譲りますの精神

昔から地方紙やフリーペーパーにあった「譲ります」のコーナーは隠れた人気コンテンツだったように思います。思わぬものが紹介されていたりと、あのコーナーを楽しみにしていた人は多いのではないでしょうか。今でもそういったコーナーはあり、密かな人気コーナーかもしれません。

インターネットの普及し、ネットオークションが登場し、さらに買取ショップも増えてきた中で物を処分する選択肢は増えましたが、物々交換というスタイルは生き続けているようです。金銭を介するのが嫌な人からわらしべ長者的なゲーム性を求めている人まで、様々な人がそこには参加しています。

今回のテーマは、こうした物々交換や不要品同士のマッチングを行えるサービスのサイト及び管理システムについてです。どういったポイントに気を付けて構築すべきなのか整理してみましょう。

Point.1 直接交換に加えて仲介交換も

不要品とはいえ見ず知らずの誰かと物を交換する以上、どうしても不安がつきものです。きちんと相手からも物が届くのかと気になりはじめると、落ち着いて取引する気になれない人もいると思います。個人情報がらみのトラブルや、個人間取引に起因するトラブルもニュースでよく耳にするだけに、こうした不安感は今後も払拭しきれずに残り続けることが予想されます。

こういった人のために、サービスの運営元が仲介する交換サービスを提供します。サイト上から双方が申請すれば運営元の発送先住所が通知され、そこに送られてきた荷物を交換して双方に送り返すという流れです。色々な荷物が混在しないよう、住所には特定のID番号を付与し、荷物を受け取るスタッフがスムーズに作業できるように配慮します。

この仲介交換サービスでは、住所などの個人情報をやり取りするのは運営元との間だけですので、相手先に住所が知れることはありません。個人情報の流出を気にする人にも歓迎されるオプションです。もちろん送料が二重にかかってしまいますし、運営元のスタッフを割り当てる必要があるため有料のサービスにはなってしまいますが、ユーザー間で直接やり取りする方式に加えて選べるよう、システムの一機能として実装しましょう。

Point.2 ユーザー相互の評価システムを

ネットオークションなどですっかり一般的になった評価システム。物々交換のサイトでも相手の信頼性を評価するための貴重な情報として採用します。取引に対しての評価はもちろん、質問への回答率や的確な回答度合いをスコア化するなどして、その人の評価を多角的に行います。

評価システムは指標的な意味もありますが、何より「こうした行動をとりましょう」というガイドラインとしても機能します。複数の評価軸を設け、良質なユーザーが集まり育つ場になるように設計しましょう。

一方で、悪い評価を意図的につけてまわるユーザーには対応する必要があります。理由が正当なものでない限り、こうしたレビューシステムの根底に悪影響を与える行為は、しっかりと取り締まれる体制を構築してください。治安維持ではないですが、良い場には良い取引が生まれるので、適切な介入を行うべきです。

Point.3 わらしべ長者ランキングなどゲーム性も

ユーザーがサービスを利用すればするほど取引履歴がたまっていきます。マイページで過去の取引の内容を閲覧できるようにするのは当然ですが、そのままではただの一覧であり、楽しさがありません。ただの情報の羅列であれば、宝の持ち腐れです。

物々交換という金銭が絡まない取引なだけに、ネットオークションよりも楽しさに軸を置くべきです。そこで過去の取引商品の傾向をグラフ等で表示してみたり、取引数をランキング化したりしてユーザーがより取引に対して楽しく向き合えるようにします。

また、よく取引のあるユーザーを表示しその人の出品を提案するなどの機能を設け、ユーザーの好みにあわせてどんどんと便利になるように機能追加を行いましょう。使えば使うほど便利に、楽しくなるというのは、こうしたリピーター育成型のサービスにとっては根幹です。

物が溢れる時代の新機軸

物が溢れる時代になってかれこれ何十年も経ちます。若者世代を中心に物が売れないという話を聞きますが、日本はそれでも世界中の国と比して物が溢れている国であることは事実です。

不要になった物を捨てるのか売るのか、の二軸の中に「交換する」という選択肢を提案することが物々交換の意義だと思います。金銭動機ではなく、楽しみたい心を刺激することができれば大きなパラダイムチェンジも可能かもしれません。

開発スタッフのコメント
ものがあふれる時代になり、中古品の流通はますます活発化しています。スマートフォンで気軽に出品し、取引する商慣習が定着した今、ユーザーの期待値はかつてないほどに上がっています。メルカリやヤフオクが独走する中、買い物体験、出品体験全体でユーザーに支持されるような完成度や、ユニークな立ち位置が求められているのではないでしょうか。