ITから逃げられない時代

小学校や中学校、高等学校のIT環境刷新のニュースを耳にすることも増えてきました。クラウドという言葉が先走るブームも一段落し、具体的なかたちでさらなるIT化を進めようとしている学校法人も多いように感じます。DXという言葉も使われるようになり、ITを活用した業務改革というのは、当たり前のものとしての地位を築きつつあるように感じます。

ITサービス各社も教育機関向けの特別プランを用意し、なんとか教育機関での採用を増やそうと躍起になっています。実際に、いくつものITサービスを導入しているという教育機関も多いのではないでしょうか。

公立校においてはどちらかというと行政単位での大きな話になるので、あまり実感のない話かもしれませんが、私立校においては裁量が大きい分、どういった方策を選定するかでその後のパフォーマンスが大きく変わる重要問題です。身の丈に合わないコストをかけることも間違っていますし、かといっていつまでも教職員の負担ばかりがかさむ学校運営も考え物です。

今回は、学校法人において、どういったIT・クラウド化を進めるべきか、また、より積極的なIT投資とするために、どういったポイントに気をつけて構築すべきかについて考えてみましょう。

Point.1 生徒の統一評価基盤の構築

学校法人において、管理すべきデータ、やり取りすべきデータは山のようにあると思いますが、一番重要なのは生徒の学習記録ではないでしょうか。中高一貫校になれば、その学習記録をどう継続的にメンテナンスし、担任教師が変わってもスムーズかつ無駄のない指導に反映しなければいけません。紙やエクセルで管理していては運用する側がどんどんと複雑になるばかりです。生徒を中心とした管理システムを構築することで大切なデータを育んでいける体制を構築しましょう。

具体的には、生徒の履修状況や、学習の進捗、担任の評価や保護者とのやり取りを、同じ場所に蓄積し、すぐに参照できるようにします。内部のテスト結果や外部の模試結果なども蓄積できるようにし、内部用の統計資料としてもすぐに応用が可能な機能もつけることで、進学実績等の集計作業も効率化されます。詳しい分析では、どういった要素をもった生徒の成績が良いか、授業と成績の関連など、授業カリキュラムを改善していくための基礎データとしての転用も可能でしょう。

あとはこれに入試時点の情報や面接時の情報を統合するかは学校によりけりです。一貫して管理するのであれば統合するも良いでしょうし、入学前、入学後の情報は別で良いというのも考え方としては間違っていません。学校の方針にあわせて判断してみてください。

Point.2 eラーニングの基盤としても

昔から予習復習は非常に大切と言われ、そのことに疑問を持つ人はいないと思いますが、昨今、反転授業やパソコンを利用したeラーニングが急速に普及してきました。学校として現在そういった機能を提供しているのであれば共通のログイン機構で生徒に提供し、学習実績も共通の基盤に蓄積していけるようにしましょう。現時点でeラーニングの提供やITを活用した補習環境がない場合も、将来的な拡張を見越して、生徒向けのログイン機構はあらかじめ組み込んでおくことをお勧めします。

学習領域におけるゲーミフィケーションの活用例も増えてきました。教科担任の力量を磨き、対面での授業の質を高めるのも大切ですが、帰宅後や休日の学習環境のサポートも視野にいれてIT化を考えるのをお勧めします。重たいプリントを持って帰るのも良いですが、デジタル化できるものはデジタル化したほうが、生徒にとっても先生にとってもメリットがある場合も多くあります。

eラーニングまで本腰をいれるのはしんどいという場合は、外部サービスとの連携にとどめるのも有効でしょう。認証基盤だけ利用し、学校用のアカウントで利用できるようにする、というのも有効です。

Point.3 セキュリティ、セキュリティ、セキュリティ

これから先、IT・クラウド化を考える学校法人が気にすべきはセキュリティです。ちょっとした事件が、学校全体の評判を大きく下げうるリスクを抱えています。教職員のセキュリティ意識を高めることはもちろん重要ですし、継続的な研修や啓発活動を続けていくべきですが、学校運営管理システムにもセキュリティ機構を組み込むべきです。

運営管理システムとして脆弱性をきちんと無くしていくのはもちろん、二段階認証のようなログイン機構を採用するのも一つです。また、場所によりログインを制限したりするなども有効でしょう。必要なセキュリティ要件は学校それぞれですが、最適なセキュリティを模索し、それを実際に高いレベルで実装、運用していくことが重要です。

あわせて、教員や生徒へのセキュリティ教育も行ってください。高度なクラッキングになればなるほど、人がターゲットにされることも増えていきます。ランサムウェア等の攻撃を防止するためにも、システムと人、両方の防御力を強化するようにしてください。とりわけ、生徒はこれからIT社会の中でトラブルに巻き込まれる可能性が高い世代です。学校システムを通じて、そうしたITリテラシーを高める機会にするのをお勧めします。

24時間働く優秀な教職員

残念ながら人間は24時間365日働き続けることはできません。人間である教職員が果たすべき役割はこれからも無くなりませんし、実際の生徒の成長を考えると重要であることは変わりませんが、いかに人間である教職員、生徒を楽にできるか、楽しくできるか、学べるようにするかといった課題の解決には優秀なシステムの存在が不可欠です。

システムと書くと冷たい印象にはなりますが、時に生徒の情報を適切に管理、蓄積し、時にeラーニングを通じて教員にもなる頼れる存在として捉えてみてください。eラーニングにしてもまずは自分達で補習動画を撮って保存していくところからはじめるので十分だと思います。大切なのは次の時代を見据えて常に変化していくこと。そのためにもITへの投資を検討してみてください。

開発スタッフのコメント
学校のような教育機関は、そこに集う人数が大きいため、単体でもシステム導入よる効率化の効果が大きくなります。なかなか予算がつかなかったりすることも多かったようですが、IT機器の普及を背景に、その潮目も変わりつつあるようです。教員や生徒の負担を減らすことは学校運営にとっても、生徒の学業にとっても確実にプラスに働きます。独自構築も視野にいれて検討することで、長く使える情報ハブとしての機能も期待できますのでおすすめです。