今やインターネットが主戦場

印刷といえば、近所の印刷屋に頼むのが当たり前だった時代が、今では通信販売の形態をとることのほうが主流になりつつあります。何よりも安さ、そして最新の技術にどんどんと対応していくスピード感が何より支持されているのだと感じます。名刺からフライヤー、さらには大きめのポスターまで、何かしらのかたちでお世話になったという方も多いのではないでしょうか。ビジネス印刷に特化したところもあれば、総合的なサービス、さらには特定の冊子に特化したサービスなど、多彩なサービスが登場しています。

そんな印刷物通販サイトは印刷品質ももちろん重要ですが、ある一定レベルの品質が担保されているのであれば価格比較は避けられません。また、ヘビーユーザーのような人たちにとっての使い勝手を最大化しつつ、初めての人にとっても複雑になりすぎないサイト設計が必要になってきます。

まさにシステムの善し悪しが競争力に直結する業界。今回はそんな印刷物通販サイトをどのように企画し、その裏側を支えるシステムをどのように開発すべきか、いくつかのポイントで考えてみたいと思います。

Point.1 過去のデータを保持し、1クリックで再注文可能に

新規注文ではなく、増刷のように納品データが変わらない場合、再度新しい注文としてデータをアップロードするのはとても面倒です。また、違ったデータをアップロードしてしまうリスクも抱えてしまいます。注文する側としても、「データは前に送っているのに」と思うのが当然であり、その希望に機能として応えるべきでしょう。

ユーザーがアップロードしたデータはすべて一定期間保持し、マイページからユーザーが再注文操作を行った場合に、その過去のデータを基に印刷工程を進めるようなフローを構築します。こうすることでユーザーの再注文の手間とミスをするリスクを軽減することが可能になります。ただ同時に、前とは少し条件を変えたいというケースにも対応できるようにするとなお良いでしょう。前より用紙だけ厚めにしたい、枚数を変えたい、発送先を変えたいといった細かい調整ができるとさらに便利です。

預かるデータの容量の問題はありますが、システム上で利用できるストレージサービスの選択肢は増えています。そのコストも許容できる水準であることがほとんどですので、自社に最適なソリューションを検討してみてください。

Point.2 運営工数を下げてくれるユーザーには積極還元を

データの作り方やデータの形式等、ユーザーによって癖や好みがあり、どうしても運営側で最終的な調整を行う必要があります。入稿方法などを解説するコンテンツを充実させるだけではユーザーに対する啓蒙が不十分なことが多いのが実状ではないでしょうか。印刷代は同じ値段なのに、顧客ごとにサポートコストが全然違うのはある程度は宿命ではありますが、そこをうまくビジネス上の良い循環に変えていきたいところです。

入稿データの作り方のレベルに応じて、大胆にユーザーをランク付けし、一定の基準を満たしたユーザーには積極的にディスカウントを行います。ヘビーユーザーであればあるほどディスカウントが魅力的に思えるはずなので、運営側で調整があまり必要ないデータへと次第に移行していくことが期待されます。さらにディスカウントに加えて、しっかりとしたマニュアルコンテンツを用意することで、ユーザー全体への啓蒙度合いを高め、中長期的な運用工数の削減も狙います。文字や図表だけでは伝わりにくい場合は、操作手順を動画にしたりするのも良いでしょう。

印刷会社側から見た「良いデータ」は、結果的に印刷品質を高めるデータのはずなので、Win-Winの関係がうまれる好循環をつくりあげることができるのではないでしょうか。

Point.3 多彩な注文方法に対応出来る柔軟な設計を

安さと利便性でがっちりとユーザーをつかんだ後は、いかにワンストップで商品・サービスを提供できるかが売り上げ拡大の鍵になってきます。データを入稿してもらい印刷するという単純な形態の商品やサイズ、紙種を増やしていくのはもちろん、型の保管が必要なサービスやオーダーメード型の商品に展開してくことも考えられます。このあたりは競合とのポジショニング含め、マーケティング戦略をどうしていくかの問題にもなってきますが、市場環境にあわせて、変化していけるかどうかが重要なことには変わりありません。

注文プロセスやマイページの設計において、こうした将来的な拡張を視野にいれた柔軟な設計を施しておくことがとても重要です。成長のスピードにあわせた商品・サービスのフルラインナップ化を実現するためにも、未来を見越した設計が重要なのは言うまでもありません。印刷物に求められるトレンドは、大きな変化でなくても流行り廃りは存在しています。そうした変化に対応していけるかどうかが、確実に売上を積み上げていけるかを左右するのではないでしょうか。

ユーザーもスタッフも快適なシステムを

通販型の印刷サービスは全ての作業をシステム上に統合できるかが効率性を大きく左右します。最初は力業でやっていたとしても、注文数の増加とスタッフの増加に対応することが次第に困難になってきます。業務の破綻はじわじわくるのではなく、ある日突然やってきます。そのときに事業を崩壊させないためにも、ちょっとずつでも確実にシステムを進化させていくことが重要ではないでしょうか。

ユーザーと運営側のお互いがお互いの工数を下げる努力をする。その結果コストが下がり、お互いがハッピーな価格が実現する。この好循環をどの競合よりも早く実現し、どんどんと進化させていくことができるかが事業の成否を分けます。意味と意義のあるシステム投資を積極的に活用してみてください。

開発スタッフのコメント
印刷を中心として開始しても、業務拡大に応じてノベルティ制作やパッケージ制作等へ商材を拡大していく場合もあり得ます。印刷物と似ている部分もあれば違う部分もあるこうしたものへの展開を見越すかどうかで設計は変わってきますので、可能性がゼロでない限りは将来的な拡張性を考慮したつくりにすることをお勧めします。