コスト重視の際の有力な選択肢、Wordpress

WordPressの快進撃が止まりません。会社サイトからちょっとしたECサイトまで、Wordpressをベースに構築する例が増えてきています。高機能がコストをかけずに実現できるということで、Wordpress指名でプロジェクトがスタートする場合もしばしばです。近年はSSG(スタティックサイトジェネレーター)という、簡単なWEBサイトやブログを構築するための仕組みも拡がりつつありますが、ITリテラシーの高低に関係なく利用できるWordpressのシェアを崩すには至っていません。

とはいえ、WordpressにはWordpress特有の癖がありますので、そこを考慮しないまま構築してしまうとその良さを使い切れないばかりか、最終的にマイナスな資産として残ってしまいます。利用者が多いからこそ狙われることも多く、セキュリティ上の対策をしっかり行う必要があることは言うまでもありません。

今回のテーマはWordpressをベースにしたFAQサイト制作です。BtoCの業種であれば規模の大小の差はあれ、FAQ(よくある質問)を掲載している会社の方が多いのではないでしょうか。ユーザーが問い合わせに至る前に解決することでユーザーと運営側の双方の労力を削減することはとても意味があるように思います。このFAQサイトをWordpressをベースに制作するにあたって、どういったポイントに気を付けるべきか考えていきましょう。

Point.1 キャッシュと構造化が大前提

WordPressは非常に高機能で優れたシステムですが、標準状態でたくさんのFAQを追加していくと動作がどんどんと重たくなってしまいます。動作が重く探しにくいFAQサイトであれば、ユーザーが目当ての質問に至る前に問い合わせフォームへ移動してしまうということが考えられます。FAQサイトは表示スピードは命です。検索する度に何秒も待たされるようでは、ユーザーはとっとと離れていってしまいます。また、お目当ての情報が手に入らないと、結局問い合わせ窓口を探して電話やメールを送ってくるので、顧客対応のスタッフの負担が減りません。

WordPressには幸い、表示スピードを改善するためのキャッシュプラグインが多数存在しています。とはいえそれぞれのプラグインで性格が違いますので、案件にあったプラグインを選択、時には自前で作成するなどして対応する必要があります。キャッシュプラグインのせいで動作が逆に緩慢になったりしては本末転倒です。

そして質問の構造も重要です。フリーワード検索で探すという導線もありますが、探したい情報のカテゴリを掘り進んでいくという探した方にも対応できるよう、質問の分類や複数カテゴリへの登録などを柔軟かつ精緻に行いましょう。

Point.2 検索も速度と負荷に徹底注力

WordPressの標準の検索機能は、掲載されているFAQの数が増えるに従い、遅く、負荷も大きくなってきます。ユーザーの検索が増えるにつれサーバーの余力が逼迫していき、想像以上の早さでサーバーを過負荷の状態に追い込んでしまいます。こうなってしまってはユーザーはストレスまみれですし、サーバーの増強などで運営コストばかりがあがってしまいます。

FAQ数によっては自前での検索機能の実装も検討の価値があります。必要な情報をシンプルにデータベースから探し出すことに絞り、データベースの構造も適正化することでスピーディーかつ低負荷の検索機能は実現可能です。もちろん、サーバー自体のスペックをあげることで解決できる問題でもあるので、両方を実行できるのであれば尚良しです。FAQサイトは探すためのサイトなので、探すための機能にはいくら投資しても意味があります。WordpressがベースとしているPHPという言語は独自に実装しやすい言語でもあるので、そこまで難易度が高いわけではありません。

月に数千円の投資でも劇的に効果をあげる場合があります。どこがボトルネックなのかを適切に把握できれば、効果的な解決法を探し出せるはずです。

Point.3 関連する質問、参照の多い質問など、提案表示をしっかり

カテゴリで構造化されていても、フリーワード検索が精度高く結果を表示しても、なかなか目当ての質問にたどり着けないユーザーもいます。そもそもどういった用語を使うのかわからない場合や、自分の置かれている状況をうまく説明できない場合など、いくらでもそういったケースは考えられます。

この場合に効果を発揮するのがFAQの提案表示です。よく参照されるFAQを表示すればたいていのユーザーはすぐに問題が解決するでしょうし、同じカテゴリや類似のFAQをあわせて表示すれば、目当てのFAQまであと一歩のユーザーを迷子にせずに済みます。一方で関係ない提案表示はユーザーを迷わせるだけですので、どこまでいっても精度がとても重要です。似たような質問を表示するのも良いでしょうし、検索の自動補完として、近しい候補を検索キーワードと一緒に提示するのも良いでしょう。

もとになるデータについても、完全自動での表示も可能ですし、多少の手動作業を加えるのであればさらに関連性の精度を高めることができます。必要に応じてタグ付けを行えば、精度をどんどんと高めることができます。目当ての質問にたどり着くための最後の提案表示、重要です。

24時間働き続ける顧客対応

顧客対応スタッフを24時間体制で稼働させている会社はごく少数派だと思います。人によるサポートは時間や体制の制限を大きく受けてしまいます。その点、FAQサイトは24時間365日稼働可能ですし、ユーザーの好きなときに好きなだけ情報を参照してもらえます。

ユーザーの問い合わせを100%解決することは難しいかもしれません。ただ、問い合わせを半分に減らす効果は期待できますし、長期的にFAQを充実させていくことで、その比率を高めていくことも可能です。しかも、ユーザーの満足度を損ねずにです。

システムができてからが勝負、という側面が強いFAQサイトですが、適切な土台ができていてはじめて蓄積の努力が実を結ぶのも事実です。まずは適切な設計ができるよう注意してください。

開発スタッフのコメント
最近では、Wordpress以外の静的サイトジェネレーターを使った構築事例も増えてきました。とはいえ、あまりITに詳しくない担当者が簡単に更新していく、という点においては、Wordpressに一日の長があるように感じます。今後もこの分野はますますITリテラシーに関係なく、裏側を意識せずに実行していけるようになると思いますが、まだまだWordpressが有力な選択肢であり続ける時代が続きそうです。