インターネット通販において、大手流通による寡占が進んでいます。インターネット検索で探して購入というフローから、特定のお店・ショップ・アプリを立ち上げてから探し始めるという行動形式が一般化してきました。価格のみならず、配送のスピードも厳しく評価される中で、amazonのような大手資本に太刀打ちできない事業者も多いのではないでしょうか。

独自商品を取り扱うメーカーや小売店ではあれば立ち位置が違うのでそこまで大きな問題にはなりませんが、一般流通品中心のお店にとっては死活問題です。実際に、amazonで取り扱いが始まって以降、該当商品の売り上げが減少傾向にあるという話は、ちまたに溢れています。中にはマーケットプレイスで出品していた商材が、amazonが独自で取り扱うようになって売上が激減した、という悲しい事例もあるようです。今後もamazonの覇権は当面の間揺るぐことはないことが予想されます。

今回は、こうした時代背景の中、小売店の一つの生き方としての地域密着・どローカルビジネスへの展開について考えてみたいと思います。いくつかのポイントでその処方箋について考えてみましょう。

Point.1 薄く広くから、狭く深く

インターネット通販は、ロングテールという言葉で表現されるように商品数を多く、そして通信販売という形態を活かした、全国、さらには世界を相手に販売するというのが特徴のビジネスでした。しかし、全国を相手にするということはすなわち全国の競合がすべて競合になることを意味し、どうしても大きなお店が独占傾向を強めていくのはとめられません。

配送コストなど、物量がものを言う土俵では勝負できないだけに、中小企業にとっては尚更厳しい競争環境になると言わざるを得ないでしょう。人件費の高騰などの背景もあり、物流コストは上昇しているとはいえ、それでもamazonの配送競争力は高いレベルにあります。この中で活路を見いだせるのがローカル展開の強化です。

実店舗を持っている業態であればその実店舗を拠点に。持っていなくても配送拠点をベースに、周辺の商圏を攻めます。いわばネットスーパーという業態でスーパーマーケットがやっていることに近いイメージですが、近隣地域の需要を根こそぎ取りに行くビジネスモデルです。時代に逆行しているようで、配送の早さでは最も効率的なモデルです。

もちろん、昔ながらの商売形式に戻れというわけではありません。インターネット通販でつちかった便利さ、オペレーションを地域ビジネスに持ち込むイメージです。そして近隣の住人に対して、ワンストップでの商品・サービス提供で単価をあげにいくのが基本路線になります。どのような商品にも、周辺商材やサービスが存在すると思います。商圏が小さくなる反面、とりうるお財布の領域はひろがるため、十分な売上が見込める場合も多くあります。

Point.2 物流・配送体制の洗練

どローカルビジネスを展開するうえで欠かせないのが高度な物流体制です。大手運送会社を使っていてはコストがあわないので、地域の配送会社との提携や、独自での配送体制の構築を視野にいれるべきでしょう。とはいっても、地域が限定されるので大きく構える必要はありません。まずは小さいサイズで実験を繰り返しながら、コストとスピードを両立する体制を模索しましょう。

注文や支払いは電話またはネットですべてうけて、配送チームは配送に徹するといった役割分担が効率化を考える上では重要です。物流も含めて地域に根ざすことで、当日配送どころか、1時間後配送も可能になります。全国単位では勝てなくとも、大手資本との局地戦には勝利できるはずです。特に非関東圏は大手資本の展開スピードもゆるやかなため、より一層効果を持つ場合が多いでしょう。絞り込むことで配送スピードがあがり、納期が短縮されるのであれば非常に意味があります。

スピードが重視される商材であれば非常に高い効果が見込めます。取り扱い商品数が増えると倉庫・出荷体制を高度化する必要はでてきますが、自社でコントロールすることができれば、改善を重ねていけるのではないでしょうか。

Point.3 地域内での提携や買収の積極化

自社で提供しうる周辺商材・サービスを展開しきった後は、積極的に同じビジネスインフラ上にのせられる会社・サービスとの提携を加速させましょう。利益折半のかたちでも、自社の配送の仕組みを提供するかわりに手数料をもらうかたちでもかまいません。同じように地域内の顧客に迅速に商品やサービスを提供したいと考えている事業者はたくさん存在しています。そうした人達を同じエコシステムの中に引き込み、地域内での存在価値・付加価値を高め続けてください。

単体で戦えないのであれば、うまくコラボレーションする部分は連携していくという柔軟な発想が求められていると言えるかもしれません。

ビフォーブラウザ時代の戦い方

amazonがボタンを押すだけで指定商品の注文が完了してしまう仕組みの提供を開始しています。ついつい買い忘れてしまうものなどを中心に利用が進んでいますが、いわばインターネットブラウザを立ち上げることなく購買行動が終了してしまう、究極の囲い込みが持つ意味は強烈なものがあります。他にもスマートフォンのアプリ経由であればスイッチングコストは非常に高まり、容易に潜在顧客にアプローチすることすら許されません。

このビフォーブラウザとも呼べる時代にどう生き残るのか。今回テーマにした「どローカル展開」以外にもいくつもの可能性があると思います。業態や商材・サービスにあわせた次の時代への変化を、あきらめることなく追求してみてください。