資源を救う最後の砦

大量に消費し、大量に廃棄するだけの時代は終わりを迎えようとしています。資源は限られているという考え方が一般的になったのもありますし、日本社会が成熟に向かっているというのもあると思います。また、様々な条例でリサイクルを推奨する動きも活発であり、その傾向は今後も続くことが予想されます。

こうした状況下で日増しに存在感を増しているのがリサイクル業です。昔は廃品回収のトラックが近所を走っているぐらいの印象しかありませんでしたが、今では様々なかたちで、直接的にそして間接的に私達の暮らしから出た資源の再利用に取り組んでいます。ゴミの分別と無縁の人はもういないのではないでしょうか。また、Yahoo!オークションやメルカリといったマーケットの存在を知らないという人も少ないと思います。リユースの流れの中で改めて廃品への注目が高まっていると言えるかもしれません。

今回のテーマは、こうしたリサイクル品や廃棄物の回収や処理を行う会社の業務管理システムについてです。どのような機能を実装すれば現場のスタッフの負担を下げることができるのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 顧客毎の売上/数量管理

リサイクル業の顧客は想像以上に多岐にわたります。一般家庭からのゴミはもちろん、行政の委託を受ける場合や企業ごとに産業廃棄物を受け入れる場合など様々です。資源を受け取るというよりも廃棄されたものの中から有価なものを分別するといった作業も多く、業務も顧客管理も複雑になりがちです。事務職員のエクセルですべてが管理されているというところもまだまだ多いのではないでしょうか。

構築するシステムでは、顧客毎の売上管理を簡単に行えるようにします。最初の顧客マスタに基本情報を登録し、各受け入れ単価を設定するだけで、以後の毎日のオペレーションは顧客を選択し、数量を入力するだけで良いようにします。請求タイミングには顧客毎に請求金額が自動的に集計されるようにし、請求担当のスタッフが請求書を印刷するボタンをクリックするだけで、一括で印刷が行われるようにしましょう。

月単位でざっくりと管理されていたものが、より細かく把握できるようになることで、収集頻度や集配ルートの精緻化が図れる場合があります。こうした情報を積極的に提案していくことで、顧客満足度も高められるのではないでしょうか。

Point.2 タブレットやスマートフォンで入力を可能に

ゴミの受け入れの現場はパソコンがある事務所スペースとは別の場所にあることがほとんどです。現場で数字をメモし、後で入力するというのもありですが、現場にそのまま設置できるタブレットやスマートフォンで数量を入力できる環境を整えましょう。入力間違いの防止を考えると大きめサイズのタブレットを壁等にかけておくのがお勧めです。

手袋をした状態でもタッチパネルが有効なように、圧力感知式のタブレットを導入し、顧客を選択し数字を入力します。必要であれば画面を先方に見せて確認してもらい、確認者のサインを保存する機能も実装しましょう。現場での扱いは丁寧とは限りませんので、衝撃に強いタフなタブレットを選定する等の工夫も必要になるかもしれません。また、故障した機材の入れ替えがスムーズにいくように、簡単な設定だけですぐに業務システムを利用開始できるようにしておくのも良いでしょう。

Point.3 作業時間計測機能をつけ、正確な原価管理を

作業内容が多岐にわたり、また受け入れる廃棄物の質も顧客ごとに大きくばらつきがあるため、なかなか正確な原価を出すことが難しいのが廃棄物処理業の特徴です。精度の高い経営に活かし、入札などで黒字を確保しながら競合に負けない数字をだすためにも、作業時間を計測できる機能を実装しましょう。

作業対象の廃棄物の種類とレベルを入力し、実際の作業時間を測定し入力できるようにします。一回のデータでは偏りがでるため複数回試行するようにします。こうして蓄積されたデータを基に、受け入れる廃棄物の種類と想定される質がわかれば原価が算出できるようになります。仕事を請けてみたけど割にあわなかったという事態が防止できると共に、経験の少ない営業社員にも簡単な質の判定方法を教授するだけで正確な見積もりが出せるようになります。

データを蓄積するのは少々骨の折れる作業ではありますが、一度基準ができてしまえば、その後の恩恵も大きなものがあります。重い腰をあげて取り組んでみてください。

人力とシステムを総動員で付加価値創造

廃棄物処理業は、自動化できる部分と手作業に頼る部分とがどうしても出てきてしまいます。人が活躍する前提でシステムを構築し、人が楽をできるようにシステムを構築することで、作業時間を短縮したり、作業ミスを減らすことができます。人力とシステムの力を総動員することで競争力を高めてください。

開発スタッフのコメント
廃棄物処理業は、設備や収集車といった設備型産業であると同時に、人力による選別や回収・運搬が伴うことが多いため、労働集約型産業でもあります。会社規模の大小問わず、業務効率が収益性の鍵であることには変わりなく、現場のオペレーションに加えて、それを支える仕組みづくりにもっとスポットライトが当たるべきだと考えます。今までのやり方の良いところは残しつつ、新しい仕組みづくりにチャレンジできないか、是非検討してみてください。