底堅いペット市場

ペット市場は、一時期のブームは終わったものの、猫の飼育頭数が牽引するかたちで底堅い動きを見せています。ただ、物販を中心とした市場は既に成熟しており、周辺サービスへの展開を模索する企業が増えてきているように感じます。ただ、なかなか安定した基盤を築くことは難しく、新しくはじまったサービスが数年後にはひっそりと閉鎖しているという話も珍しくありません。

その中で、旅行時等にペットを預けることができるペットシッター市場が注目を集めています。従来は近所のペットシッターを探して直接申し込む、といったスタイルが主流だったのが、特定のサイト、サービス内でシッターを探し、そのまま予約申し込みが完了する業態です。インターネットの力でこうしたマッチングが一般的なものとなり、ペットシッターのジャンルでも普及している、という構図です。

今回は、こうした犬や猫を預かってくれるペットシッターのマッチング、派遣予約管理サイトのシステムについて、どのような点に気をつけるべきか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 スマートフォンでの操作性

こうしたマッチングサービスが増えてきた背景には間違いなくスマートフォンの普及があります。パソコンに張り付くことなくインターネットサービスを利用できるインパクトは大きく、ペットシッターサービスの場合もその存在は無視できません。

サービスのUI設計を、モバイルファーストで構築しましょう。スマートフォンでもストレス無く操作できるよう、無駄なプロセスを減らし、ボタンの位置まで徹底的に練りましょう。すぐに近くの空いているペットシッターを探せるような画面設計にしましょう。地図上にマッピングするだけでなく、その情報に重みをつけてユーザーの「探すストレス」を軽減する工夫をしましょう。

ペットシッターの予約プロセスに5分もかかるようでは遅いと言わざるを得ません。3分、1分と処理操作時間を減らすためにビジネスプロセス全体をデザインすることが肝要です。さらにお気に入り機能や決済情報の記憶などを通じて、それを数十秒まで縮めることができると思います。より直感的に、より簡単にを合言葉に、徹底的に使い心地にこだわってみてください。

予算が許すのであればiOSやAndroid向けのスマートフォンアプリの構築も検討の価値があります。アプリをインストールしてもらうというハードルはありますが、使い心地やできることの多さはプラットフォームとして魅力的です。一方で予算は継続的に必要になるため、戦略上の優先順位をつけた上で、取り組む価値があるか判断してみてください。

Point.2 タイムリーな通知設計

ペットシッターとのマッチングを行う場合、登録または協力関係にあるペットシッターにとっても使いやすいシステムでなければなりません。使いにくいシステムはペットシッターのやる気をそぎ、結果として空き枠登録がなかなかなされないなどの弊害が発生します。ユーザーも大切ですが、ペットシッターも同様に大切です。この両輪がなければ事業が成長しません。

マッチングサービスのストレスの一つが、常にマッチング状況を気にかけないといけないというものです。性格によってはずっとメールの送受信ボタンを連打しているという人もいるでしょう。この通知のストレスを軽減することが重要です。

具体的には、メールの通知以外にも、SMS(ショートメッセージ)での通知にも対応しましょう。マッチング申し込みが入った段階でSMSというかたちで通知がくれば、他のメールにまぎれることもなく、また、SMSだけ通知音を変える等で気付きやすくなるというメリットもあります。

また、さらに進んだ取り組みとしては、登録ペットシッターとのやり取りをLINE上のBotで行うというものもあります。これは予約確認の通知から、その応諾まで、LINEでの会話を通じて行うというものです。人工知能を搭載したBotの開発を伴うため工数が増えますが、ペットシッターが普段使っているツールを最大限に活用するという意味では、非常に使いやすい仕組みになると思います。コミュニケーションツールは普及度が高く、使う人のスマートフォンにすでに入っているか、何もインストールしなくてもそのまま使えるものをベースに検討するのが良いでしょう。

Point.3 記録資産が残る工夫

サービスを利用すればするほど、より心地よく利用できるように情報が蓄積されるようにしましょう。これは単純に利用履歴を確認できるというレベルの話にとどまりません。ペットシッター記録やカルテを作り、どうしたことをするとどういった反応をしたか等、ペットシッターにとっても、飼い主にとっても意味のある情報が蓄積するようにします。

「仕方なしに預ける」というだけでは、利用頻度も利用満足度も高まりません。ペットシッターを前向きに利用してもらうには、ペットシッティングの価値を見える化していくことが重要です。ペットシッターに預けるという経験が、オーナーにとっても、ペットにとっても良いものであるべきです。

共通のトレーニングを組み込んでその達成状況を管理できるするのも良いでしょうし、おもちゃやしつけ、食事に関することでもいいでしょう。ペットシッターもさまざまな資格やスキルをアピールできるようにし、預かり時間の付加価値を高められるようにするのも良いでしょう。

ペットシッターと飼い主の自由な関係性構築も大切ですが、システムとして共通の基盤を設けることで、そういったコミュニケーションがより良い方向に蓄積されていくよう設計することが必要ではないでしょうか。

文化として根付くかどうかの瀬戸際

ペットシッターやペットホテルといったものは、まだまだ日本では一般的ではありません。どこかペットがかわいそう、という気持ちがぬぐえず、そもそも旅行をとりやめたり、なんとかペットOKのホテルで我慢したりといったことが日常的に起こっています。

ペットシッターとのマッチングを滞りなく行えることも重要ですが、システムとして、こうした後ろめたい気持ちを払拭するぐらいの体験を提供できるかがそれ以上に重要だと考えます。システム設計にとどまらない、ビジネスモデルをも意識したデザインを意識してみてください。

開発スタッフのコメント
簡単なシステムであれば情報ポータルに毛が生えたようなサービスになるでしょうし、最初の立ち上げ時はそれで良いかもしれません。ただ、世の中がどんどんと手のひらのスマートフォンの中で完結するようになっている中、より使いやすい仕組み、より使いやすい導線を突き詰めていくと、システム化や、スマートフォンアプリ化も視野に入ってきます。段階投資も有効ですので、成長段階にあわせてレベルを確実に高めていけるようなシステム投資を行ってみてください。