安全性と効率性の両立
食に安全が求められるようになって久しいですが、その安全性の精度やレベルは高まり続けています。食を扱う事業者のモラルが問われる事件がたまにニュースを賑わすだけに、消費者の目はひたすら厳しくなり、以前は褒め称えられた取り組みも、陳腐化してしまうぐらい各社が安全対策に躍起になっています。
それと同時に求められるのが効率性です。「安全で安いものが欲しい」という消費者のわがままに応えるために残された道は企業努力しかありません。そうした企業努力を支えるのが業務管理であり生産管理です。一つでも多く、一つでもロスを少なく、という視点で現場で行われている工夫は膨大な数に及ぶのではないでしょうか。一朝一夕では築けないものなだけに、うまく強みとして築き上げられた場合には大きな経営上の武器になります。
今回はそうしたたゆまない努力を支える生産管理システムの構築について考えてみたいと思います。どういったポイントに気をつけて構築すべきか、いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 生産バッチを精度高く管理
あってはならないことですが、何か問題が起きた時に迅速に問題を特定できる必要があります。日単位では特定できても、そこからの究明に時間がかかっては意味がありません。どの原材料、どの仕入れ元からの食材で問題があったのかを管理できるよう、入庫から出荷まで、ある程度のバッチサイズで簡単に管理できるようなシステムを構築しましょう。追跡できるようにすることで、各バッチが見える化されます。バッチ単位での調査や原因究明がスピーディーに行える効果が期待できます。
バーコード設備が既に導入されている施設であれば、バーコードと連携するかたちでも良いと思いますし、そこまでの大規模投資が難しい場合は、バーコードリーダーのような端末で、入荷ロット単位でバーコードを貼り付けて管理するのでも十分に効果があります。管理することに手間がかかりすぎては業務効率が著しく悪化しますので、このあたりは現状の業務を見ながら最適解を見つけてみてください。
Point.2 工場外からも状況確認を可能に
工場と会社本部が一体となっている場合はあまり問題になりませんが、工場と本部が地理的に別になった途端に、工場が本部から見えない存在になりがちです。工場の状況を知るために何度も電話をしたり、今日の生産分を確認できるのは日報を待たないといけないという状況では、何かトラブルがあったり、改善が必要な状況が発生したりした場合の初動がどうしても遅れてしまいます。報告に依存するのではなく、管理する側が主体的に情報をとれるようにするのが理想的です。
工場の稼働状況を地理的に離れた場所からでも確認できるようにし、今日の生産量は何をどれぐらいで、順調なのか問題があるのかをリアルタイムに確認できるようにしましょう。現場のことは現場で全て解決する、というのが原則ですが、現場の状況をいちいち報告する手間がなくなることで現場が嬉しい側面もあります。システムが情報を開示することで時間が創造できる場合も多いのでお勧めです。同時に、セキュリティ対策はしっかりと行ってください。外部からアクセスできるようにするということは、考慮すべきセキュリティ上のポイントが増えることを意味します。何も考えずに外部に開放してしまうと、大きなインシデントの原因にもなりかねません。
Point.3 ペーパーレスの徹底推進
昔ながらの名残で、生産状況や各種認証のための書類作成を紙ベースで行っているところもまだまだ多いのではないでしょうか。工程上パソコンのような電子端末を起きにくい現場もあると思いますので、紙という媒体は今後も有力であり続けますが、少しずつでもデジタル化を進められる部分は進めて、ペーパーレス化を推進しましょう。
情報がシステム上に統合されればされるほど、指数的に業務効率は高まっていきます。移行時こそ多少の混乱は起こると思いますが、いつかその非効率を大きく取り戻せるタイミングが必ず来ます。恐れずにペーパーレスによる業務効率改善に立ち向かってください。最近はタブレット等の端末も普及し、工場で使用できる選択肢も増えてきました。ペーパーレス化を推進するための環境は整ってきていると言えます。
精度と鮮度
食品加工は人の口に入るものを扱うため、他の業界と比べても気をつけることが多く繊細な業務が多いと思います。それゆえ、ついつい人力に頼り続け、なかなか業務効率が上がらないことが多いように感じます。
業務効率の向上と業務精度の向上は、生産される食品の品質向上にも必ずつながってきます。商品である食品で価値向上を図る努力と同じぐらいの熱意を持って、業務効率/精度を高める努力を行ってみてください。