学びたい人と教えたい人の橋渡し
音楽の先生というのは家庭教師と同様、自宅にいながら開業できる事業モデルとして一定の需要と供給を保っています。家に楽器があれば何も必要ないという手軽さから、専門でやっている人から趣味的にやっている人までたくさんの供給者が市場に存在しています。ただ一方で、気軽すぎるビジネスモデルから、競争は激しいを通り越して供給過多です。少子化も進み続けており、需要の縮小と供給の拡大が同時に発生しており、なかなか簡単な市場ではないようです。
こうした零細事業者の悩みの種はどうやって生徒を募集するかです。近所へのポスティングや貼り紙、チラシなどの旧来からの手法も引き続き有効ですが、そうした手法での集客に限界を感じてる事業者も多いのではないでしょうか。文化教室などのチラシにおんぶに抱っこという方もいると思います。
同様の悩みは先生を探している人にも当てはまります。チラシが投函されない地域だったり見逃していたり、さらには近所のビラに抵抗があったり知人の紹介が期待できなかったりで、なかなか良い出会いのない人も多いのではないでしょうか。未だに市の広報誌などやチラシを頼りに探しているという人も多いと思います。
こうしたミスマッチを解決するためのマッチングサイトですが、ピアノやギター、トランペットやサックスなど数多くのマッチングのプラットフォームになることが期待されます。今回はこのマッチングサイトのシステムをどのように構築すれば先生側も生徒側もハッピーな仕組みが構築できるのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 自宅住所を起点に地図上検索
音楽の先生探しに限らず、習い事を探すときには家からの距離が重要になります。仮に会社の帰りに通う場合でも、会社の近くで探すことが多いのではないでしょうか。このように通常の住所や路線での検索に加えて、「家から近く」や「会社から近く」といった「○○から近く」といった検索が簡単で便利です。
住所を入力するかたちもひとつですが、ユーザーの入力のしやすさを考えて郵便番号での検索が現実的です。入力された郵便番号を基に近隣で登録のある先生情報を地図上に表示し、地図上のピンをクリックすることで詳細情報を確認できるようにします。また、地図をぐりぐりとスクロールしていくことで、最初に表示された地域以外の情報も表示できるようにし、その人の行動範囲に最適化した検索を可能にします。
加えて、居住地や通勤経路を登録すれば、その沿線に応じた提案をしてくれるのも良いでしょう。どこなら通いやすいか、を的確に理解し提案できれば、その提案機能だけでもユーザーにとっては大きな価値になりえます。教えたいものの属性にあわせて、ターゲット層が望む探し方を提供するのが重要です。
Point.2 先生側の発信や掲載情報を充実
自分の通いやすいところに先生を何人か見つけたとしても申し込みに至るまではいくつもハードルがあります。その人のレベルや人柄、教育方針など、ユーザーが事前に確認したいことを事前にフォーマット化して掲載してしまいます。こうすることでより的確な比較検討ができるようになります。
さらに開発コストをかける余力があれば、サイト内で先生側が簡単なブログを更新できるようにすることで、日々のレッスン風景を発信できるようにすることも有効です。コストがあまりかけられないのであればX(旧Twitter)へのリンクやX(旧Twitter)のフィードを読み込むなどの中間的な対応でも効果があります。InstagramやYoutubeチャンネルの紹介をするのも良いでしょう。
昨今は動画でのコミュニケーションも一般的になっているため、レッスン風景や自己紹介、演奏動画など、ショートムービーを簡単に掲載できるようにするのも一つです。文字や画像だけでは伝わらないその先生の良さが少しでも伝わるのであれば投資の価値があります。
Point.3 要望やサポート依頼もしっかり拾い上げ
サービスを全国規模で展開するのがもちろん理想だと思います。ただ、先生側の登録が追いつかず、検索しても近隣の先生がヒットしない地域が多く発生してしまう場合があります。こういった人たちをそのまま逃してしまうのは大きな機会損失ですので対策を行うべきです。
具体的には「この地域の先生を探して欲しい」というリクエスト機能の実装です。郵便番号とそのユーザーのメールアドレスを1クリックで送信できるようにし、それに対してスタッフが先生を探し紹介するという流れです。もちろん、リクエストをほったらかしてしまうと逆効果なので、リクエスト機能に対しては素早く対応できる体制と運用フローを整えてください。
手動対応になるので一見効率が悪く思えますが、需要を刈り取れる可能性があがるというのと、需要ありきで先生側と交渉が行えるというメリットがあります。最初こそ手動での紹介ですが、先生側がサービスに満足してくれればその地域はそれ以降は空白地帯ではなくなります。地味な積み重ねですがこうして少しずつ先生の空白地帯を消していきましょう。それでもリソース的に難しい場合には、エリアを限定としたサービスにして密度を高めることも検討してみてください。
サービスは大規模でも、一件一件を積み重ねていける仕組みを
マッチングサービスは規模が命ですので、どうしても前のめりになって焦ってしまいがちです。登録数がなくても見切り発車で全地域対応してしまうと空白地帯ばかりが目立ってしまいますが、それを地道に消し込んでいく作業が重要なのは言うまでもありません。
大きなビジョンと地道な努力。この両方を持ち合わせたサービスだけが生き残っていけるのだと思います。システム同様、確実に完成度と機能を高めていくアプローチが重要なのではないでしょうか。