルを行っていくべきかについて考えてみたいと思います。いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 計測、そして計測

これはカタログ通販会社に限った話ではありませんが、複数の販売チャネル・受注チャネルを持っていると、その効果測定には頭を痛めるのが常です。他のチャネルに比べて効果測定がしやすいとはいえ、何も考えずに構築してしまうと「欲しい情報が手にはいらない」といったことがよくあります。

GoogleAnalyticsのような解析ツールはもちろん、A/Bテストやヒートマップ、コホート分析のためのツール等、自社の要件を的確に定義し選定する部分が肝です。ツールは最高のものを使っていたとしても、それがそもそも不要なものだったり、使いこなせなかったりしては意味がありません。解析ツールの紹介サイトでは夢のような文句が踊っていますが、高度なツールを使いこなすのはそれほど甘い話でもありません。自社が何がしたいかを明確に定義した上で、最良のツールを初期段階から組み込んでください。ツールをいれただけで満足、という状況もよくある話ですので、導入した以上に使いこなせているかどうかが重要なのは言うまでもありません、

場合によっては人による突き合わせが必要になる場合もあるでしょう。そうした目チェックが無くなるのが理想ではあるため、そうしたデータの統合やチェックを自動化できないかもあわせて検討してみてください。

Point.2 横断的接点デザイン

どのような家庭にも、カタログ、テレビ、スマートフォン、パソコンがあるような時代になりました。もしかすると、パソコンを持たない世帯が今後主流になる可能性すらあります。こうした環境下では、顧客がチャネルを使い分けることはよくある話で、前回はカタログ、今回はネットから、といった場合に顧客情報をしっかり追えるのはもちろん、顧客に対する提案に一貫性がある必要があります。認証や連絡はもちろんとういるされている必要はありますし、注文履歴は購入チャネルに関係なく確認できるべきです。

顧客情報や購入履歴等の情報はチャネル横断的に蓄積、活用できるようにし、どのチャネルで商品を探したとしても、極度にパーソナライズされた買い物経験を体験できるようにしましょう。顧客数や受注数が膨大なため、システムによるアルゴリズムを高度にチューニングした上で、リコメンドや同梱物でのプロモーション等も最適化できると理想的です。

Point.3 組織を横串でシステムがつなぐ

事業展開にあわせて組織を変化させていくことの大変さは経営的視点をもったビジネスリーダーであれば嫌と言うほどわかっていることだと思います。チャネル別に組織をわけていたり、ビジネスプロセスごとに組織をわけていたりとバリエーションはあると思いますが、スピードある意志決定を行っていくには組織を横串で通すものがあるべきです。

組織としてそういったチームがあればいいのですが、なかったとしたならシステムにそうした横串コミュニケーションを誘発する役割を委ねましょう。構築プロジェクトの間はもちろん各部署のメンバーが参加するのでコミュニケーションは活性化しますし、構築後も、顧客という中心点を各立ち位置のメンバーが追いかけることで、自然とコミュニケーションや相互の思いやりが生まれるように設計することが可能です。システムを超えて組織論にも入ってくる話題ですが、どちらもビジネスの根幹である以上、セットで考えることが至極真っ当だと思います。一つの有機的な存在として、システムを捉えてみてください。

システムという無味乾燥なイメージがあるかもしれませんが、注文データを軸にしたコミュニケーションツールという側面も持っています。セクショナリズムに関係なく会社が一体となれるようなシステムが理想的なのは言うまでもありません。コミュニケーションツールとあわせて、横断的に機能するものとして通販システムを位置付けてみてください。

チャネルに乗り遅れない覚悟

魅力的な商品を、魅力的にプレゼンテーションし、より多くの顧客に届ける。これはカタログ通販会社が達成しなければいけない一つのゴールだと思います。5年後にどういった売上比率になるかの予測は困難ですが、カタログ、そしてネットという時代の流れの先には、まだ見ぬ新しいチャネルがあるかもしれません。そうした常に変化する顧客のライフスタイルにあわせて、常に変化し続けていけるかが生き残る会社とそうでない会社をわけるのかもしれません。

システムに求められるかたちも、よりスピーディーに変化・進化していけるものになってきているのではないでしょうか。従来のパラダイムに縛られない、次の時代を生きるためのシステム投資を、是非検討してみてください。

開発スタッフのコメント
ネットショップ黎明期には、まだまだネットショップ限定品やカタログ販売限定品といったものも多く見かけましたが、今はどこで買うかという視点はますます無くなってきているのを感じます。商品力で横断的に比較されるようになってきており、今まで以上に商品開発力、商品提案力が問われていると言えるでしょう。シームレスなユーザー体験という当たり前の価値を提供できるシステムやネットショップにすべきですし、旧来の顧客資産をうまく活かせる基盤づくりを行うことをおすすめします。