エクセル管理の限界

多数の物件で構成される数百室の社員寮や社宅の入居状況を可視化したいというご相談をいただいたのは、リゾート事業を営まれている会社の担当者の方からでした。百人規模の寮がある一方で数人の社宅も存在し、大小様々な物件の入居状況をエクセルで管理されていました。情報の更新が間に合わず、今から3ヶ月後にどの部屋が空いているのかがわからないという問題に直面しており、入寮前提のアルバイトや社員の採用に支障が出ていました。また、エクセルの更新業務自体も大きな負担になっており、こうしたエクセル管理の限界を解消するためのシステム開発プロジェクトがスタートしました。

既存データを基にデータ設計

複雑性は増していたものの、管理運用に必要なエクセルデータはすでに存在していました。全く新しいデータ形式を導入することも可能でしたが、現存のエクセルファイルで管理している項目が十分にシンプルだったため、それをベースにシステムで保持するデータ設計を行いました。

そのため、移行時のデータ準備工数を大きく圧縮することにつながったのはもちろん、現場で日々の登録更新業務を担うスタッフの方への導入も非常にスムーズに進めることができました。システム化することで、エクセルと比べると様々なデータチェックが行いやすくなります。入寮日がすでに入寮している人とかぶっていないかといったチェックを筆頭に、データ形式の不備やあり得ないデータ入力を未然に防止できるのは大きなメリットと言えます。

エクセルでは難しい視覚的な画面を用意

システムに期待されたのは入寮者を正確かつ効率的に管理することもありましたが、同時に人事採用含む関係各所に適切かつ直感的な情報提供を行うことでした。そこでいくつかの視覚的な画面を寮ごとに用意しました。

寮ビューと呼ばれる画面では、寮の部屋配置を模した画面で、それぞれの部屋の入居者の情報を表示するようにしました。初期状態ではシンプルな情報表示ですが、必要に応じて各入居者の付随情報を表示できるようになっており、例えば喫煙の有無で入居者のフロアや同室を調整したい、といった場合に効率的かつ直感的に情報参照が行えるようになっています。

また、カレンダービューと呼ばれる画面では、縦軸に部屋、横軸に日をとった画面表示で、どの部屋の入居者がいつからいつまで入居していて、どのタイミングでどの程度の空きがあるかを俯瞰することができるようにしました。相部屋では何人が入居しているかもわかりやすく表示されるため、状況把握に便利です。

基準日でのシミュレーションが可能

入居者はそれぞれ、様々なタイミングで入居を開始し、退去していきます。そのため「今」の状況だけを表示するだけでは未来予測ができません。そこで、各社員寮、各社宅での入居状況を「基準日」にあわせてシミュレーションできるようにしました。前項の寮ビューやカレンダービューと呼ばれる画面では「基準日」を変更することで、例えば今から90日後の入居状況をシミュレーションすることが簡単に行えます。空き状況は総数としても出力されるため、夏休みシーズンに何部屋の空きがあり、新たに季節限定アルバイトを何人まで雇うことができるか、といった判断が素早く行えるようになっています。

機能はシンプルに開発もコンパクトに

システム構築時点で必要とされていた機能は非常にシンプルだったため、プロジェクトとしての規模も、必要な開発期間も非常にコンパクトにまとまっています。社内には同様のエクセル管理で非効率になっているものが存在するということで、将来的な拡張や展開の可能性にも対応できるように構築しています。こうした段階的な開発や投資が行えるオーダーメード型開発の良さを活かした開発例と言えます。

こういったお悩みをお持ちであればご相談ください

直感的な情報参照を行いたい

情報というのはそのままではあまり直感的にはなり得ません。とりわけデータ量が多くなってくるとその傾向は強くなります。参照性だけを追求すると表形式の情報表示になることが多く、表形式には表形式の良さがあるものの、どのようなケースでも万能というわけではありません。

そうした場合にお勧めなのが、同じデータを基にしながらも、用途に応じた専用の画面を準備することです。期間が重要なデータであればカレンダーを模した画面を構築してみたり、推移が重要なデータであればグラフを使用した画面を構築してみたりと、そのアプローチは様々な方向性があり得ます。

もちろん、作成する画面数が増えるため開発工数は増すことになりますが、すでに保持しているデータをどう使うかの問題なので工数をコンパクトにできる場合もあります。データをどういった角度で料理する必要があるかにあわせて検討してみてください。

脱エクセルをシンプルに実現したい

すでに運用管理の方法がエクセルで完成している場合、一からまったく別のものを構築するよりも、そのエクセルの機能をシステム的な解釈で再現するほうが現実的な場合があります。もちろん操作の柔軟性については単体のソフトウェアとして動作するエクセルには叶いませんが、エクセルでは困難だったり、維持・メンテナンスしていくのが大変なこともシステムでは実現しやすいというメリットがあります。

情報の連携や、様々な場所で複数の人が参照、更新していく場合などにもシステムの優位があります。できる限りエクセルのときの使い心地を損ねないように配慮することで、現場スタッフの負担も軽減できます。

また、エクセルからシステムへの移行は、業務改善のチャンスでもあります。そもそもその入力作業は必要なのか、そのデータ列は必要なのか等、システム化を契機によりシンプルな運用管理体制を模索することをお勧めします。

大量の部屋を効率的に情報管理したい

会社規模やその業態にあわせて、どうしてもその管理部屋数が多くなってしまう場合があります。部屋数が増えるということはそこに入居する人の出入りも比例して増えることになり、管理運用業務の負担がどんどんと高まってしまいます。100件の部屋を管理する手間と500件の部屋を管理する手間は大きく異なります。

こうした大量のデータを1件1件更新管理していくのは非常に骨の折れる作業です。検索が簡単に行えなければ必要な情報を探すだけで時間がかかってしまうことが容易に想像できます。こうした大量のデータを取り扱うためには、検索フィルタを充実させたり、検索にかかる時間が短くなるように考慮したりすることが重要なのは言うまでもありません。

また、インポート機能の導入も有効でしょう。一括でデータの更新が必要になった場合などは、手元で編集を加えたファイルをアップロードすることで一括更新できるインポート機能を活用することで、大幅に作業時間を短縮することができます。このように、個別での参照編集を簡単にしつつ、一定量のデータはインポートで処理できる状態を実現することで、様々なパターンで情報更新の手間を軽減することが可能です。


当社では、規模の大小に関わらず、運用されている寮の状況を可視化したり、エクセル依存を脱したりするシステム開発に強みがあります。ご相談はもちろん無料ですのでお気軽にお問い合わせください。

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