存在感を増す移動手段

新宿駅のバスターミナルがリニューアルされてからすでに何年も経過しました。東京を起点とした夜行バスの本数はここで言及する必要のないぐらい多く、飛行機、新幹線といった長距離移動手段と同列の地位を築いていると言えます。他の都市でも、駅前の再開発とともにバスターミナルがリニューアルされることも多く、まだまだその市場環境は底堅いものがありそうです。

価格勝負の事業者が増える一方で、快適性を追求した個性的なバスラインナップも増え、今後もますますそのマーケットが拡大していくことが予想されます。同時に統廃合や廃業もあり、ビジネスとしては一段の効率化が求められています。バスラインナップの増加は同時に業務コストの増大を招きますので、ただ単に増やし続けるだけでは、収益性にマイナスの影響を及ぼしかねないため、対策が必要です。

今回は、こうした夜行バスや長距離/高速バスの予約管理システムについて考えてみたいと思います。早速いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 スマホ対応とチケットレス

長距離バスは世代を超えて利用されますが、それでも比較的若い年代の利用者が多いと思います。彼らにとってはスマートフォンはとても便利なツールであり、スマートフォン対応を行うことは当然のこととして必要です。また、中高年への普及もあなどれません。スマートフォンという世代を超えたツールを手にした今、業務効率化を一気に推し進めるチャンスがきたと言えるかもしれません。

ホームページはスマートフォン対応したものの、予約決済フローが完全にスマートフォン化できていないようなサービスも見かけます。予約完了率に直接的に影響を与える部分ですので早急に対応が必要です。また、あわせてスマートフォンを起点としたチケットレス化も進めましょう。利用者が印刷する手間がなくなるため、不正対策を施せば双方にとってメリットのある施策になり得ます。QRコードへの抵抗感もなくなってきているため、QRコードをかざして受付完了というのも良いでしょう。

Point.2 需要に応じた価格最適化

いまや航空機予約やホテル業の予約サイトでは広く行われている施策ですが、需要に応じた価格を自動的に設定する機能をシステムに組み込みましょう。一律同価格もシンプルで良いのですが、座席という限られた枠の中で売上と利益を最大化するためには100円を追い求める姿勢が重要です。

単純に残席数に応じて価格を調整する方法が比較的簡単に導入できます。また、直近のアクセス数等に応じて需要数を予測し、価格に反映していくという人工知能的なアプローチも有効な場合があります。席の位置にあわせて価格を変動させるのも良いでしょう。価格以外にも需給状況に応じてシステムを変化させることで、売上向上や予約率の改善を狙うことができます。予約受付の生命線なだけに、徹底的にこだわることをお勧めします。突き詰めるとダイナミックプライシングという話になってきますが、できる範囲で、変更価格に挑戦してみることが最初のステップとして有効です。

Point.3 運行管理、安全管理も組み込み

せっかく作るシステムを、予約管理のためだけに使用するのはもったいありません。正常な運行ができているか、安全上問題がないか含め、業務管理システムとしてもそのまま活用できる構造にしてしまいましょう。

バスの中は運転士と乗客だけのため、なかなか見えづらいという事情もあります。また、運転士の業務負担を減らすべく、報告業務も効率化できるところは効率化すべきです。運行の軌跡や乗客満足度の調査含め、運行ごとのデータを適切に蓄積できるようにしましょう。運転業務以外の負担を減らすことは、運転士の負担軽減のみならず、安全な運行に直結します。昨今、バスの事故のニュースも珍しくないだけに、細かい負担軽減の積み重ねが求められていると言えるでしょう。

連続勤務や、運行時間超過など、ついつい見逃しなことも検知できるようにしましょう。事故が起きてからでは取り返しがつかないので、未然に防止するとともに、こうした取り組みを行っていることが安全安心アピールにつながります。

攻める時期の攻める投資を

当たり前のことですが、移動する人が増えるほどバス業界も潤います。インバウンドの増加を筆頭に、移動する人が増えている今こそ、短期的な収益アップ、そして長期的な強みを構築するための投資を行う時期ではないでしょうか。

バスへの投資、人材への投資、システムへの投資。乗客の満足度向上のためにも、今この時期だからこそできる投資を検討してみてください。

開発スタッフのコメント
予約のキャンセルといった利用者側のもの、さらには悪天候等での欠航なども含めると、予定外のアクシデントが非常に多く発生するのがバスの予約管理システムの宿命かもしれません。こうした突発的なイベントにも柔軟に対応できるように構築すべきでしょうし、イレギュラーが起こったときの運転士やサポートスタッフへの負担が軽減されるように配慮すべきです。利用者利便性のみならず、スタッフの利便性も徹底的に追求してみてください。