高品質とコストの両立

日本の製造業は衰退したと言われることが多くなりましたが、今この瞬間も経営努力、技術革新を繰り返して成長を実現しているメーカーが数多くあります。小ロット品への細かい対応や、特殊な技術で世界を相手にするなどその生き残り方は様々ですが、どの会社も自分達が「ここだ!」と信じたところへは積極的な投資を行っているように感じます。

いくら高品質が評価されようとも、必ず値踏みされてしまう時代。グローバルでの競争となれば、なおさら人件費の安い国との戦いがついて回るため、コスト意識も否応なく持たなくてはなりません。高度なバランス感覚をもって、攻めと守りを工夫できる会社だけが生き残れる時代なのかもしれません。製造業の空洞化は国力の低下に直結するため、国内産業を守ろうという機運も高まりつつありますが、まだまだコスト重視で意思決定が行われることが多いように感じます。

今回は、こういった高品質とコストを高次元で両立させなければ生き残っていけない時代に、金属加工業の業務管理システムはどうあるべきかについて考えてみたいと思います。早速いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 データのやり取りをWEBベースに

未だに紙のみでやり取りしているところは少なく、CADデータのようなデジタル図面データでのやり取りがほとんどだと思います。担当者がメール添付を駆使して行うことも多いと思いますが、データのバージョン管理や、担当者が休みや出張で不在のときの対応が混乱するなど、デメリットも多くあります。

データのやりとりを先方にWEB経由で行ってもらうことで、「あのデータが」「このデータが」といった、データの取り扱い間違いを減らすことができます。また、データの保存場所が明確になるので、部署横断的にデータを参照したい際に連携が取りやすくなるというメリットがあります。さらに自社内での作成データを同じ顧客に紐づけて保存できるようにすることで、データの顧客ごとの管理が徹底され、データの場所を探して費やす無駄な時間を無くすことができます。そのまま作業工程へ流すことを想定しておけば、データの確定からデータ投入までがスムーズに流れるようになるでしょう。

WEBベースにすることで、人為的ミスによる情報漏洩のリスクも低減することができます。図面などは知的財産の塊なため、外部に流出してしまうと問題です。発売前、発表前のものであれば尚更です。少しでも仕組みでこうしたトラブルを防止できるように対応することをお勧めします。

Point.2 発送伝票や納品書、請求書も1クリック発行

会社の規模が大きくなっても、意外に放置されているのが、事務作業の手間です。事務スタッフがやるから、という理由で、未だに手書きの発送伝票を書いているところも少なくありません。これは今すぐにでも印刷タイプの伝票に変更すべきです。

とはいえ、それ専用のソフトを立ち上げて伝票をちまちまと作っているのでは本末転倒ですので、管理システムから1クリックで伝票登録から発行まで行えるようにしましょう。また、顧客ごとに納品の度についてまわる納品書や請求書の発行業務も、同様に1クリックで印刷できるようにしておき、注文や納品の度に発生する細かい事務作業を消し去っていく努力が必要です。

毎月の請求業務だけでも顧客数が増えてくると大きな負担です。ミスが許されない作業だけにスタッフの負担も大きなものがあります。こうした事務作業の効率化も同時に視野にいれてみてください。複数の書類も、仕分けていくといくつかのグループに分類でき、それぞれでペーパーレス化やデジタル化の方向性が見えてくるはずです。

Point.3 システム言語は多言語対応に

今は仮に国内にしか顧客がいなかったとしても、その状況が未来永劫続く保証はありません。むしろ、世界を視野にいれながらなかなか踏み出せていないというケースが多いのではないでしょうか。英語圏の顧客だったり、中国語圏の顧客だったり、そういったグローバルな取引が珍しくなくなってきました。

業務管理システムは顧客を巻き込む都合上、未来を見据えて多言語対応にすべきです。後から言語設定が簡単に追加できるように作っておき、最初の内は日本語だけで展開するというのも現実的な選択肢として有力です。将来の拡張に耐えうるようにしておくことで、ここぞという時に余計な出費がかさまないようにしましょう。とりあえずは日本語と英語に対応する、というのも、コストパフォーマンスに優れたバランスかもしれません。

連携度合いは会社それぞれ

業務管理システムはどこまで周辺の業務と連携するかで会社の個性がでます。中にはマシニングセンタとのデータやり取りすらも同一のシステムに統合してしまうところもある一方で、そこまではせずに個別にシンプルなシステムとしてメンテナンスしていく会社もあります。どこまで統合すれば最も業務効率があがるかは十会社十色だと思うので、最適なバランスを模索していくことが重要です。

設備にどうしても投資がかさむ分、なかなか業務管理システムにまでは目がいかない業界ではありますが、だからこそコストパフォーマンスの高い業務管理システムを構築できれば大きな強みになるのも事実です。次の一歩を見据え、独自システム導入を検討してみてください。

開発スタッフのコメント
日本は長らく工作機械に強みを持ち、それをベースにした金属加工業も高度に発展してきました。非常に多彩な分野のベースになっている産業だけに、取り組み方次第で新しい市場を開拓できる可能性を秘めています。昔ながらの工場で、というのも、テレビ番組的にはありかもしれませんが、実際には洗練された業務フローが不可欠です。その洗練度合いを支えるシステム作りを検討してみてください。