多様化という名の追い風
ヘアケア製品、とりわけ、シャンプーやコンディショナーのような、利用頻度の高い商品は、ここ数年、さらに多様化が進んでいます。毎月のように新製品が出ていますし、そのマーケティングメッセージも、その時々のトレンドをうけて確実に変化しています。
以前から、香りや使い心地、さらには有効成分で差異化が行われてきましたが、ノンシリコンやオーガニック製品の登場でさらにその多様化が加速してきました。それにあわせてユーザーの啓蒙も進み、求められるニーズも多様化してきています。この時代は新参入者には大きなチャンスと言えます。昔のような国民的ブランドを生み出すのは難しくとも、狙ったターゲットに商品を届けるのは可能な環境が整ってきています。
とはいえ、新しい商品を市場に浸透させていくのは非常に困難です。大手メーカーやノウハウのある先行メーカーであれば話は別ですが、この時代、どのようなポイントをおさえてマーケティング活動を行っていくべきか、整理してみましょう。
Point.1 No.1の称号をとりにいく
「○○ランキング1位」だとか、「△△売上No.1」といった売り文句を目にしたことがあると思います。その売り方自体は下世話だなと思われるかもしれませんが、実績アピールほど、有効かつ売上につながるものはありません。ですが、No.1をとるのは簡単な話ではないとあきらめている方も多いのではないでしょうか。
一つの考え方として、局所戦と、ステップアップという考え方があります。局所戦とはマーケットを絞ること、そしてステップアップというのはだんだんと成長していくストーリーを軸にしたアプローチです。
例えば、新しいオーガニックシャンプーを開発したとして、それをいきなり楽天市場で売上No.1にするのはほぼ不可能です。ところがこれが、オーガニック専門店であればどうでしょうか。さらには、お住まいの地域のオーガニック専門店に絞り込めばどうでしょうか。
最初から大きな市場でNo.1をとることができれば最高ですが、それには周到な戦略と予算、そして圧倒的な品質が求められます。新興メーカーであれば、まずは地元や手が届く範囲の商品ターゲットと合致したマーケットでNo.1をとり、その次にさらに大きな範囲でのNo.1を目指していくのが現実的です。
市区町村単位だったのがいつしか都道府県単位にしていくもよし、小さなお店内でNo.1だったのが、いつか全国チェーンのお店内No.1になり、さらにたくさんのお店でのNo.1になっていくというストーリーでも良いと思います。嘘をつくのはもちろんだめですが、範囲を絞ったりすることでNo.1をうまく演出することは可能です。いずれは日本全体でのNo.1につなげるため、まずは小さなNo.1からはじめてみてください。
Point.2 称号を得るまでは販促を厭わない
No.1の称号は雪だるまのようにどんどんと大きくなっていくというのは前項の通りですが、最初の時期は販促にお金をかけてください。サンプリングでの無料トライアルは特に重要でしょう。
配る相手を間違えるとただのばらまきですが、チャネルと利用者層が合致すれば積極的にサンプリングに予算を投下すべきです。小売店とのコラボレーションも積極的に模索すべきです。都心部の影響力の高いお店に設置してもらえることのメリットはまだまだ大きいため、こうした店舗に対する営業活動は欠かせないでしょう。
また、自社の直販サイトなど、インターネット上での拡販にも予算をできるだけ投下してください。他の広告手段と比べると費用対効果が高めのリスティング広告も検討の価値があるでしょう。以下にして接点を増やすかが初期はとても重要なので、あの手この手でプロモーションを行ってみてください。
Point.3 多チャネル化を焦らない
No.1獲得戦略と初期においては大きく矛盾するのが多チャネル化です。最初の時期にたくさんの棚を確保できるのは嬉しいことですが、「○○No.1」の売り文句が使えないうちに棚を増やしたところで売上がついてきません。
多チャネル化は予算の限られた状況下では、どうしても選択と集中に反してしまいます。まずは限られた予算を特定の商圏に投下してNo.1をとり、その実績をひっさげて少しずつチャネルを増やしていくという方策でも遅くないと思います。先程の局所戦の話ではありませんが、集中することではじめて到達できる領域があります。
拡大するチャネル選びももちろん戦略的に行い、ちょうど、No.1の称号が雪だるま式に大きくなっていくようなチャネル選びを心がけてください。
忘れられないために
ヘアケア製品は商品の入れ替えが激しく、売れなければすぐに市場からの退出を迫られます。せっかく苦労して開発した自慢の一品があまりに売れないのは悲しすぎます。
商品の良さを伝えるばかりがマーケティングではありません。ステップを踏んで、売り文句を強めていく、いわば成長するマーケティング戦略のような考え方を是非意識してみてください。