地域住民のコミュニケーションハブとして

今回のテーマは地域ポータルサイトを新規立ち上げもしくは大幅リニューアルするというもの。行政やNPO、企業によるインターネット利用の施策として一時期はブームのようになった地域ポータルサイトですが、閉鎖したものが多く、継続しているものも風前の灯火のようなサイトも多いのではないでしょうか。

この3年でインターネットを取り巻く環境は大きく変わってしまいました。情報を提供しさえすればよかった時代から、コミュニケーションをデザインし、自律成長するメディアの仕組みを構築しなければ永く続かない時代になったと言えると思います。そのような時代背景を踏まえることができれば、今の時代に即した地域ポータルサイトのかたちが見えてくるはずです。

今、この時代に地域ポータルサイトを作るとしたらどういったポイントが重要か考えてみましょう。

Point.1 参加者の声や交わりのコンテンツ化

ブログが一世を風靡した頃から、ユーザーが投稿するコンテンツをうまく活用するサイトが多くなってきました。それをもう一段階進め、X(旧Twitter)などに代表されるリアルタイムメディアを地域ポータルサイトのコンテンツとしてうまく取り込みましょう。写真を中心に展開するのであればInstagramの活用なども有効でしょう。

単純に関連するツイートを掲載するといった初歩的なものから、お店単位やイベント単位、観光スポット単位でツイートやチェックインをまとめ、そこで擬似的に会話や口コミをまとめて表示することも可能です。

そこに参加しているユーザーにとってはコミュニケーションを行う楽しみがありますし、何よりX(旧Twitter)等にアカウントを持っていれば、また別に会員登録をする必要がないので参加するハードルが下がります。また、地域ポータルサイトに新しく訪問してくる人たちには生の声としてとても重要な情報源になります。

どうしてもこういう口コミを取り込む段には「荒れる」という懸念が先に走ってしまいますが、その場合はFacebookなどの実名メディアに限定してしまうなどの対応をとることも可能です。また、通報機能を実装することでユーザーによる監視ができるようにしたり、管理者が迷惑ユーザーを検知しやすくする仕組みを実装したりすることも有効でしょう。

Point.2 登録型と編集コンテンツのバランス

地域ポータルの一つの目玉機能が、地域のお店やサークルに宣伝する場を提供するというものです。システムとしてどんな人でも迷い無く情報登録ができるようにすることで参加者の裾野を拡げます。また、RSSやメール配信、X(旧Twitter)での配信など、登録された情報や新着情報を様々な手段で提供することで、受信する人の裾野も拡げます。

受信する人が多ければ多いほど、情報発信という意味では成功に近づきますし、何よりそこから先に拡散していく効果も期待することができます。なんでもかんでも拡がればいい、炎上してもいい、というのはやりすぎですが、程よいレベルで拡散するような仕掛けを仕込むのは積極的に取り組むべきです。

そういった運営側の手間がかからない登録型のコンテンツの一方で、訪問者の満足度を高めるためには編集コンテンツも必須です。具体的には記事広告のような形態で、「カレー特集」や「テラス席があるカフェ特集」といったテーマごとに幾分かの広告費を頂戴し記事コンテンツ化するというものです。最初の立ち上げ期には営業の労力は必要ですが、ある程度登録店舗が増えてきた後はその登録店舗に営業・取材を行うことで運用工数を削減することができます。

また、登録されたコンテンツもそのままほったらかしではなく、その品質が向上するようなサポートを行うのも一つでしょう。各コンテンツのレベルがあがれば、地域ポータルとしての価値も向上していくため、運営側の人的リソースの許す範囲で、各コンテンツの品質が向上するための指導や補助を行うのも良いでしょう。

Point.3 地域のニュースを網羅

地域ポータルサイトの差異化ポイントの一つとして、新聞や大手メディアには載らないけど普段の生活で知りたい情報を提供することにあると思います。遠くの事件より、近くのスーパーの特売が気になるのが人間というもの。その地域のニュースを継続的に集められる仕組みを構築します。

運営スタッフによるニュース作成には限界があるので他のユーザーにもニュース作成機能を開放できるようにシステム対応します。理想型は地域ポータルサイトの参加者が自発的にレポーターとして登録し、ニュース記事を作成・投稿してくれる状態ですが、必要に応じて運営スタッフと外注スタッフを組織し、最低限必要なニュース量を確保します。自発的なレポーターのモチベーションを高めるために、ゲーミフィケーションの仕組みを導入するのも一つでしょう。記事の閲覧数に応じてランクが変わったり、アバターが変わったりと、遊び心を持った仕掛けはいくらでも選択肢があります。

加えて、地域情報に登録しているお店やサークルにもニュース投稿機能を開放し、本当に知りたい地域の情報がまとまっているという地域ポータルサイト本来の立ち位置を確固たるものにします。地域住民による地域目線の情報と行政関連の情報があわせればニュースサイトとしての価値も大幅に高まるでしょう。

永く愛され続ける存在へ

地域ポータルサイトはどうしても手がかかります。完全に自動化されたサイトでは価値がありませんし、かといって運営コストがかさむと継続していくことができません。ただ、インターネットで情報を収集するのが当たり前の今、そこに対して無策であるのはあまりにもリスクが高すぎます。

「なんとなく作る」ではなく、「永く愛されるサイトを作る」という大きなビジョンを持つことがスタート地点。自動化するものやユーザーにかたちづくってもらうものをシステムによって最大化することで運営コストを低減し、肝となる部分は運営スタッフや協力レポーターによって質と量を担保することができれば、まだまだ大きなチャンスがあるジャンルだと感じます。

開発スタッフのコメント
Wordpressを筆頭に、既存の仕組みでの運用も不可能ではないだけにどの段階で独自システムに踏み切るかの判断は難しいところです。一地域に限定すると、その投資を回収できるのに少し時間がかかるかもしれませんが、近隣地域も含め、ある程度の横展開を検討されているのであれば、独自構築が追い風になることは間違いありません。