人力と自動の二刀流
GoogleやYahoo!での検索結果に広告を表示するリスティング広告。CPC広告やPPC広告とも呼ばれたりもしますが、検索エンジンの普及もあり、一般的な広告手段としての地位を確立しています。検索結果への表示のみならず、様々な広告商品が増えていく中で、そのリスティング広告の管理と運用に限界を感じ始めている会社さんも多いのではないでしょうか。
そうした会社に対してサービスを提供する運用代行会社が増えています。こうした会社では手動での運用はもちろん、何かしらのツールを駆使することで業務効率をあげることが可能になります。フリーランス的に活動するのであれば必要ないかもしれませんが、会社として規模をある程度追いかけていくのであればシステム活用は必須と言えるでしょう。大規模なアカウントを効率よく運用していくには、必須の仕組みと言えるかもしれません。
今回はこうしたリスティング広告の運用支援ツール・システム構築について考えてみたいと思います。どのようなポイントに気をつけてシステムを構築すればよいか、早速整理してみましょう。
Point.1 監視・レポートのAI化
リスティング広告運用で骨が折れるのは、変化に気付き、適切な修正を行っていくことです。運用するキャンペーンの規模が大きくなればなるほど、細かい数字が追うのが難しくなり、結果として全体のパフォーマンスも上げ止まる傾向があります。こうした状況を打破するために活用できるものこそシステムに他なりません。
具体的には、今までの専門スタッフの考え方を人工知能(AI)化しましょう。人工知能と書くと大げさに聞こえるかもしれませんが、こういった時はこういった項目をチェックする、という単純なロジックをたくさん整理していくことから始めるので十分です。ただ、ルールが増えていけばいくほどルール同士が衝突したときに複雑極まりなくなって管理できなくなりますので、想定されるルールを見通した上で、長期的な学習・進化に耐えられるアルゴリズム設計を意識すべきです。
リスティング配信会社側の仕様変更にも対応しやすいよう、設定項目は切り出し、変更して管理できるようにするのもおすすめです。仕様変更のたびに大きな改修が必要になってしまうと、費用もかかりますし、何よりその間は業務が止まってしまうリスクがあります。
データ量も膨大になることが予想されるため、エクセルでは限界がきます。クラウド系のデータツールも良いですが、データをためることはできても、監視を起動するのはハードルが高いことが多いです。その点、自由に構築できる独自システムに優位があります。
Point.2 柔軟なインプットとアウトプット
リスティング広告運用を生業としていると、顧客企業からの要望は多岐にわたると思います。完全丸投げの企業がある一方で、アドバイスだけ欲しくて運用は自分達でやりたい、といったものまで、どこまで誰が何をやるかでいくつかのパターンがあると思います。そのパターンによってはシステムが活用できないとなると会社としてのサポートコストが顧客企業によって変わってきてしまうため、システムが多様なかたちで活用できるように構築しましょう。
顧客企業がシステムにログインできるようにするのも一つでしょうし、システム管理画面から多様なフォーマットでレポートや修正のためのCSVファイルを出力できるようにするのも一つです。営業が使えるような資料もシステムから1クリックで出力できるようにするのも便利です。決まったかたちでしか活用できないシステムは非常にもろいものです。どういった案件が来るかわからないからこそ、最後の受け手であるシステムは徹底的に柔軟であるべきではないでしょうか。定例の打ち合わせも共通のダッシュボードを見ながら議論できるとさらに効率的になるでしょう。
システムを顧客側に開放するのはノウハウの流出を心配されるかもしれませんが、そういったシステムを活用できることが重要な囲い込み施策として機能する場合があります。コンサルティングとシステムという両輪での販売施策も検討してみてください。
Point.3 出先で活きるクラウドベース
社内のスタッフ全員が事務所にいるということが当たり前でない時代になってきました。システムに自宅からアクセスする在宅スタッフに出向先の企業からアクセスする出向スタッフなど、多彩な場所からアクセスできることはもはや必須要件になりつつあります。在宅勤務も一般化してきており、対応を迫られているところもあるかもしれません。
システムはクラウド上に構築し、セキュリティ対策はしっかりとした上でどこからでもアクセスできるようにしましょう。不正利用対策等、徹底的に厳しくすることも可能です。自社や顧客企業の要件にあわせて最適なバランスを模索してください。必要に応じて操作ログやアクセス履歴を取得するのも良いでしょう。セキュリティには過剰なぐらいに気を遣うぐらいでちょうど良いと思います。
武器になるシステム
運用代行業のように、何かの一機能をアウトソースされる側のビジネスモデルは、どうしても労働集約型になりがちです。Googleがどんどんとツールを便利にしていくなかで独自色を出し続けるには、効率性や創造性を高める自社ツールへの投資が必須と言えるでしょう。
複雑なものである必要はありません。毎日の10分を削減するところからはじまり、いつの間にか1時間、2時間とスタッフの時間が創造されるだけでも十分な価値があります。まずは次の5年を見据えたシステム投資を是非検討してみてください。