規模の大小に関係なく、システム化のチャンス有り

日本全国に事業を展開している派遣会社よりも、特定の地域のネットワークを活かして狭いエリアに特化して事業展開を行っている派遣会社が多いと思います。そうした派遣会社の中でも、地域に根ざしたビジネスをもう一段進化させる手段として、より多くの案件を確保しにいくという戦略を描いているところも多いのではないでしょうか。

拡大に際して肝になるのが募集側の企業確保と応募者の確保。そして見落としがちなのが案件とのマッチング効率のUPです。どちらも事業拡大に重要であり、一方だけが伸長しても、両輪として機能しなければ大きな成長にはつながりません。

応募者の数が増えたときに従来の人中心のマッチングだけで戦っていてはとてもとても業務が回りません。要所をシステム化し、応募者自身がある程度の精度で案件を選んで応募できる仕組みをWEB上に作ることでやっと、本腰をいれてビジネスの拡大に取り組めるのだと思います。

今回は、そうした地域に特化した派遣会社がWEB上にお仕事検索サイトを立ち上げる時のポイントを考えてみたいと思います。大手とは違った戦い方をどう実現するべきか、そのためにシステムが何ができるのか考えてみましょう。

Point.1 地理情報を丁寧に蓄積し、通勤時間検索を可能に

特定のエリアに特化しているということは、地の利があるということを意味します。この解像度の高さが、全国や広いエリアで展開している大手との差異化要因になるのは間違いありません。仕事を募集している企業の住所もイメージが湧きますし、鉄道やバスなど、利用できる交通手段も限られてくると思います。

その選択肢の少なさはそのまま通勤時間シミュレーションの精度UPにつながります。お仕事を探しているユーザーが自分の居住地域を起点にした通勤時間検索を行えるようにすることで、「家から近い場所で働きたい」というニーズをもったユーザーの探しやすさを大幅に向上させることができます。通勤経路への理解や条件の少なさといった利点があるからこそ実現できる精度がなければ、この機能を意味のあるかたちで実装するのは大手であっても難しいでしょう。情報の量ではなく質で勝負するというアプローチです。

Point.2 地域限定のオンライン広告へ適正投資

近年のネット広告は進化を続けています。その新しい特徴の一つに、地域をある程度限定して広告を出すことができるというものがあります。関東圏で事業を展開しているのであれば、関西や東北で広告が表示されることは意味がありません。より限定した範囲に集中出稿するほうが、広告予算の費用対効果が高いのは言うまでもありません。

例えば、同じ「人材派遣」という言葉を検索している場合でも、東京の人の場合は無視して、北海道の場合は表示するといった設定が可能です。これは検索結果画面にでる広告もそうですし、他の広告も対応している場合があります。都道府県レベルではまだまだ範囲が広く、エリアがあいまいな場合が多いので、市区町村レベルで出稿するのも良いでしょう。

地域を絞るということは、集客もそれにあわせて最適化する必要があります。広告というかたちでの最適化ももちろんですし、SEOのために地域名をサイト全体にうまく表示されるように構造化すべきです。こうした地味な精緻化が大きな差異化につながっていきます。

Point.3 設計の中心はスマートフォン

これから新規構築であれば、迷うことなくモバイルファーストにしましょう。スマートフォンのような出先での通信端末を中心に据え、その前提で機能やデザインを開発していきます。求職者のほとんどはスマートフォンがメインだと思います。昔はパソコンメインで良かったのですが、今となってはいかにしてスマートフォンの空き時間にいかにして滑り込むか、という競争が激しくなっています。

個人の認証も携帯電話を組み合わせることが考えられますし、メールマガジンなども直接スマートフォンに届く方がユーザーも便利です。仕事の検索もぱっぱっと電車に乗りながらでもできるようにすることで、アクティブなユーザー数を増やし、さらには応募数の増加にもつながります。ソーシャルメディアを活用して、フォロワーを増やす活動も同時にするのも良いと思います。

余力があるのであれば専用のアプリを開発することももちろん考えられますが、よほどの規模でない限り無駄な投資に終わります。まずはWEBサイトをスマートフォン中心に作り込むだけで十二分な効果が見込めると思います。

とんがった存在であり続けるために

特定の地域に特化してビジネスを展開することは、一つのニッチ戦略だと思います。特に地理的な制約が大きい人材派遣のようなビジネスでは、地域特化戦略は今後もある程度は有効だと思います。

しかし、大手がどんどんと案件数を増やし利便性を高めていく中で、何もしないようではいずれ大波にのまれてしまいます。そうならないためにも、地域特化という特色を活かしたWEB戦略を構築していく必要があるのではないでしょうか。

システムに投資する余力があるのであれば今こそ投資すべき時だと思います。とはいえ無駄金を使うのは本質ではありません。自分達に必要な機能を明確に定義し、できる限りコストのかからないかたちでシステム開発を行うことをお勧めします。

開発スタッフのコメント
こうしたサービスで意外に忘れられがちなのが、時代にあわせた雰囲気作りです。主に見た目に関わる部分ですが、その時代にあわせて共感を持たれるデザインは微妙に変化していきます。1年程度であれば大きく変化しないかもしれませんが、数年に一度のデザインリニューアルを低コスト、低リスクで行えるように予めシステムとして柔軟な設計にしておくことをお勧めします。