自分らしい死のために
医学の進歩のおかげで、人間の寿命は大きく伸びました。しかし、若い頃と同じように元気なまま年をとるということは想像以上に難しいのが現実です。身体が不自由になったり、病気で寝たきりになったり、痴呆のため周囲との意思疎通に問題が生じたりと、死の瞬間までは自分の思い通りにいかない場合も多いようです。
こうした状況下でエンディングノートというものが登場し支持を集めています。遺言のような法的効力を有する文書ではないですが、周囲の人、特に死後の対応に迫られる家族に対して、自分がどのように最後の時を迎えたいかの意思表示を予めしたためておくものです。終活という言葉がポピュラーになってきたこともあり、以前よりはこうした「死」の話をすることがタブーではなくなってきました。残される側からすると、こうした情報があったほうが助かるため、よりトラブルのない世界に近づいていっているとも言えます。
今回のテーマは、こうしたエンディングノートをオンライン上で作成、保存することができるサービスのシステムについて考えてみましょう。どういった機能を実装しシステムを開発すればよいのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 ログインチェック機能で自動送信
エンディングノートを家族に内緒でしたためたいユーザーも想定されます。一人でサービスを利用し、その存在を家族が知らない。そんな状況下である日本人がサイトにアクセスできない状況になると折角のエンディングノートが意味を持ちません。
その時は予めサービス利用開始時に自分以外の家族の連絡先メールアドレスを登録してもらう仕様にしておき、本人のログインが長期間ない場合はまず本人に確認のメールを送り、それでも反応がない場合は家族の連絡先に通知を送るといったセーフティ機能を実装します。
本人が家族に知らせた上でのサービス利用であったとしても、エンディングノートの存在を忘れてしまう場合もあります。そうした時のセーフティにもなり得ます。編集できるのは本人のみに制限しないと本末転倒ですが、もし、内容を事前に公開することが問題ないのであれば、関係する人に閲覧権限だけのアカウントを知らせておくのも一つでしょう。このようにエンディングノートを中心に、関係する人が適切に参照できる設計をあらかじめ行なっておくのが重要です。
Point.2 簡単な入力で作成可能。製本もそのまま可能
エンディングノートの作成は文字を入力していくだけでできあがる簡単なユーザーインターフェースを用意します。必要な項目に答えるように回答していくだけで最終的なエンディングノートができあがるという仕掛けです。
できあがった内容はサーバー上に自動的に保存され、そのまま保管されます。もし希望があれば製本サービスも提供し、複数のデザインテンプレートの中からデザインを選択するだけで郵送にて製本されたエンディングノートが届くようにします。また、公証人による審査も受けやすいように、情報掲載や出力機能も充実させると良いでしょう。有料オプションとして内容のアドバイスを専門家から受けられるようにするのも良いでしょう。
オンライン上だけで良いという人と製本して手元に置いておきたいという両方の層を確実に確保しましょう。
Point.3 画像アップロード機能で簡易アルバムにも
どういったエンディングノートを提供するかという会社の方針にもよりますが、自分史作成や葬儀の際の写真指定など、画像があったほうが便利な場合があります。そうした場合のために画像のアップロード機能を設け、自分に関連する写真の整理場所として使えるようにします。
もちろん容量の問題もありますが、昨今のサーバー容量の低廉化もありますので、ユーザー一人一人にそれなりの保存スペースを割り当てても問題はでないと思います。全てが管理できるワンストップなサービスを目指しましょう。一つの人生の振り返りツールとしても、活用してもらえるのではないでしょうか。遺影の準備は本人以外が行うと、あれがいいこれがいいと揉める原因になりがちです。本人がエンディングノートと一緒に、こうした写真やデータを残しておけるようにすることはサービスの魅力を高めることにつながるでしょう。
終わりよければ全て良しをサポート
昔から終わりよければ全て良しということわざがあるように、それだけ終わりをきれいに終えることが難しいということではないでしょうか。延命治療に疑問を持ったり、葬儀の方法に好みがあったりと、人間の尊厳とは何かを考えさせられる世の中になってきているように思います。
一人でも多くの方に納得いく最後を迎えてもらうためという挑戦しがいのあるテーマ、応援しています。