身近なところにプロフェッショナル

同じ会社に在籍していても、全ての人と交流があるわけではありません。何か仕事上でわからないことがあっても、上司や同僚、同期に尋ねるといった範囲で止まる人がほとんどではないでしょうか。セクショナリズムまではいかなくても、部署を横断してのコミュニケーションというのはなかなか起こりにくいのが実状です。

会社には多種多様な人がいます。専門とする分野も違えばバックグラウンドも違います。さらにグループ会社にまで範囲を含めると、何にでも答えが見つかるほど豊富な人材プールが存在しています。必要なのはそうした分散するナレッジを共有する仕組みです。優秀な人が実は近くにいるのに、インターネット検索で見つかる情報でしか探せないとしたら大きな損失です。

今回のテーマは、こうしたナレッジ共有を促進するための社内掲示板システムについてです。グループウェアに類似の機能があることが多いですが単機能とすることで組織や会社横断で使用することを想定しています。どういった機能を実装すれば有意義なシステムになるのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 拍手やベストアンサー機能で回答を促進

会社で導入されたシステム、というだけでは、たくさんの人が使い続けてくれるものにはなりません。きちんとした仕掛けを施しておかないと、作ったはいいものの誰にも使われないガラクタになってしまいます。

何かについて質問をしたい人が自由に書き込めるようにし、その質問に答えられる人が回答するという仕組みを基本とします。質問者、回答者共に会社の所属等でプロフィールが自動作成されるので匿名ではありません。

質の高い回答を促進するために、回答に対して質問者や閲覧者が拍手を贈ることができるようにします。拍手の数が多ければ多いほど回答者の評価はあがり、最終的にベストアンサーに選ばれるとさらに大きなスコアを獲得できます。

一定数以上のスコアを達成した回答者はそのジャンルの達人認定を受けることができ、達人にしか表示されないバッジを獲得することができます。達人バッジを手に入れると、プロフィール画面に表示されるのはもちろん、回答を行う際の名前の横に達人アイコンが表示されるようになるので優越感を得られます。また、達人認定に恥じない回答を行おうと背筋が伸びるので、さらに質の高い回答が生まれるという好循環が期待できます。

このように回答する人に報いる仕組みを作ることで、それぞれの分野に達人が生まれ、その達人が持つノウハウやナレッジが全社に拡がっていくという流れを生み出すことができます。スコア回答が善意の仕組みでとどまらず、人事評価にも連動するようにできればより広範囲での参加が見込めると思います。

Point.2 参照の多い書き込みをランキング表示

どのようなナレッジも同じ価値なわけではありません。多くの人が知りたいと思う情報であればあるほどその価値は高く、探しやすい位置に表示するべきです。

閲覧数の多い質問を集計しランキング表示することで、膨大なナレッジの中に一つの軸を作ることができます。また、担当スタッフが定期的にジャンル毎の有用なナレッジを編集して掲載することで情報の構造化が進めることも可能です。参照数としてのアクセス数はもちろん、拍手の数など、基準となるデータはいくつも設定できます。

また、「参考になった」といった投票が1クリックできるようにしておき、こうした基準での並べ替えや表示制御を行うも有効でしょう。

Point.3 質問作成前に類似質問をサジェスト

ナレッジを質問への回答というかたちで蓄積する以上、どうしてもどんどんと質問の数が増えていってしまいます。違う内容のものであれば何の問題もないのですが、同じような質問が乱立すると検索性も落ちますし、回答する側も回答しきれません。

こうした事態を回避するために、質問者が質問を作成する前に類似の質問をサジェスト表示する機能を実装します。入力した内容を分解してデータベース内を探すことで、類似の質問を見つけることができます。提示された質問と似ていると思われるのであればそれで解決しますし、似て非なるものであればそのまま質問として投稿することでナレッジがさらに蓄積されます。

また、元の質問から派生したような質問の場合は、その派生元が辿れるように質問を作成する機能も良いでしょう。情報が自然と構造化されるようにできれば、質問量が膨大になった際にも管理がしやすいメリットがあります。同様に、類似の質問が存在する場合には、周りの人がそれを簡単に誘導できるように、リンク誘導を差し込みやすくしたり、表示の見た目をわかりやすくしたりするのも良いでしょう。

知こそ経営資産

自社内に眠るナレッジをいかに活用できるかが経営を左右するといっても過言ではありません。ただ、せっかくのナレッジも、特定の人達だけが知っているという状態では意味がありません。広く社内全体で活用できるようになって初めて意味があるのではないでしょうか。

ナレッジを蓄積する場としてのシステム活用は非常に合理的な判断だと思います。会社全体の創造力を高めるためにも、システム活用を検討してみてください。

開発スタッフのコメント
消費者とのコラボレーションや外部人材との協業がもてはやされることもありますが、社内リソースというのももっと脚光を浴びて良い存在ではないでしょうか。大きな組織であればあるほど、そこに無数の化学反応の可能性を秘めています。その反応をどう促進できるかが、人材活用、ひいては、組織の成長力を左右するのだと思います。ナレッジ共有はそうした化学反応の最初の一歩として、小さく始められる有効な選択肢の一つになるでしょう。