ソーシャル時代にまだまだ根強い需要
X(旧Twitter)のような、短文投稿サイト・サービスが増え続ける中で、URLを短縮したいというニーズはまだまだ存在しています。短いドメインに何桁かの乱数で構成される短縮URLは、これからも一定のニーズが見込めます。また、一般に公開されたサービスではなく、自社の特定用途のために短縮URLシステムを運用しているというところもあるかもしれません。
収益化の方法が難しい領域ではあるものの、単純なビジネス度外視のサービスとしてや、広告掲載をメインに考えている場合、会員向けのサービス機能としての開放など、やり方はいくらでもあります。仕組み上も非常にシンプルですので、サービスとしての難易度も低いというメリットがあります。ただ同時に、それだけ競合が存在していることでもありますので、後発で参入するのであれば何かしらの差異化が必須でしょう。
今回はそんな短縮URL・転送サービスのシステムをどのようなポイントを意識して構築すれば、より価値があるものにできるかについて考えてみましょう。
Point.1 ユーザー向け管理画面の充実
ユーザーのニーズをものすごく単純化してしまえば、「短いURLで希望のURLに転送したい」ということに尽きますが、そのURLが実際にクリックされたかや、どういった人達によってクリックされたかということを知りたい人も多く存在しています。いわば簡易的なアクセス解析を提供してほしいというニーズです。
まず、短縮URLをクリックした人の情報や数をシステム側で取得・蓄積します。個人情報のようなものはもちろん取得できませんが、アクセスしているのがパソコンなのかスマートフォンなのか、アクセスするのが初めてか二回目かといったことは精度が100%ではないにしろ判断ができます。トータルクリック数はもちろん取得できるため、どれぐらい人気があったかを可視化することもできます。
そして、ユーザー登録をすればユーザー向けの管理画面にアクセスできるようにし、その画面内でグラフや表の形式で集計されたデータを確認できるようにします。どちらかというとヘビーユーザー向けの機能ですが、こうしたしっかりとした機能を作り込むことが、最初の口コミ層の形成で重要になってきます。
Point.2 管理者向け機能で不正検知
サービスを提供しているサーバーに余裕がある限り、そのままほったらかしの運用でもかまわないのですが、管理者向けの集計画面を構築することで、「今、何が起こっているのか」を可視化します。
具体的には、どういった転送先への利用が多いのかといった情報や、ユーザーの平均利用回数、ユーザーの増加数等、ビジネスとして運用していくための基礎情報や、不正利用や異常利用を検知するために必要な情報をすぐに確認できるようにします。また、統計情報としてまとめたものを発表すれば、サービス自体の認知度形成にもつながりますし、業界内でのプレゼンスを高める効果もあるかもしれません。
こうした情報は広告主に提供する基礎情報としても使えるので、GoogleAnalyticsのようなアクセス解析と併用して、PDCAのサイクルを回せるようにしておくことが重要です。加えて、禁止事項に該当するような利用や誘導を検知できるようにしておけば、自社サービスを通じての被害を未然に防止し、知らない間に犯罪に加担していたといったリスクを低減することも可能でしょう。
Point.3 利用数にあわせて制限可能
ユーザーは一人一人がみんな、平均的な使い方をしてくれるわけではありません。一回しか利用しないユーザーもいれば、何らかのツールを使って異常なまでに沢山のURLを設定して使うユーザーもいます。また、ほとんど使われいないのに延々とデータだけが残り続けてしまうという悩みもあります。最初のうちは問題にならないことが多いですが、データ件数が増えていくにつれ、次第にシステムに対するボディブローのようにきいてきてしまいます。
特定のユーザーがシステム全体に過剰な負荷をかけ、他のユーザーの満足度が下がるのは避けなければいけませんし、何より不公平です。そこで、ユーザー毎にクリック回数や短縮可能なURLの設定数の制限をかけられるように、予めシステムを構築しておきます。さらに、その上限回数は有料会員になることで解除することができるようにし、広告収入以外の有料会員収入に対しても可能性を残しておきます。また、データの保管期限をあらかじめ決めておくことで、たとえば1年間アクセスが1回もないデータは消していく、ということも可能になります。無期限で、というのが訴求上は良いのかもしれませんが、それでは延々とコストの垂れ流しになってしまうため、どこかで線を引いたほうが良いでしょう。
こうした線引きは、突然予告なく実行すると大きな反発を招いてしまいます。利用規約への記載はもちろん、異常を検知したら予告的な警告表示を行うなど、トラブルにまで発展しないような仕組みづくりも良いでしょう。
たかが転送、されど転送
短縮URL・転送サービスは既に世界中で沢山のサービスがあります。その中で差異化していくことは困難ですが、特定の用途や特定の層に絞った展開であれば、まだまだ可能性は残されていると思います。
ターゲットを絞り込み、そのターゲットにとって便利な機能や安心な機能を実装していくことで、単体、もしくは何かの補助機能として大きな価値を創造できるはずです。
より多くの利用を促すのであれば、APIを開放し、システムからのアクセスで短縮URLを生成するなどの選択肢もあり得ます。どのような目的でどういった層を目指すかにはよりますが、ビジネス的な観点も含めてお気軽にご相談いただければと思います。