日本の物流を支える

日本の通信販売の配送スピードは世界でも屈指のレベルに達しています。国土が狭いというのもありますが、物流システムの進化がその要因になっていることは疑いようのない事実でしょう。通信販売で買ったものが翌日、早ければ当日に届いてしまうというのは、冷静に考えると驚異的なスピードです。

こうした高度な日本の物流を支えているのが、大小様々な運送会社です。プライベートで普段目にすることが多いのはヤマト運輸や佐川急便ですが、そういった大会社の下請けとしてや、中間配送などで運送会社のお世話に知らず知らずのうちになっていることと思います。一般消費者にはどのトラックがどの会社の荷物を運んでいるのかはわからないほどの最適化が裏側で行われていることが多いようです。

今回のテーマは、こうした運送会社のホームページ制作や、荷物管理システムについてです。どういったポイントに気をつけて構築すればよいのか整理してみましょう。

Point.1 トラックの位置をGPSで管理

一般消費者と直接接点がない限り、荷物の問い合わせ番号システムのようなものは不要です。ですが、荷物が今どこにあるかという問い合わせは、たとえ業者間取引が主体であっても、ある一定の頻度で発生するものではないでしょうか。

こうした問い合わせにいちいち調べて折り返し対応をしないですむように、各社のドライバーが持っているスマートフォンから現在地を取得する仕組みを構築しましょう。最近はスマートフォンであればGPSを搭載していますし、紛失した時用に現在地を確認できる機能を積んでいるものもあります。AirTagのような位置情報検出に特化した端末も登場してきており、こうした機能を使える部分は使い、足りない部分は自前で機能を実装することで対応しましょう。休憩中も含めて場所がだだ漏れというのは配送スタッフのストレスになり得るため、ON/OFFを切り替えられると良いでしょう。

Point.2 トラックの空き状況に応じて値段設定

どこかへ荷物を届けた帰りや、そもそも閑散期などは、多少値下げしてでも荷物で埋めたいと考えるのが普通だと思います。こうした動的な価格設定が可能なように、ホームページ上でトラックの稼働率と連動した見積もりができるようにしましょう。

値段が大幅に下がるのはたいてい直前のことが多いので、ホームページで見た人がそのまま申し込めるぐらいのスピード感が重要です。また、トラックに不意の空きが出たときに通知が飛んでくるメール通知サービスも公開しておき、常連さんなどに利用してもらうようにしましょう。

逆に、取引関係にはよりますが、繁忙期や混雑度に応じて値段を上げるのも検討の余地があります。いわゆるダイナミックプライシングと呼ばれる考え方ですが、売上を最大化できる可能性があります。なかなか配送会社側からの値上げ交渉が難しいことも多いと思います。人材不足が叫ばれる世の中のトレンドを背景に、できる範囲で適正な価格実現にも取り組んでみてください。

Point.3 運転品質を透明化

自前でドライバーを抱えている場合はもちろん、委託ドライバーが大半を占める場合も、ホームページにドライバーに登場してもらい、「この人なら安心して荷物を任せられそうだ」という雰囲気を醸成しましょう。ものを目的地へ運ぶ、というのが提供サービスではありますが、その道中の運転方法など、ドライバーによりけりな部分も多く存在しています。

顔写真とプロフィール、安全運転への心がけなどを掲載することで、荷主へのアピールにもなりますし、ドライバー自身の安全運転へのモチベーション向上にもつながります。運送会社の商品は荷物を運ぶというサービスですが、ドライバーやトラックというものがブランドを作る素材になります。内部資格や、表彰などの履歴も確認できると、そのドライバーの運転スキルや意識への信頼度が高まります。きっちり磨いて、スポットライトをあててあげてください。

サービス向上とコスト低減

運送会社はどうしてもコスト勝負になりがちです。上記で述べたポイントは何もコストUPを志向するものではなく、最終的にはコスト削減につながるものばかりです。ホームページは作ってしまえば24時間稼働してくれますし、問い合わせ対応の時間が減れば、事務員の数を減らすことができます。ドライバーの不注意によるトラブルが減れば、それだけ利益が増えます。

短期的にコスト削減できるものも大切ですが、結果として中長期的にコストが下がる部分への投資も忘れないでください。ITの力でまだまだできることが思います。

開発スタッフのコメント
トラック運送会社はITと縁遠い人も多く、なかなかIT投資が進まない傾向があったのは事実です。ただ、運用管理の手間に対する不安さえ払拭できれば、インターネットでの情報発信が効果を持たないことはありません。自社で運用管理できるかたちで情報発信の仕組みを構築することはできますので、自分たちには無理だとあきらめる前に、ホームページや、その周辺のIT投資を前向きに検討してみることをおすすめします。