ニッチメディアの隆盛

インターネットの登場は、メディアのかたちも大きくわけました。全国に対して発進力を持つ大メディアと地域のみで展開する小メディアに二極化していた時代から、大小様々なメディアが全国、さらには世界に対して発信する時代に変化しています。インターネットによる様々な壁や垣根が無くなってしまった時代といえるでしょう。

メディアの運営も法人だけでなく、個人による運営のものも勢力を拡大し、コンテンツの質が良ければメディアとして成立する一つの理想型に近づきつつあります。こういった中で記事の有料化というものが広く検討されるようになってきました。従来は大企業だけがしっかりとした予算と仕組みをもって実現してきた課金の仕組みを小規模なメディアが手にしようとしています。

しかし、導入に際しては一筋縄ではいかないことや小規模ならではの悩みもあるようです。今回は、こうした小規模メディア、とりわけブログベースの記事サイトの有料化を実現する課金システムについて考えてみましょう。

Point.1 カード決済はもちろん、継続課金にも対応

オンラインでの支払い手段としてクレジットカードの存在感が増し続けています。商品が実際に届く実物ビジネスの場合は代金引換といった手段も根強い人気がありますが、実物の配送を伴わないサービス料金の場合はクレジットカード対応は必須です。インターネット系のサービスはクレジットカード決済が広く受け入れられているため、クレジットカード決済だけ対応できていれば、まずはスタートラインとしては十分と思います。

クレジットカード導入で避けて通れないのが手数料です。何も考えずに知名度だけで契約すると5%に近い手数料をとられ、締め日や振込までのサイクルも不利な条件になることがあるので注意が必要です。現時点でのお勧め構成としてはStripeに代表される新興決済代行サービスか、既に一定の知名度とユーザーを確保しているPaypalへの対応です。各社、様々なかたちでの決済ツールを提供しており、ブログやシステムにも組み込みやすいように配慮されています。

どちらも都度決済はもちろん、継続課金にも対応しています。有料記事を配信するサイトであればいかに継続課金してもらうかが重要だと思うので、継続課金の有無は絶対にチェックすることをお勧めします。Paypalはクレジットカード決済としても、Paypal決済だけのかたちでも導入が可能です。最適な組み合わせを模索し、経営上最もベストなサービスを利用しましょう。

Point.2 Wordpressと共存できる課金システムを

小規模なメディアであれば、Wordpressをベースとして構築していることが多いのではないでしょうか。今後も継続的にWordpressを使い続けていくことを考えると、無理に組み込むのではなく、単体の決済プログラムとして構築し、Wordpressの更新や変更に左右されないかたちにすることをお勧めします。

プラグインというかたちで実装すると何やらかっこよく統合されているように感じますが、プラグインにすること自体にはあまり価値はありません。重要なのはサイト上からスムーズに決済まで進めるユーザーエクスペリエンスの方ですので、そこさえしっかりしているのであれば目的が果たせる範囲で最も柔軟で最もコストが抑えられる選択肢をとるべきです。決済サービスによっては、リンクで誘導するだけで決済サービス側の画面でカード情報の入力から決済まで行ってくれるサービスを提供しているところもあるので、そうしたサービスを最大限活用するというのも一つです。

また、Wordpressのバージョンアップの影響と切り離すことも重要でしょう。単体の仕組みとして構築すれば影響を受けることはないと思いますが、Wordpressのバージョンアップによって、知らない間に決済ができなくなっていたというのでは困ります。問題がたとえ発生しても、その影響範囲を限定する設計が重要になるでしょう。

Point.3 会員登録を自動化

WordPressをベースに構築している以上、有料会員の登録はWordpressのユーザー機能やそれに準ずるプラグインを用いて行うことが多いと思います。決済が行われたユーザーに対してその都度スタッフが手動でユーザー登録をするかたちでも問題ありませんが、ある程度の規模を超えるとその対応だけで大きな手間が発生してしまいます。

また、支払いを済ませたユーザーからするとすぐにでも有料記事を閲覧したいと考えるのが普通です。手動によるユーザー登録ですとどうしてもタイムラグが発生し、休日などの場合翌営業日となりせっかくの有料会員の気持ちも盛り下がってしまいます。支払ったらすぐに見られるようになる、が最低限の期待値と言えるかもしれません。

こうしたタイムラグを解消し、スタッフの手間を減らすためにも、ユーザー登録の部分は自動化しましょう。決済完了した際に通知されるメールを自動的に判定し、Wordpressに対してユーザー登録データを投げ込む機能を実装します。こうすることで決済が完了した有料会員はほぼすぐに有料記事を閲覧できるようになるため、満足度が高まります。鉄は熱いうちに、ではありませんが、ユーザーの気持ちの高ぶりに寄り添えるような仕組みづくりを意識してみてください。

確実に収益にする仕組みを

コンテンツをお金に換えるというのは簡単なことではありません。ですが、ニッチで質の高い記事には、お金を払ってでも見たいという人達がいることも事実です。

支払いに対するハードルを下げる意味でもクレジットカード決済の導入は有効です。血と涙の結晶であるコンテンツをビジネスへとつなげるためにも、課金システムの導入を検討してみてください。

開発スタッフのコメント
有料で記事を公開するプラットフォーム自体は、クラウドサービスでも利用できますが、どうしても手数料率が高くなりがちです。自前での手間をすべて丸投げしたいのであればそれも一つの選択肢ですが、事業の中心として本腰をいれて育成していくのであれば自前による低コストな運用体制も検討すべきでしょう。自前特有の難しさはもちろんありますが、問題を整理して一つ一つ解決していくことは不可能ではありません。