何でもネットで数字管理する時代

ネット上でデータを管理する流れが企業だけでなく個人にも押し寄せています。その筆頭として家計簿の機能をもったものがスマートフォンのアプリとしてや、WEBサービスとして登場するようになってきました。見える化が好きな方や、節約意識の高い方は既に利用されている方も多いのではないでしょうか。

元々定型パターンの多い家計簿はネット上で管理するのに適したデータです。たくさんのサービスがデファクトスタンダードを目指してしのぎを削る今、切り口次第では参入の余地や他を突き放す可能性はまだあると思います。

今回のテーマはこの家計簿アプリ/サービスのシステム開発での重要ポイントについてです。どのようなポイントに気を付けて機能を定義し構築すれば、ユーザーの支持を得られるようなサービスにすることができるのか考えてみましょう。

Point.1 入力はスマートフォン前提で大胆に

家計簿サービスで一番のポイントになるのが入力のしやすさです。スマートフォンが登場する以前のサービスはマウスでクリックを何度しないといけないのか、というものばかりでしたが、主戦場は明らかにスマートフォンに移ってきています。

スマートフォンで入力し、確認し、使いこなす。この一連の流れの中で大胆な入力方法を採用しない限り、既に先を走っている競合には勝てません。画像を撮影すれば自動もしくは半自動で科目を判定して集計してくれたり、過去に類似のものがある場合は簡単に複製登録ができるようにしたり、はたまたユーザーの現在地からあり得る選択肢を提示して選択できるようにしたりなど、既に存在している方法から新しい方法まで柔軟に模索すべきです。

スマートフォンの入力方式を理解しつつ、テンプレートでの登録やよく使う取引の提案、プリセットによる選択の手間の軽減など、細かいアイデアはいくらでもあります。最初の段階ですべてを実装することはできなくとも、ユーザーインターフェース(UI)への改善・投資は継続的に行っていくべきです。

長く続けられるかはデータ入力をどれだけ続けられるかとイコールです。簡単に、そして楽しくなるような工夫にいくら頭を悩ませても無駄ではありません。AIによるサジェスト機能や自動登録機能など、先進的な機能にも積極的にチャレンジすることをおすすめします。

Point.2 データの書き出しにしっかり対応

入力したデータを、ユーザーの好きな列構造のCSVデータで書き出せるようにシステム対応します。こうすることでユーザーの離脱を促進してしまうデメリットはもちろんありますが、折角入力したデータを救出できることがわかっているサービスだからこそ、新規のユーザーが登録してくれるという効果の方が圧倒的に大きいはずです。家計簿のデータは継続して残したいデータがゆえに、こうしたデータの所有権、持ち出しのしやすさが明確なサービスは指示される傾向が強いです。

ただ、固定のフォーマットで書き出せるだけではパンチ力に欠けるので、列の順番をユーザーが並べ替えたり省いたりできるようにし、書き出し先のサービスでそのまま利用できるように機能を充実させましょう。また、一見、競合への移行を促すようにも見えますが、汎用的なデータやデファクトスタンダードとなっている書式でのデータ書き出しや読み込みにも対応することで、よりサービスとしての信頼感を高めることができます。

Point.3 視覚化、ゲーム化、ソーシャル化

既に述べた部分と重なりますが、家計簿が継続できるかはいかに簡単に入力できて、楽しく使えるかにかかっています。そこでサービス全体を通じた視覚化、ゲーム化、ソーシャル化が重要になってきます。

蓄積されたデータをわかりやすく美しく表示することで、継続して入力するモチベーションにもなりますし、何より今の自分の収支状況が分かりやすくなります。また、3日間継続できたら○○ですとか、前月の支出を下回ったらイベントが発生するなど、細かい部分でゲーミフィケーションの要素を導入し、続けること、がんばることが楽しくなるような仕掛けを施します。また、Facebookなどと連携し、自分のがんばり状況を他者と比べられるような機能の実装や、サービス内でのランキング表示なども考えられます。

レポート一つとっても見せ方は色々とあるため、サービスのコンセプト、カジュアルさにあわせて柔軟に発想してみてください。ヘビーユーザーを育てる導線設計を徹底的に精緻に行いましょう。必要であればA/Bテストや、ベータテスターによる動作検証などを繰り返して、仮説検証のサイクルを回してみてください。

ユーザー数、そしてマネタイズ

魅力的なサービスを構築できたとして、ユーザー数を確保できた次はいかにしてマネタイズするかが問題になってきます。アプリ自体を有料にするのも一つですし、携帯電話会社からの報酬を収益源にする方法、また、アプリやサイト内広告で収益をあげる方法も考えられます。

個人を相手にする限りはなかなか税理士の斡旋等のマッチングでの収益は期待できないだけに、なくてはならないサービスになった後の舵取りは慎重に行う必要があるでしょう。とはいえ、まずはいかにユーザー数を確保し、使い込んでもらえるかがスタートであり最低条件です。魅力的なサービス・システムを構築し、新しいマーケットを開拓しましょう。

開発スタッフのコメント
家計簿アプリとなると、銀行の取引の自動取り込みといった機能も検討の価値があります。銀行の数も多く、またそのそれぞれがそれぞれの都合でリニューアルをしたりするので、対応し続けるコストは相当ですが、利便性には代え難いものがあります。気軽で簡単なものを目指すか、情報の集約という価値を追いかけにいくかで判断してみてください。