スピード勝負の世界

アパレル業界で求められるスピード感の基準がどんどんと高まっています。企画から投入までをいかに早められるか。このテーマに、世界中のアパレル企業が躍起になっています。いわば、スピードが競争力につながる時代。この時代を勝ち抜くためには、従来ながらのやり方ではやっていけないと危機感を持っている方も多いのではないでしょうか。縫製工場の仕事がどんどんと海外に奪われている今、世界的な競争の中での対応力も問われていると言えます。

品質だけでも、コスト競争力だけでも難しく、その両方が求められる時代になりつつあると言える中、今回は、こうしたアパレルビジネスにおいて、縫製工場や各工程の中で、どのように生産管理を行っていくべきか、いくつかのポイントで整理してみたいと思います。

Point.1 細かい単位で生産性を視覚化

いくつもの工場を使い分ける商社の立場であれば工場単位。さらに細かくいけば工場の縫い子単位で、その生産性が視覚化されるのがベストです。どういったアイテムならどの工場、縫い子が得意なのかが視覚化されることで、工場の稼働の量も質も高めることができます。今まではなんとなくの感覚や本人の申告ベースで管理していたことが数字化されることで、正確な意思決定につながります。

日々の作業を縫い子単位で登録できるようにすることで、そのデータをそのまま賞与の算定基準にすることもできますし、得意不得意をもとにした人事面談の資料にすることもできます。また、工場全体としての強みや弱みの視覚化にもつながりますので、より的確な設備投資や人材教育の立案につながるはずです。

今まではなんとなくの勘や経験で行っていた作業を、少しずつでもデータ化、視覚化するように意識してみてください。どういったところに強みがあるか、どういった需要があるのかといった傾向が見えてくると思います。

Point.2 生産計画をダイナミックに変更

日々の生産計画を紙ベースで管理しているところもまだまだ多いと思います。紙ベースの管理は非常に柔軟である一方、どうしても変更の度に組み替え等の事務作業が何度も発生し、昨今の変化の激しい環境下では非常に厳しいものがあります。

ここを可能な限りシステム化し、日々の生産計画が自動的に生成されるようにしましょう。人の手による最終調整は必要かもしれませんが、それでも管理者の負担は大幅に軽減されます。縫い子毎の情報もシステム内に蓄積しておけば、変更がある度に最適な管理組み替えを行うようにすることは十分に可能です。毎日、生産計画を確認してその通りに作業を開始する、という流れを作ることができれば、業務が今以上にスムーズに始まることが期待できます。

また、突発的な従業員の休みに対しても、生産計画を自動調整できるようにしておけば、遅れているのか遅れていないのかがよくわからない状況に陥るのを防ぐことができます。100%の精度でないにしろ、こうした生産計画が自動的に生成できることで業務効率は高まるのではないでしょうか。

Point.3 仕事ごとの利益計算も簡単に

日々の業務に追われながら、また、付き合いや予定外の数量変動等で、終わってみたら思ったより利益が無かった、というのはよくあることではないでしょうか。トントン以上であればまだ笑って済ませられますが、赤字に転落する仕事はそうはいっていられません。これは見積もりや正式受注前に正確にわかる必要があるため、担当者のミスで済ませられる話ではありません。

発注量や時期、納期や素材等の情報を打ち込んでいくことで、損益分岐点が算出できるようにしましょう。生産スケジュールの状況も加味することで、「ちょっと利益は減るけど、稼働率をあげるためにこれぐらいなら許容できる」という金額も算出できるようにすれば、営業マンのさじ加減に頼っていた部分もより透明化され、ミスが減ります。何より、値付けに悩む必要がなくなるので、精度向上はもちろん、業務負担の軽減にもつながるでしょう。

為替が影響するのであればそういった情報を考慮できるようにすべきでしょうし、計算の根拠となる人件費等も変動させられるのがベストでしょう。細かい完成度を突き詰められるのが理想ではありますが、そこまでは難しい場合にはある程度の精度でも問題ありません。

小さくても強い工場へ

会社の規模の大小に関係無く、「スピード」と「正確さ」は求められ続けます。今まではベテラン社員の力業で乗り切ってきた会社も、その秘伝のたれとも呼ぶべき人依存の体制を改めるタイミングにきているかもしれません。

秘伝のたれを解き明かし、それをオンリーワンのシステムに落とし込むことができれば、小さくても強い工場に進化することは可能です。業務に即したかたちで、強さの土台になるようなシステムを模索してみてください。

開発スタッフのコメント
最新の機器に最新のシステムで武装した競合も多い中、その真似をするだけが勝負ではありません。同様の資本力を投下できるのであれば否定はしませんが、より会社レベルでの経営判断や、品質向上への取り組み等、できることはいくらでもあります。システムについても同様です。いたずらに機能の多寡を追い求めるのではなく、自社の強みや課題点にフィットするような作りにできれば、自社独自の強力な武器として、競争力の底上げに役立つのではないでしょうか。