自社顧客への情報提供

地域に根ざした不動産会社にとっては、既にお付き合いのあるお客様をしっかりと囲い込むことが重要です。また、問い合わせがあったけれど成約には至らなかった見込み客とのつながりを維持していくことも重要です。来店してその日のうちに契約する人もいれば、来店してからいくつもの物件を吟味してから契約に至る人もいます。

お客様も暇ではありません。何の用もないのに連絡だけされるのは迷惑ですし、自分達にとってメリットのないオファーには興味を示しません。こういった状況下で、自社顧客向けに専用システムを構築し、不動産情報を閲覧できるようにしている会社が増えてきました。

業者しか見ることができなかった情報を開放するかたちですので、お客様の満足度や興味度は高まります。物件を自分で探して最後の契約の部分だけお願いしてもらえれば、物件案内にかかる時間を節約しながら成約数を確保することができます。いわばWin-Winの関係です。

今回のテーマは、不動産業者向けの情報を自社顧客に提供するためのサイト構築及びシステム開発についてです。どのように機能実装すれば良いのかいくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 レインズ情報を自動取得しデータ取り込み

毎日変動のある不動産情報は膨大かつ鮮度が命です。これを手動で処理していたら時間がいくらあっても足りません。限りあるスタッフのリソースを他の重要な業務に割り振るためにも、レインズのシステム上から自動で情報を取得し、自社のデータベースに保存する仕組みを構築します。必要な情報を事前に定義しておけば、人による収集と大差ないレベルの情報登録は可能です。

膨大なデータをミス無く重複無く登録するようにし、掲載の終了したものも正確に管理できるようにすることで「情報があるのに実際は成約済みだった」といったクレームを未然に防止します。情報の取得頻度や取得範囲は設定によって変更することができ、自社の取り扱い範囲に最適化し無駄なコストがかからないように運用しましょう。

最近はおとり物件という言葉も一般に広く知られるようになってきており、そういった不誠実な対応への風当たりが厳しくなってきています。意図的かそうでないかに関わらず、そうした風評被害につながりかねない要因は徹底的に排除することをおすすめします。

Point.2 秘匿情報は自動消去

レインズの情報をそのまま掲載することは色々と問題を生んでしまいます。そのまま掲載してはいけない秘匿情報等は自動的にシステムが削除または非表示にするようにシステムを構築します。細かく制御を加えることで、自社だけの強みにしていくことも可能でしょう。

お客様には見えなくしたいけどスタッフは見られるようにしたい、といったことも可能です。自社システム上でレインズと同等の情報が見ることができれば、出先でもスマートフォンやパソコンで情報にアクセスでき、素早い対応をとることが可能になります。このあたりは会社の運用方針にあわせていくらでも対応可能です。むしろ、こうした細かい味付けが、自社独自の強みにつながっていくと言えるかもしれません。

Point.3 条件に合致する物件情報を自動通知

ただ物件が掲載されているだけではお客様の利便性は高まりません。本格的な不動産検索サイトと同等の機能までは必要ないとは思いますが、自分の希望条件に合致した物件が登録された際には自動通知される機能があると便利です。

お客様も毎日物件をチェックする必要がなくなりますし、お客様が登録している希望条件を分析することでそのお客様のニーズがクリアにわかります。また全体の希望条件の傾向を分析することで、今後注力していくべき分野が見えてきます。

通知はシステムがメール等の手段で自動で行うようにし、スタッフの手を煩わさないようします。通知頻度もユーザー側で設定できるようにするとなお良いでしょう。まさにお客様の利便性向上と重要なマーケティング情報の収集の一石二鳥です。LINEが好まれる傾向が強ければLINEによる通知も検討すると良いでしょう。

焼き畑から顧客育成へ

次から次へ見込み客を集め続けて成約数増を狙っていくやり方は焼き畑農業に似ています。常に新規客にアプローチする方法は広告費がかさみがちで、収益性はあまり高くありません。見込み客から成約する率を高めるためにはお客様との関係を作っていく手段が必要です。

そのときは成約しなくとも、次の機会があるかないかで大きく変わってきます。お客様をWin-Winなかたちで囲い込むためのツールとして、業者向け情報の提供システムを検討してみてください。

開発スタッフのコメント
不動産会社選びも、明確な違いがなければどうしても手数料比較の安売り合戦になってしまいがちです。集客は集客で全力で行うべきですが、アフターフォローで差をつけることで、トータルの契約数が伸びる効果が見込めます。成約率が100%は無理にしても、継続的なコミュニケーションを通じて限りなく100%に近づけていくことはできるはずです。そうした仕組みづくりに投資してみてください。