二極化するホテル市場
一方では1万円以下の安さをアピールするホテルが勢力を伸ばし、その一方では次々に高級ホテルが開業しているといいます。二極化が進むホテル業界ですが、お値打ち路線と高級路線のそれぞれの中での競争は激しく、顧客の争奪戦が日夜繰り広げられていると言っても過言ではありません。さらにはホテル予約ポータルサイトも存在感を増しており、一括して検索・比較できる利便性と、割引価格やポイント制度を武器にシェアを伸ばしています。最終的に予約が入るとしても、こうした仲介サイトの躍進はホテルにとっては脅威でしかありません。
こうした中で顧客を伸ばしていくためには、ホテルのイメージアップはかかせません。そのためにインターネットというメディアが果たす役割は決して小さくありません。電話予約への対応におもてなしを意識するのと同等の気合いで、インターネットの改善に取り組むべきではないでしょうか。
今回のテーマは、こうしたラグジュアリーホテル、高級ホテルのホームページ制作と予約管理システムの構築についてです。どういったポイントに気をつけて構築すべきか整理してみましょう。
Point.1 情報充実、ただし導線のわかりやすさを第一に
ゲストを迎えるという意味では、ホームページにやってきた時点からゲストとのやりとりは始まっています。このホームページがわかりにくかったり、見にくかったり、自分の欲しい情報がなかったりすると満足度は下がってしまいます。ページのロードが重たいのも論外です。ページを開く度に何秒も待ってくれるほど、現代人のインターネット閲覧に対する許容度は高くありません。快適にブラウジングができるのは最低条件と言えます。
ゲストが気になるようなことは網羅的に掲載するのは当然のこととして、回遊のしやすさにも注意を払ってください。たくさんの内容があるけれども、どれを押したらどこへ移動するのかわかりにくかったり、デザインにこだわり過ぎていちいちロード時間が長かったり、スクロールをたくさんしなければいけなかったりと、ゲスト視点で見ると使いやすさに配慮されたホームページというのは意外に少ないものです。予約フローなどは特に難易度が高くなりがちです。日にちを決めて時間を決めてと、それぞれに影響を及ぼして連動する要素が多い上に、空いているかどうかで表示も変わります。どこまでをダイナミックに変化させて、どこからをページ遷移させるかなどの設計も含めて、緻密に組み上げていく必要があります。
ホームページが派手に動けば良いというものではありません。独りよがりのデザインではなく、本当の使いやすさ、何度も使いたくなる完成度というものを追求してみてください。
Point.2 リピーターには特別オファーが可能に
ラグジュアリーホテルともなれば、頻繁に利用してくれるファンとも呼べるゲストが少なからず存在していると思います。そうしたゲストたちに特別なオファーを行えるように予約システムを対応させましょう。
ゲストが予約システムにログインした際に特別プランを閲覧できるようにするのがもっともシンプルな方法です。これをメールマガジンと組み合わせることで、「あなただけに」感を高めることができます。
さらに進んだ機能実装であれば、その特定のゲストがよく利用している部屋や、逆に利用したことのない部屋の特別プランをオファーするなどの個別最適化が行えるようにしましょう。より細かい配慮によってゲストの満足度は高まるはずです。入居履歴があるので実現するのは難しくありませんが、こうした「わかってくれているねぇ」という感覚を持ってもらえるような工夫を積み上げていけるかが重要です。
こうした特別オファーは、一般ユーザーにも閲覧はできるようにだけするというのも検討できます。ホテルの方針によりますが、そうした特別なものの存在を匂わせたいという場合には、検討の価値はあるでしょう。
Point.3 ゲーミフィケーションの要素もスパイスに
最近のインターネット集客、とりわけ顧客心理をくすぐる手法としてゲーミフィケーションという考え方があります。特定条件を満たせばバッジが付与されたり、ランキングにランクインしたりといった遊び心あふれる機能を実装するような概念ですが、この考え方をゲストへのおもてなしにも応用しましょう。
単純なポイントプログラムでリピーターに還元するのはそれはそれでありですが、VIPという簡単な言葉以外にも何かバッジを付与できないか考えてみてください。そのホテルで婚礼を行ったゲストであればそういったバッジの付与も考えられますし、毎年特定の時期に宿泊するゲストにはそういったバッジの付与も可能です。オンラインだけにとどまらず、チェックインの際にちょっとしたギフトを贈呈したりと、ホテル直営ならではの情報管理と各所への伝達で、ホスピタリティを高めることができます。さらに特定のバッジ所有者限定のイベントやプランを用意するのも良いでしょう。
高級ホテルですので、あまり遊び過ぎると雰囲気を壊しますが、上品な範囲でいくらでも遊び心を持たせることは可能だと思います。一度、ゲーミフィケーションの応用を検討してみてください。
柔軟に、そしてスピーディーに
高級感、という言葉は便利なもので、とかく何もしないことの言い訳に使えます。高級感に縛られていてはどんどんと保守的になっていきますが、高級感を出しながら新しい取り組みを行っていくことは十分に可能です。そしてそうした新しい取り組みこそ、既存のゲストの満足度も、新しいゲストとの出会いも実現してくれるものだと思います。高級感を制約にするのではなく、一つの武器として、どんどんと新しい挑戦に取り組んでいってください。