食卓をサポートする宅配ビジネス
宅配というと、古くはお寿司や丼もの、その後は中華やピザと拡大を続けてきましたが、お弁当やお総菜を宅配するサービスが最近は勢いを増しています。「料理は作りたくないし外に出るのもおっくうだけどきちんとした食事が取りたい」といった層に対して、1回配送や定期配送など様々な形態でサービスが提供されています。宅食と呼ばれたり、フードデリと呼ばれたり、呼び方は様々ですが、共働き世帯の増加や高齢世帯の増加を背景に、市場規模は拡大しています。
コンビニエンスストアもおにぎりやお弁当の売り上げがかなりの比率を占めることを考えると、宅配弁当市場が持つポテンシャルも相当なものがあります。大手の参入も増え、文字通り競争の激しい市場になっています。このレッドオーシャン化しつつある市場で生き抜くには、強い商品力に加えて、高い効率性が求められるでしょう。
今回のテーマはそうした宅配弁当ビジネスを支えるシステムについてです。ユーザーからの注文を受け付け、それを製造現場から宅配スタッフまでスムーズに情報共有する仕組みがビジネスには不可欠です。その仕組みを下支えするシステムを、どのようなポイントに気を付けて構築すべきか整理してみましょう。
Point.1 スマホとタブレットで機動的に情報管理
お弁当を製造するスタッフから宅配するスタッフまで、多様な環境、かたちでシステムが使われることが想定されます。その前提にのっとり、システムの基本設計をスマートフォンやタブレットのようなモバイル端末に最適化します。
厨房ではタブレットで注文内容を即座に確認できるようにし、宅配スタッフはスマートフォンを片手に配送商品のピッキングから配送完了の報告までを行います。できる限りペーパーレス化を推進することで、ユーザーの突然のキャンセルや変更依頼にも直前まで対応できるようになります。もちろん、紙ベースで管理すべきものとの棲み分けや、既に運用している仕組みとの統合は慎重に行った上でのペーパーレス化です。もちろん、現場で使用するには水かかりや湿度、汚れの問題があるため、耐久性の高い端末選定も必要になるでしょう。また、自分が使わない機能が画面を占有しているのはストレスの源です。利用する人の立場や職種に応じて、画面構成が変わるようにすることで操作ミスは減らせますし、参照したい情報に到達するまでの操作数を少なくすることができるでしょう。
システムを利用する端末も機動力溢れるものにし、スピードが武器になるような事業モデルを作り上げましょう。
Point.2 ユーザーの好み情報は双方で管理可能に
食べるものは人それぞれの好みがたくさんあります。味付けに対するものであったり、嫌いなものに関するものであったり様々です。そうしたユーザー毎のリクエストをうまく管理することができれば、「このお店は私のことをよくわかってくれている」という感動を創造することができるのではないでしょうか。
もちろん、電話やメール、ネットでの受注時にリクエストを受けた時にはスタッフが設定しますし、ユーザーにマイページを開放し、簡単な入力や選択操作で好き嫌いの設定やアレルギー物資の設定を行えるようにします。購買履歴ももちろん重要なデータで、そこから好み判定をするアルゴリズムを洗練させていくことができれば、新しい商品の提案の精度もどんどんと高まっていきます。こうした情報がリアルタイムで各部署に共有されることに意味がありますし、一つのシステムを横断的に使うメリットになり得ます。
このようにユーザーと運営スタッフ双方で好み情報を更新していくことで、ユーザーのかゆい所により手が届くサービスが実現できます。製造現場がどこまでその好みに個別対応していくかは別の工夫が必要ですが、大きな競合優位を手にするために取り組む価値は十分にあるように感じます。
Point.3 通知のようなコミュニケーションを自動化
定期便というかたちで宅配弁当を毎日や毎週といった単位で契約している場合、毎日の献立やお届け予定時間などの連絡をこまめに行うほうがユーザーの満足度が高まります。こうした通知をシステムを活用することで自動化し、最適なタイミングで最適な情報提供ができるよう設計します。
その人のために作られるお弁当の製造進捗をシステム上で管理することで、お届け予想時間が算出できます。また、基本となる献立にユーザーの好み情報を反映することで、今日の献立情報が組み立てられます。共通のシステムで全てを管理するからこそ、高い精度で正しい情報が提供できます。適切な情報提供はユーザーの不安な気持ちを払拭します。そしてさらに楽しみにしてもらえるような情報提供のかたちも発展型として可能だと思います。
メールは基本としつつ、LINE通知も検討してもいいでしょう。双方向性を担保するならチャット窓口を設けつつ、基本的なやりとりはチャットBot(AI)に委ねるというのも省力化の一つの方法です。コミュニケーション手段は多様化し続けているため、シェアの大きいものには積極的に対応していくことをお勧めします。
噛めば噛むほど味がでるサービスを
胃袋をつかむことの重要性は今更説明の必要もないでしょう。最適化された味や献立は、ユーザーにどっぷりとリピートしてもらうための必須条件とも言えるかもしれません。そのためには作って届ける、という単純なプロセスの中でどのようにして好み情報を蓄積し活用していくかが鍵になります。そしてそれを実現するのは間違いなく共通の管理システムです。まずは一歩、ITを活用する経営へ踏み出してみてください。