産地と消費者をインターネットがつなぐ時代

インターネットの登場は、農業の流通を少しずつ変えてきています。今までは農協を通じてスーパーなどの小売りに卸され、そこから消費者は野菜を買うのが当たり前でしたが、農家単位や農家連合のような単位で野菜を直接消費者に販売する形態が登場してきています。対面販売に限らず、インターネットでの通販や、サブスクリプション型の定期宅配なども含めると、年々その市場規模を拡大しているのではないでしょうか。

消費者に限らず飲食店向けの取引も含めると、農協を通さずに販売している農家の数はぐっと増えることが予想されます。中抜きの一つのかたちとしてこれからも確実に勢力を拡大していくと思います。とはいえ、流通というのは非常に手間がかかる分野でもあるため、システムが介在する価値がある分野と言えるでしょう。

今回のテーマは、そうして農産物を直接消費者に届けるためのネットショップや販売のためのWEBサイトについてです。管理側の手間を低減しつつも利用者にとって魅力的なサイトにするためにどのようなポイントに注意すべきか整理してみましょう。

Point.1 収穫量にあわせて自動割当

農産物の場合、毎日の収穫量がどうしても増減します。在庫を正確に管理しないといけないネットショップの性質上、こうした振れ幅をどのように吸収するかが課題になります。適正な在庫数になっていないと売りすぎによる欠品が発生しますし、逆に在庫が残ってしまうと廃棄ロスにつながってしまいます。

一般に多く行われているのは、確実に見込める分量だけを在庫設定することではないでしょうか。もちろん売り過ぎは防げますが売り逃しも大きいのが悲しいところです。また、詰め合わせのようなかたちで販売し、中身はその日によって変わります、という対応も一般的です。中身の調整で日々の収穫量の増減を吸収できるので便利なやり方ですが、野菜を選べないことによる利便性の低下は否めません。

こうした状況を打開する施策として、極限まで収穫量と販売量をイコールにしながら利用者に野菜を選べる自由を提供するやり方があります。

まず、確実に収穫が見込める分は出荷予定日とあわせて販売します。即日発送ができる体制であれば収穫日に近い日が設定されます。そしてその日の読めない部分に関しては出荷予定日に幅を持たせて表示し、収穫量に応じて納期が変わることがあるという説明も付記します。そして実際の収穫量が確定した段階で、注文した人順に自動で在庫を割当て、出荷分が揃ったものから順次出荷していくという仕組みです。

複雑な仕組みというよりは確実に見込める部分とその日になってみないとわからない部分を分離して管理し、利用者にもその旨を理解してもらいながら双方の最適バランスを目指すというモデルになります。利用者にもある程度の協力を求めるかたちにはなりますが、販売数量が最適化でき、そこから生まれた余裕を商品の品質や価格に還元できるはずなので、結果的に双方にとって意味のあるかたちが作れます。

Point.2 野菜のこだわりや特性をしっかり情報発信

本当に質の良い野菜を販売する際に「おいしい」という言葉でしかアピールできていない野菜ショップが多いように感じます。せっかくこだわって作っているものなのに勿体ないです。自分達のこだわりや、他の市販の野菜との味の違いなど、利用者にとってわかりやすい言葉でしっかりと情報発信をしましょう。なかなか良い言葉があみだせない場合には、外部の力を頼るのも一つです。

また、外部の人にモニターとして協力してもらい、違った言葉でアピールしてもらうのも一つでしょう。食は誰もが関係のある分野だけに、こうした協力者を募るのも比較的実行しやすい施策です。

Point.3 単品購入、定期購入など多様な形態に対応

野菜の買い方の好みは人それぞれです。ちょっとした野菜は近所のスーパーで買いながら定期便で産地直送のものを買っている人もいれば、都度単品買いで新鮮な野菜を取り寄せている人もいます。そうした多様なライフスタイルに応えられるよう、予めシステムを柔軟に構築しておきましょう。

定期購入であればその頻度や希望の内容など、いくつかのバリエーションをもたせるのも良いでしょう。食べきれない量が送られてきても困るだけなので、量と頻度の調整を細かく行えるのが理想的です。また、突発的な用事で定期購入をキャンセルしたい・増やしたい・減らしたいにも柔軟に対応できるのが理想です。

1年、10年と愛し続けてもらうために

食べるという行為が10年後も変わっていないでしょう。ただ、10年後にはネットショップの形態や販売手法には何かしらの変化が起こっていると予想されます。そうした変化に柔軟に対応し続けていくことが利用者を掴んで離さないための秘訣になってくるように思います。

良い物を作って届ける。その本質を大事にしながらも、インターネットという新しい販路を積極的に育てていってみてください。

開発スタッフのコメント
生産地と消費者をより強くつなぐのであれば、生育状況の発信も検討の価値があります。日々成長する野菜の姿を発信することで販売促進にもなりますし、食育としてそのコンテンツ自体を楽しみにしてくれる方もいるでしょう。かといって撮影の手間を日々の業務に追加するわけにはいかないので、定点観測カメラを設置し、そこから撮影される画像が自動的に配信されたり、X(旧Twitter)等に自動アップロードされる仕組みにするのも一つです。農業、そのものをコンテンツにする発想で検討してみてください。