小さなお客様
保育園や幼稚園も、園児や保護者を顧客としたれっきとしたビジネスです。もちろん社会インフラとしての側面も強く、多くの補助金や規制がある分野でもありますが、顧客サービスをないがしろにしていいわけではなく、むしろ改善を続けていく必要があります。保育園や幼稚園間の競争も存在し、うかうかしていると他の園にごっそりと園児をとられてしまうということも起こりかねません。
しかし、こうした顧客サービス向上のための活動を行っていける余裕は現場にはありません。保育という重要な業務の他に、保育士にはたくさんの雑務があります。また、保育園/幼稚園の運営事務もしかりです。こうした現場の負担を軽減することなしにサービスレベルの向上は不可能といっても過言ではないかもしれません。
今回のテーマは、こうした保育園/幼稚園の事務作業を軽減するためのシステムについてです。園児管理や保護者とのやり取りなどを統合的に管理し、業務効率と顧客満足度の両方を高めるためにはどうすればよいのか。いくつかのポイントで整理してみましょう。
Point.1 保護者と園児のデータを正規化して保存
ここは少し技術的な面が強いポイントになりますが、園児管理のシステムを設計する際に、保護者と園児をわけてデータベースに格納すること(正規化)が必要です。もちろん、園児のデータだけを管理し、そこに保護者名を保存しておくことも問題ないのですが、その家庭の二人目が入園してきた時に関連性が見えづらくなり、システム上の機能拡張の柔軟性が失われてしまいます。
園児は園児、保護者は保護者でデータベース化し、それぞれを紐づけるかたちで管理します。そうすることで保護者に複数の園児のデータを紐付かせることができ、家庭単位での適切な対応や管理を行いやすくなります。家庭単位でのデータ抽出も行いやすくなるため、生徒単位ではなく家庭単位での連絡や、出欠確認等の精度が高まります。また、保護者自体も複数登録できるようにしておけば、父母はもちろん、迎えによく来る祖父母まであわせて管理できるようになります。こうしたデータ管理の設計を、現実の園運営の現場に即したかたちにしておくことで、将来的な機能拡張にも強くなります。
Point.2 保護者とのやり取りはシステム上に蓄積
連絡帳の手書きベースのコミュニケーションにもいいものがありますが、現場の負担と保護者への負担も考慮にいれて、電子化に変更することも検討の価値があります。1日の様子を保護者に報告する際の情報を、紙ベースで管理するのではなく、システム上で管理するようにします。保護者には口頭で説明すると共に、専用の保護者専用ページを機能開放し、そこから過去の日報を閲覧できるようにします。
こうすることで紙に書く時間や資料を探す時間が無くなると共に、保護者側もいつでも過去の情報に容易にアクセスできるようになり利便性が高まります。何かトラブルが起こった際には過去の兆候をさかのぼって見ることで原因究明が可能になりますし、当日迎えに行けない保護者や親族との情報共有も容易になります。
日報を単純にデータ化するだけでも十分に価値がありますが、細かくデータをわけて、レポートやグラフにしやすいようにすることも可能です。このあたりは現場で使用している日報をベースに開発・進化させるのが無難で確実です。慣れの問題で現場は紙を好むかもしれませんが、タブレットやパソコンなど、園内にあるIT機材で容易に入力できる体制を整えることでカバーしてみてください。
Point.3 連絡事項も一斉配信可能
園児管理システムに加えて、保護者への一斉配信機能を実装し、園からの連絡を簡単に送信できる体制を構築しましょう。掲示物は見た、見ていないの問題が起こりがちですし、確認したかどうかのアンケートをとるのも本末転倒です。だからといって全員分の印刷をして配布するのも印刷コストばかりがかさみます。
保護者全体に送信することはもちろん、特定のクラスや特定の条件に合致する保護者にだけ送信することもできるようにします。また、よく使う送信条件は送信グループとして保存できるようにし、定例の連絡をミス無くスムーズに行えるようにします。クラス単位、家庭単位、全校、といった基本グループに加えて、個別の検索軸を保存できるようにしておけば、ほぼすべての連絡をカバーできるのではないでしょうか。
保護者の連絡先は複数登録できるようにしておき、両親ともどもやパソコンと携帯のメールアドレスの使い分け等に対応します。メールがエラーで返ってきてしまった場合には識別できるように該当の保護者の情報にラベルが付くようにします。こうすることで次回送り迎えの際に保育士が確認することができ、連絡が行き届かない保護者が出ない運用を行うことができます。
保育に時間を割けるようにありとあらゆる工夫を
保育園/幼稚園の価値はその保育サービスにあります。ですが、保育士が忙しすぎる状況が常態化してしまうと、その最も大切な保育サービスの質の低下が起こってしまいます。
主役である保育士がもっと輝けるようにするために、活用できるものは全て活用することをお勧めします。使い勝手の良いシステムも必ずその一助となるはずです。現場の状況に即した設計を行い、システムを有効活用してください。