競争の過熱化と市場環境の変化

ケーキ屋といえば憧れの職業に必ず顔を出す人気業態ですが、その競争状況は激しく、常に入れ替わりの激しい業界でもあります。さらに昨今、コンビニスイーツや通販スイーツの躍進もあり、より安く、より便利なスイーツが市場を席巻しているため、市場環境はますます厳しくなってきています。原材料価格の高騰などの背景もあり、ますますケーキ屋の経営は複雑になりつつあるとも言えるかもしれません。

一方で、高付加価値スイーツも多く登場し、今まで、地域密着で愛されていたケーキ屋にも変革が迫れていると言えるかもしれません。二極化する中でどう売上を確保していくか頭を悩ませているオーナーの方も多いのではないでしょうか。オープン前でやっていけるか不安に感じている人も、オープン後に調子が落ちてきたという人もいると思います。

今回は、こういった状況下で売上増やリピーターの定着を実現するために何ができるのか、いくつかのポイントで整理してみたいと思います。

Point.1 迎合ではなくコンセプトの先鋭化

今までのように商品が売れなくなってくると、周りで売れているものにどうしても目がいき、自分の店でも真似てしまうのが人間というものです。ですが、元々の店作りから大きく逸脱した施策や商品作りは慎重に検討すべきです。

売れないからと値段を下げたり、ポイントカードを筆頭とした割引き施策を展開するのは簡単ですが、短期的な売上増の後に起こりうる長期的なリスクの方が大きい場合もよくあります。目先の利益に目がくらむと良いことはありません。集客減の原因をしっかりと理解していないと、がんばって準備した新しい取り組みが骨折り損のくたびれもうけという結果になってしまうことも珍しくありません。色々なことにチャレンジするのは良いことではありますが、試す前からやる必要がないと判断できるものがあるのも事実です。効果がでそうなものの中からチャレンジするものを選ぶことにこしたことはありません。

ピンチの時こそコンセプトを先鋭化させましょう。自店の強みは何か、その強みを研ぎ澄ますために何ができるかを考えましょう。店の売りを明確にするために、あえて商品を絞り込んだり、値段をあげることも検討してみてください。戦略の肝は捨てることにある場合が多いのも事実です。取捨選択含め、商品構成、値付け、メッセージの再構築を行うことをお勧めします。

Point.2 集客施策の再構成

小規模なケーキ店であれば、チラシやホームページなど、あまり集客に予算をかけていないところがほとんどではないでしょうか。広告予算をかけるべきとは一概には言えませんが、今の時代に即した、自店なりの集客施策は常に模索すべきです。

インターネット、そしてスマートフォンの普及により、お店を知る方法は大きく変化しました。特定の商品目当てに遠方から来店することも珍しくなくなりましたし、口コミのかたちも大きく変化しています。その中で、今の時代に即した情報発信や、口コミ促進が行えているか自問してみてください。ソーシャルメディアを活用した方がいいケースもあれば、そういうものに手を出さない方が良いケースもあります。大切なのは自店の方向性です。

もし何もやっていない、または、昔と何も変わっていないのであれば大きなチャンスがここに潜んでいます。新規客はもちろん、リピーター定着のために、チラシやDMにとどまらない施策を展開できる可能性があります。集客は予算があるとできることは増えますが、予算がないと何もできないわけではありません。自分なりの情報発信からでも十分に始められます。

Point.3 組織作り

利益を度外視した趣味の店であれば組織作りなど全く検討しなくても良いですが、人を雇い、シフトを組むようなお店であれば、受け身の組織作りではなく、攻めの組織作りをすべきです。人が足りなくなったから募集する、ではなく、どういったチームを作りたいかを明確に意識した上で、計画的に採用活動をすべきです。

もちろん、ただやみくもに求人媒体に掲載するだけでは意味がありませんし、費用だけが大きくかかってしまいます。店頭掲示やホームページでの発信含め、自然と応募がくるような仕掛けを施すべきです。知り合いづての紹介が望めるなら、周りにそうしたヘルプ情報が伝わるように行動してみてください。

強い組織ができあがれば、オーナーであるあなたの負担が減り、より未来のために時間を使うことができるようになります。好循環が生まれますので、一過性でない成長を目指すのであれば必須と言えます。

自己実現をあきらめない

スイーツ作りはアートだと思います。「売れれば何でも良い」というオーナーの方は少数派ではないでしょうか。ただ、アートとしてだけ取り組み「お客さんは何もわかってくれない」と思考放棄するのでは、事業として成り行きません。

ケーキ作りは創造性豊かに。ビジネスは論理的に。この使い分けと、どちらも精度高く実行できるかが、長く愛されるケーキ屋には必須です。愛されるお店作りとのために、上記ポイントを改めてチェックしてみてください。