快適さを売る時代

大手鉄道会社に限らず、特急券や特別列車の座席指定券を販売するというニュースを耳にするようになってきました。今まではある地点からある地点への移動手段だけを提供していた鉄道各社が、差し迫る人口減に対して、移動中の快適さや利便性を販売しはじめたという意味で、大きな流れが生まれようとしています。

既に特急券を販売する仕組みはあっても、柔軟かつスピーディーな販売方法が無いところも多いのではないでしょうか。従来型の窓口での販売というだけでは顧客層の支持はとうてい得られません。インターネットでの販売でも、操作に時間がかかっていると、目の前で電車が出発してしまう悲劇を生みます。チケットレス乗車の流れも増えてきており、有料特急券の増加など、これからも様々な取り組みが行われることが予想されます。こうした変化に対応していけることも重要でしょう。

今回はそういった特急券や座席指定券を、今の時代にあったかたちで柔軟に販売、運用していくための販売管理システムについて考えてみたいと思います。いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 カード決済で即決済対応に

非日常の移動に使う特急券と違い、日常の通勤で使用する座席指定券は、今この瞬間の空きを照会し、即座に確保できることが重要です。決済手段としては銀行振り込みといったことはやっていられません。カード決済を中心に置き、二度目以降の購入であれば1クリックで支払い完了になるように、徹底的に手間の軽減に取り組むべきです。

最初こそカード情報を登録する抵抗があるかもしれませんが、長年利用している会社への信頼もありますし、鉄道会社というものに対する社会的な信頼も厚いものがあります。セキュリティ対策を行い、自社でカード情報を保持しないかたちで顧客のカード決済の利便性を高めるようなシステムにするべきです。決済部分で時間がかからないようになれば、操作に慣れれば1分で完了することも難しくありません。1分1秒で乗り遅れるような状況では、こうしたスピード感がとても重要です。

グループ会社が運営している決済手段など、特殊な対応が必要な場合も、決済手段の一つとして登録できるようにすると良いでしょう。複数の決済手段を使い分けられるほうがユーザーとしては利便性が高まるため、あまり囲い込み重視にしすぎない方が良いと思います。

Point.2 検札はタブレットでシステムと連動

発車直前まで座席の変動があるため、従来型の紙の検札では情報の整合性をとるのが大変です。そこでタブレット端末から管理システムにログインし、リアルタイムの座席販売状況が確認できるようにしましょう。また、検札も電子的に行えるようにし、カード決済用の端末をタブレットに接続することで、その場での座席指定券の購入にも対応できるようにすると、販売数量の積み増しも容易になります。

カード決済用の端末も充実してきているため、サイズ的にも問題なく携帯できるようになってきました。車内での物品販売含め、多様なかたちで活用できそうです。さらに機動力重視であれば、スマートフォンですべてを担保してしまうのも良いでしょう。性能的にはなんら問題ないレベルにまで進化しているため、外部アクセサリを組み合わせれば、業務の大半をこなすように整備することは可能です。

Point.3 空き状況をプッシュ通知

LINEというスマートフォンアプリケーションの普及に伴い、公式チャンネルを持つ会社が増えてきました。担当者をつけることができるのなら、LINEの公式チャンネルを開設し、列車の空き状況をリアルタイムで発信することも重要です。空きが多いのであれば乗りたい、というリピーターを刺激することもできるのは大きなメリットです。

また、携帯電話に対してメッセージのかたちで通知を送ることも可能です。座席指定の発車が近づいていることの確認や、メールマガジン代わりによく乗る電車の空き状況を配信するのも一つでしょう。こうした通知を嫌がる人も多いため、通知をオフにすることをできるようにするのを忘れないようにしてください。普段から使い慣れたコミュニケーション手段で使えるのは、ユーザーにとっても非常にメリットがあります。

人口減の時代の付加価値追求

日本では悲しくも、人口が増え続ける時代は終わりました。よほどの大規模な開発が行われない限り、乗車人口というのは東京の一部地域を除きじり貧だと思います。この時代に線路と車両という資産を活かしてどのように収益をあげていくか、鉄道会社としての地力が問われているといっても過言ではありません。

遊んでいる席を売る。そのままで売れなければ、予約ができるという利便性をつけて販売する。座席指定券が増えているのもこういった背景からだと思います。今の利用者がより便利になるかたちで稼働率をあげ、収益性も高める三方良しを支えるシステム導入を、是非検討してみてください。

開発スタッフのコメント
従来のいわゆる特急以外にも、通勤電車の一部車両を指定席にしてしまうアプローチも増えてきました。確実に座りたい利用客と、売上を少しでも伸ばしたい鉄道会社がいわばWin-Winになる施策で、高評価を得ている地域も多いのではないでしょうか。今後もこうした指定席券の多様化は進むと考えられるため、より柔軟かつスピーディーな販売手段が求められていると言えます。既存システムとのつなぎこみなど課題も多い領域ですが、利用客の利便性を損ねないような、洗練されたシステムを模索してみてください。