情報発信が問われる時代、動物園でホームページを持っていないところなど存在しないのではないでしょうか。それほどに重要性が認知されていると思いますが、そのポテンシャルを十分に活かせているかというと話は別です。何年も前に作られて以来そのまま、というところも多いと思います。

積極的な広告をうちにくい業態だけに、引きの強いホームページは集客の柱になり、長期的な競争力をうみえます。早速いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 スタッフ任せにしない更新

X(旧Twitter)やFacebook、Instagramなど、ソーシャルメディアの普及によって、日々の情報発信をスタッフに任せているところも多いと思います。継続的かつ具体的な情報発信は非常に有効な施策なので可能な限り推進すべきですが、その内容の質をスタッフ任せにしているところも多く、もったいないと感じることもしばしばです。

たとえば何かの赤ちゃんが生まれた、という一つのネタに対しても、どのような言葉で、どういった写真で、どういったシリーズで伝えていくかに企画のセンスが問われます。ただ、素朴に紹介するだけでも多少の効果はあるかもしれませんが、一つのネタを、大きなうねりにし、ソーシャルメディア上で拡散される大ネタにつなげるためにも、ソーシャルメディアの活動量のみならず、その質も意識するようにしてください。

手をつけやすい施策としてはよりよい発信をするための勉強会と、効果を数字で測定するための体制整備です。何もたくさんのお金を使わずとも、効果測定の体制は作ることができます。何を目指し、何をするかを明確にすることで、ソーシャルメディアでの発信力は高まるはずです。

企画や新しい取り組みを奨励する文化づくりにも同時に取り組んでください。現場が萎縮すると企画も萎縮してしまいます。ホームページやソーシャルメディア上の発信力が高まるような組織作りも重要です。

Point.2 写真、動画、そしてGIFムービー

動物園であれば写真にこだわり、さらには動画も効果的に配しているところが増えてきました。最大のアピールポイントである動物たちをいきいきとした姿で伝えるのは理にかなった方法なのでどんどんと強化すべきです。動物のムービーを見る人を和ませますし、いつの時代も不動の人気コンテンツでもあります。

さらに一歩進んだアプローチに、GIFムービーを効果的に使うというものがあります。動画は再生ボタンを押して再生がはじまるので、そこで足止めをしてしまったり、動画を見ることのハードルが高かったりしますが、GIFムービーは画像の一種として読み込まれ、少ない尺ながら、動画っぽく見てもらうことができます。

コミカルに動く動物たちをGIFムービーとしてホームページの各所に配することで、よりダイナミックなホームページ体験を潜在顧客に提供することが可能です。

また、Youtubeチャンネルに積極的に取り組んでいくことも有効です。若い世代を中心にYoutubeの視聴数はすさまじいものがあります。動物園が持っている資源というのは、普通の人には真似できないものばかりなので、少し切り口を工夫するだけで興味を持ってもらえる確率は高まるでしょう。「動画でみせると来園者が減りそう・・・」と思って敬遠しているとしたらもったいなさすぎます。存在を認知し、あらためて動物っていいなぁと思ってもらえることで、来園者増につながる効果の方が大きくなるはずです。

Point.3 フォトジェニックを意識

Instagramが若い世代を中心に爆発的に普及する中、動物園も「写真映えする」という点を意識すべきです。動物と距離が近い、ということも十分なアピールポイントではありますが、さらに踏み込んだ企画を園内でできないか、ホームページと連動するかたちで企画してみてください。

これはどこかの観光地にあるような古くさい写真撮影スポットを作る、という話ではありません。例えば1時間に1度、動物とすごく近い距離で撮影ができるだとか、時間限定の練り歩きがあるだとか、思わず写真を撮りたくなる、自慢したくなる企画ができないか、各園の事情にあわせた発想をどんどんと試してみるのをお勧めします。動物への負担は当然考慮すべきですが、頻度や対象となる動物をきちんと計画することでストレスを軽減してあげてください。

また、植栽の配置を工夫するだけでも、撮影スポットを作り出すことは可能です。ショップで販売するアイテムについても、見栄えのする商品を増やせないかを検討するのも忘れないようにしてください。

変わらないコンテンツ価値

動物園は派手さはないものの、今もなお色あせないコンテンツ価値をもった業態だと思います。見せ方が変われば顧客体験も大きく変わります。動物たちは変わらなくても、それをどう紹介し、どう楽しんでもらうかが運営側の腕の見せ所ではないでしょうか。

きれいなだけのホームページから一歩進化し、もっともっと楽しい動物園に進化させてみてください。

開発スタッフのコメント
話題性のある動物がいればそれを目当てにした集客が見込めますが、そうでない場合には自分たちで動物にスポットライトを当てていくしかありません。インターネットで発信できるようになり、埋もれたかわいさ、おもしろさを発信しやすくなりました。この状況を活かしている動物園は、地道な取り組みで来園数を伸ばしているように感じます。日々の動物のケアも大切ですが、その動物たちをタレント化するのも飼育員の仕事の一つと定義し、組織全体で発信力を強化していけるよう取り組んでみてください。