イベント管理、チケット販売のスタンダードへ

アメリカのTicketflyに代表されるソーシャルチケットサービスがじわじわと認知度を高めています。旧来のオンラインチケット販売サイトよりもソーシャルメディアとの連携に力を入れ、チケットを持っているイベント運営者側がプラットフォームとして使い、簡単にチケットを販売できるようにしているのが特徴です。

大手チケット販売サイトにできないような魅力あるニッチイベントを多く集め、イベントを開き収益をあげたい人のチケット販売プラットフォームとなることができれば、大きなビジネスチャンスを持った市場と言えるでしょう。ちりも積もれば、ではないですが、参加者10人のイベントでも、開催回数が全体で多くなれば、そこで動く金額はとても大きなものになります。

今回のテーマは、このソーシャルチケットサービスを構築、スタートするのであれば、どういったポイントに留意すべきかについてです。いくつかのポイントにわけて整理してみましょう。

Point.1 言わずもがな、ソーシャルメディアの活用は必須

イベントには一人で行くのも楽しいですが、大勢いても楽しいもの。イベントへの申し込みや、イベント自体の情報を簡単にソーシャルメディアで拡散できるように、ショートカットリンクや投稿を促す導線設計を行います。ソーシャルメディア上ではデザイン性高く表示されるように配慮し、それを見た人がまた興味を持って訪問するという好循環を作り出します。

また、サービスのログインもX(旧Twitter)やFacebookアカウントで可能なようにし、登録の手間を減らすと共に、ユーザーがソーシャルチケットサービスを利用しているということがうまく拡散できるように配慮します。あらかじめ連携しておけば、ソーシャルメディア側に投稿したいときにもシームレスに行えますので、ユーザー体験が向上します。

ソーシャルメディア上で言及されやすいよう、自社のアカウントでしっかりと情報発信を行うのも良いでしょう。

Point.2 決済の柔軟さと信頼性

自前の決済手段を投入するのはもちろん、Facebookなど、ユーザーが既に利用しているであろうサービスの決済APIを利用することで、支払いに対するハードルを下げます。こうすることで「よくわからないサービスにお金を払う」という不安を払拭することができます。支払いはどこまでいっても不安を伴うものですので、こうした小さな配慮の積み重ねが離脱率を下げていきます。

また、決済手数料を低く抑えられるように決済会社を選択することで、ビジネスモデル全体の利益率を改善します。たかが0.数%でも積もり積もると馬鹿にできない違いをうみます。開発効率との天秤でもありますが、決済サービスは慎重に選択してください。

Point.3 チケット提供側への豊富な機能提供

ソーシャルチケットサービスの肝は魅力的なイベントがどれほど登録されているかです。そしてそのイベントを増やすためには、イベント運営者側を取り込まなければいけません。魅力的なイベント運営者の数がサービスの魅力と比例するとも言えるかもしれません。競合どうしが囲い込みを強め続けるため、一度つかんだ顧客を離さないことはもちろん、他社からの移行を促す仕掛けを実行し続けることが重要です。

決済手数料を含めた費用を低く抑えられるように仕組みを構築するのはもちろん、自分達ではできない充実したプロモーションができるようにシステムを構築します。どう考えても自前で募集するよりもこのサービスを利用したほうが得、楽、簡単という状態に持っていけるように、徹底的にサービスを磨いてください。

具体的には、独自のイベント宣伝ページを簡単に編集できる機能を提供したり、興味を持っているユーザーに対してメールマーケティングなどの手段をとれるようにしたり、提携している各サイトにイベント情報が広く配信されるようなサービスを提供したりと、システム面の努力と営業面の努力で、イベント運営者側へのメリットをどんどんと向上させることができます。もちろん、最初の立ち上げの苦労は増えますが、一度構築してしまえば大きな競合優位につながります。

Point.4 現在地検索など、検索の精度UPと多様化

イベントの数が増えてくるに従い、イベント情報が探しにくくなっては本末転倒です。地域ごとやジャンルといった区分けで探すことはもちろん、スマートフォン利用者を想定した現在地検索などの機能も組み込み、思いがけないイベントとの出会いを加速させます。色々なイベントを眺めているだけで楽しい、という状態を作り上げることができれば理想的ですが、そこまでいかなくても、おもしろそうな情報が自然と見つかる状態は実現すべきです。

同時に、注目のイベントや申込者数の多いイベントなど、自動、半自動で提案表示を行うことで、サイト内での回遊性を高めるとともに、リピート率や申し込み率を高めることも可能です。一定の時間ですごく人気のあるイベントをHOTイベントと紹介するなど、一種のお祭り的な賑わい感を演出するのも有効でしょう。

まずは利用してもらうことに全力を

こういったプラットフォームビジネスは、一度デファクトスタンダードになってしまえば収益化はいくらでも考えられます。どれだけのイベント運営者を巻き込み、ユーザーを確保できるか、その勝負に勝つことにまずは集中すべきです。

短期的には収支面が厳しくとも、ユーザーを増やし利用数を増やしていくことが何より重要です。KPIをうまく設定し、そのKPIがすぐに確認できるような運営側の管理機能も充実させることで、適切な舵取りが可能になっていくはずです。

ベンチャー企業の新規ビジネスとしても、チケット販売に関わる企業の新規事業としても、何かお手伝いできることがあるかもしれません。まずはお気軽にご相談ください。

開発スタッフのコメント
能動的に何か特定のイベントに参加したい、という人だけを対象にしていてはビジネスは拡がりません。「何かに参加したいけど、いいのがあれば・・」といった受動的な状態の見込みユーザーに対してのアプローチもしっかり検討すべきです。メールマガジンが無難な手段でしょうし、LINEやプッシュ通知など、他にも検討できる方法はあります。うるさく思われないこと、オプトイン/オプトアウトが気軽にできることを条件に、通知策を積極的に実装するのもお勧めです。