ネットセールスの一大手法
古くから、そして今もオフラインの世界では行われている営業手法のうち、インターネットの特質を活かして進化したものの一つにステップメールがあげられます。無料特典などを目当てにメールアドレスを登録した見込み客に対して、1通目、2通目、といった具合に予めセットされたメールを順番に送信していきます。こうして少しずつ見込み客を啓蒙し、最終的には目当ての商品・サービスを買ってもらうという仕組みです。
オフラインであればDMや電話といった手段でしたが、インターネットではメールが中心です。メールアドレスを獲得するのが難ではありますが、メール送信自体にはあまりコストがかからないため、情報商材やサプリメントなどの啓蒙商材で人気のある販促手法になっています。メールからソーシャルメディア上でのメッセージ等へ派生することはあっても、これからも利用され続ける販促手法であることには間違いありません。
とはいえ、受信トレイがパンクする時代。ステップメールもどんどんと届きにくくなっています。こうした時代背景を踏まえた上でステップメールの配信システムをどのように構築すべきなのか、今回はいくつかのポイントにわけて考えてみたいと思います。
Point.1 SPFにDKIM認証、迷惑メール対策はしっかりと
迷惑メール対策は日々進化しています。そのあたりのレンタルサーバーを借りて、何も考えずにそこからメールを送信しても届かないことのほうが多いのではないでしょうか。そこで重要になってくるのがサーバー選びとその設定です。
送信する数にもよりますが、あまりにも膨大であればメール送信ASPの利用を検討します。利用料が送信数に応じてかかりますが、設定さえ済ませればすぐに開始できるのでスピーディーな展開と大規模な運用には向いています。
送信数が膨大でないのであれば安価なVPSを契約し、DNSレコードレベルで迷惑メール対策を行うSPF設定にあわせて、サーバーレベルで証明コードを付与するDKIM認証を設定するなどして、正しい送信元から正しく送信されていることを証明します。こうすることでSPFやDKIM認証に対応したプロバイダの迷惑メールフィルタをパスできる可能性が高まります。さらに、突然大量のメールを送り始めるのではなく、IPアドレスのウォームアップも行うに越したことはありません。メールが届かなかった場合のバウンス処理もほったらかしだと送達率に影響するため、送りっぱなしではない体制づくりをおすすめします。
もちろん上記の対策でもどうしても迷惑メールに振り分けられてしまう場合もあります。そうした場合は送信先のプロバイダに応じて相性の良いメール設定を使用して回避するなどの工夫が必要です。また、あまりに迷惑メール報告率が高いと、メールプロバイダーによっては迷惑メールフォルダに入る前に受信拒否されてしまうケースもあります。最新のメール事情に常に気を配り、必要な配慮や設定を行っていくようにしましょう。
Point.2 リスト獲得から送信状況、購入状況まで可視化
ステップメールは状況にあわせて各段階をチューニングしていく必要があります。リスト獲得はうまくいっているのか、メール送信は順調か、実際の購入はどれぐらいの比率で発生しているかなど、経営上追いかけるべき指標が明確に設定できます。これらはすべてメール内のリンクに埋め込まれた識別子を基に、その後の行動を追跡することでデータ化が可能になります。
これを管理画面上のレポートとして俯瞰並びに詳細を確認できるようにします。こうすることで改善が必要な段階が一目瞭然ですし、PDCAサイクルを精度高く回すことでよりビジネスが加速していきます。効果のでるところに重点的に販促活動を行っていくことでより高い効果を期待できます。
Point.3 複数のキャンペーンを並行管理
仮に、あるサービスの販促をAというドメインでやっていたとして、今度Bというドメインを新規取得して違うサービスを開始したいとき、既存のシステムが使えないのは非常に無駄です。
両方のドメインが同じサーバー上に設定可能でそれぞれにSSL証明書が設定可能であれば同一のデータベースで違うプロジェクトとしてリストを管理します。別のサーバーでBドメインを運用する場合は、システム自体を複製して移設して使えるようにします。予めどのようなサーバー環境でも動くかたちでシステムを構築しておくことでこのようなクローン設置が可能になります。
さらに踏み込めば、共通基盤のクラウドシステムとして汎用的に作ってしまうのも一つの方法です。いくつでもキャンペーン単位で登録できるようにした上で細かく管理できれば、自社での利用にとどまらず、外販をも視野に入ってきます。仕組みとしては共通化できるところも多いので、こうした横展開は常に検討の価値があるでしょう。
法令遵守と王道のマーケティングを
ステップメールというと、一部のモラルのない業者が送りつけるメールのせいで悪者になった時期もありましたが、見込み客の承諾をきちんと取得した上での行動であれば今でも非常に効果的な販促手段です。
邪道に走らず、あくまでも王道で数字を追求していくことは決して不可能ではないと思います。柔軟性と確実性を持ったシステムと精緻に練られたステップが組み合わさることで生み出される成果を追求してみてください。