ゆでガエル状態を生み出すパン屋ビジネス
「明日突然売上がゼロになるわけでもない」 「今も常連さんもいるし、それなりの売上はある」 こうした状況でも漠然とした不安や危機感を持っているパン屋オーナーの方は多いのではないでしょうか。
パン屋ビジネスは需要が安定しており、激戦区においてもある一定の売上を確保している場合も多いでしょう。ただ、売上が右肩下がりだったり、なかなか思うように伸びなかったりという状況をなんとか打開したいと思うのが普通だと思います。とはいえ忙しくて何も手に着いていない、そもそも何をすれば良いのかわからないために、じわじわとゆでガエルのように事業規模が縮小していき、気付いたときにもう手遅れ、というパターンが多いように感じます。
多様化する成功パターン
上図は、多様化するパン屋ビジネスの成功パターンを図示したものです。
天然酵母や石窯、自家製粉など強いこだわりで集客するものの、そのこだわりの強さからなかなか事業規模を拡大しにくいユニーク系が左上に、また、事業規模重視で好立地を抑え多店舗展開を行っていくパターンが右下の立地勝負系、さらに品目数を食パンや特定のパンに絞ることでこだわりを保ちながら事業規模も追求する一品勝負系なども存在しています。
もちろん、どれか一つのグループに割り振りにくい業態も存在するとは思いますが、おおよそパン屋ビジネスの成功パターンは上図で説明できるのではないでしょうか。以下は関西の例ですが、各成功パターンの例をあげてみたいと思います。
ユニーク系筆頭「ベッカライ・ビオブラート」
ユニーク系パン屋の筆頭としてあげられるのは芦屋のベッカライ・ビオブラートです。自店で挽いた粉を使い、麦の香りや旨味を最大限に引き出すパン作りを行っています。食べログでの評価も非常に高く、とりわけパン通の支持を多く集めているように感じます。
店舗も小さく、2015年の記事執筆時点、通販も行っていないので事業規模としては小さくはなりますが、個性の強いこだわり系パン屋を目指す方にとっては一つの理想型になるのではないでしょうか。こだわった商品が支持されるという、パンづくりを志す人にとっても、非常に勇気をもらえるお店だと思います。
一品勝負系筆頭「パンネル」
一品勝負系としてあげられるのは宝塚エリアを中心に複数の店舗を展開しているパンネルです。多種多様なパンを作り販売しているのですが、とりわけ寿という食パンが非常に有名で、この食パンを中心にした事業モデルを構築しています。
店舗でも朝から大量の食パンが売れますし、関西地域の百貨店で週に1回の販売日などを設けたり、自店の通信販売や阪急系列のネットスーパーでも販売したりするなど、店舗外での販売にも力を入れています。強い1品があることでその販路や事業規模を大きくすることができる好例ではないでしょうか。
一品ものはその商品が不人気になったときのリスクも大きくなりますが、比較的需要の安定している食パンというのもプラス材料です。一点特化するのであれば、需要が大きいアイテムであればあるほど良いでしょう。そもそもの需要が小さいものに特化してしまうと、シェアが高まっても売上が伸び切らないというジレンマに陥ってしまいます。
立地勝負系筆頭「クックハウス」
立地勝負系としてあげられるのは、関西の主要駅を中心に展開するクックハウスです。店舗によってはカフェを併設するなど立地の良さを活かした坪当たり売上の高い事業モデルを構築しています。
主要駅には複数の店舗やさらに百貨店内にも積極的に出店するのみならず、積極的に新業態にも取り組んでいます。パンを軸に人通りの多い場所で勝負していくのであれば、非常に参考になるのではないでしょうか。単価をあげるためのカフェの活用法なども非常に有効です。
街のパン屋の戦略方向性を考える時に、自店はどの系統を強めていくかという議論が必要になってきます。もちろん、全てを同時に実現できれば苦労はしませんし、最終的にはそれを目指すべきではありますが、限られた時間と資金、人の問題を考えて、現実的かつ最適な筋道を立てていかなければいけません。
変えるべきもの、変えないものをどう判断していくべきか
単なる思いつきや、成功例の物まねでは自店を進化させていくことはできません。しっかりと現実と向き合い、出来る限り正確な意思決定を行うことが求められます。
1. 商圏の理解を深め、競合店を知る
お客様はあなたのお店を常にどこかと比べています。他のパン屋、スーパーのパン売り場、ネットスーパーや通販、カフェなど、自店の周りの商圏によってその性質は大きく変わると思います。
開業当時に調査した後はなんとなく散歩ついでに見ている、ぐらいでは不十分です。競合店が行っている販促や商品展開も踏まえた上で、改めて自店が置かれている状況を正確に把握することが何より重要です。
2. 今のお客様に何が支持されているのか、自店の強みを探す
忙しさの中であまりお客様と会話できていないオーナーさんも多いと思います。今、何が気に入られているのかをきちんと把握することで、自店の強みが見えてきます。その強みをさらに強化すべきなのか、自店の弱みを克服する方に力を入れるべきなのか、はたまた新しい方向性を目指すべきなのか、商圏の状況も踏まえながら整理していきましょう。
さらにそうした強みをしっかり発信することを後回しにしないでください。ソーシャルメディアに抵抗がなければ、X(旧Twitter)やInstagram、ホームページ等でそうした人気商品を発信していくのも良いでしょう。
3. 今すべきことを計画に落とし込み、実行していく
何をすべきか、何をしないのかが整理できたなら、それを計画に落とし込んでいきましょう。骨の折れる作業ですが、計画に落とし込む過程でより具体的になり、実現性が高まります。また、必要な販促ツールや情報発信手段なども必要であれば並行して整理していきましょう。
ビジネスと夢・やりがいは絶対に両立可能
ビジネスを拡大していくことイコール妥協、では決してありません。自分が納得のいくパン作り・店作りを続けながら、ビジネスとしての安定性や成長性を高めることは絶対に可能です。
当社では、街のパン屋さんの次の一歩をお手伝いするマーケティング支援活動に力を入れています。戦略立案を膝をつき合わせ、足を動かしお付き合いすると共に、確実に実行するスキルやノウハウを自社内に持ち合わせていることを強みにしています。
関わり方など柔軟に対応いたします。まずはお気軽にお問い合わせください。一緒に長く愛されるパン屋さんを創り上げていきましょう。