家作りのパートナー、建築家

家を作るときぐらいしか接点がないため、なかなか親しみのない職業と呼ばれることの多い建築家。ただ、その役割はとても重要で、家作りのパートナーとしてこれほど頼もしい存在はいないと言えるかもしれません。家造りの大きな方向性を決めたり、ディテールを煮詰めたり、はたまた施工を管理したりと、その役割は様々なものがあります。

とはいえ、テレビCMを展開しているような大手ハウスメーカーと違い、どういった建築家がいて、どういったことをしてくれるのかはどうしても不透明なのは否めません。相性の問題も含めると、なかなか良い建築家と巡り会えずに困っている人も多いのではないでしょうか。また、建築家や建築事務所は、小規模な事業形態が多いのが特徴です。あまり大きな販売促進に馴染まないという理由もあって、接点が少ないということは原因としてあると思います。

そんな不満を解消するべくインターネット上に出現してきているのが、建築家や設計事務所を紹介し、マッチングしてくれるサービスです。プロフィールやどういった実績があるのかがわかり、そのまま相談することができます。

今回は、こうした建築家紹介/マッチングサイトの管理システムについてです。どのようなシステムを構築すれば、利用者と建築家双方にとって使いやすいサービスができるのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 建築家向けの編集機能を充実・簡単に

建築家は暇ではありません。自分のサイトでもないサービスに対して使える時間というのは限られています。大前提として建築家向けの情報編集機能はできるだけ簡単・スピーディーに情報追加や更新を行えるようにする必要があります。

作例などは写真をドラッグ&ドロップで保存するだけでスライドショーになるようにしたり、独自サイトがある場合はそのブログのフィードを自動で読み込み新着情報として表示したりする等、簡単に充実した情報を掲載できるように徹底的にサポートします。こだわりの部分などはしっかりと解説できるようにしておくことで、同じようなこだわりを持つ潜在顧客へのアピールにもつながります。簡便にも、詳細にも編集できるようにしておくことで、建築家の個性を表現できるようにすべきでしょう。

また、特に立ち上げの時などは運営スタッフが代わりに登録作業を行うこともあり得ますので、編集機能を強化しておくことで結果的に運営スタッフの工数削減にもつながります。出先でもちょっと更新できる、といったぐらい気軽なものになるのが理想的でしょう。

Point.2 実績の画像を解析・分類してサジェスト

どのような家を作ったかという実績は眺めているだけで楽しいものです。同時に、どのような家を好んでチェックしているかを見ると、その人の好みがおおよそわかってくるのも事実です。

サイト訪問者の回遊率を高めるため、また、埋もれている建築家/設計事務所との良い出会いを提供するために、閲覧している家と類似の家をサジェストする機能を開発します。最もアナログで精度の高い方法は運営スタッフが地道にタグ付けをして分類していく方法です。ただそれだけでは時間がかかって仕方ないので、システムを最大限活かし、類似のトーンやかたち等を自動で判別することで運営スタッフの労力を軽減しましょう。

画像認識のAIの精度も高まってきていますので、同じテイストの事例写真を探すといった機能を実装することも検討の余地があります。テイストや色味、使っている建材など、AIに頼らなくても情報ベースで検索、提案できることも多くあるため、そうした充実化をはかれないか、運営体制を模索してみてください。

あわせて、人力によるタグづけも、やはり効果的です。類似の特徴や、よく検索されそうなキーワードでタグ付けしていくことで、検索キーワードや類似事例提案の精度が高まります。

Point.3 提案募集機能でローカル対応

建築家や設計事務所は、地域の工務店や優秀な大工さんとのネットワークが重要になってきます。そのため得意なエリアがあることが普通です。

利用者からすると何もわからない状態で自分の居住地域や好みにあったパートナーを探すのは至難の業です。そこで、広く提案を呼びかけることができる機能を実装し、建築家や設計事務所からの連絡を待つという受け身なコミュニケーションを取れるようにします。

あらかじめ地域や土地、間取りや目的等の情報は入力しておくため、提案する側もある程度算段がつけやすくなります。対象地域ごとに特に興味のありそうな建築家や設計事務所には自動で通知が行くようにし、より精度高くマッチングが成立するようにシステムで後押ししましょう。

もし、自分たちの活動エリアの近くに、実際に建てられて物件がある場合には、訪問見学ができるようにするのも一つでしょう。実際に入居している物件は所有者との調整が必要なためそこまで簡単にはいきませんが、建築家にとってはモデルケースですので、こうした見学マッチング機能を検討する余地はあると思います。予約管理をするのは地味に骨の折れる作業なため、そうした予約管理、アポイント管理のような機能を実装するのも良いかもしれません。

小さな出会いが大きな満足に

家を建てるということは人生にそうそうあるイベントではありません。建築家に頼む、設計事務所に頼むという選択肢がうまくいく保証はもちろんありません。だからこそ、失敗しないマッチングをすることにとてつもない意味と価値があるのだと思います。

情報の充実、登録数の拡充。運営元としてやるべきことはたくさんありますが、安易な数集めに走らない価値あるサービス作りに邁進してください。

開発スタッフのコメント
家を建てる、となると、どうしても実例写真が中心の華やかなものになりがちですが、写真には映らない細かい創意工夫にはなかなかスポットライトがあたりません。本来は登録してくれる建築家や設計事務所、工務店の方々に、どういうこだわりがあるかを書いてもらうことで、選ぶ側にとっても価値あるサイトになっていくものと考えます。写真と異なり、どうしても入力の手間が大きいこうした情報登録を、少しでも簡便に、そして少しでも楽しくできる工夫を、システムとして精緻に設計することをおすすめします。