少量多品種の極み、オーダーメイド

ナイキのIDが、スニーカーのオーダーメイドサービスをネットで展開して以後、インターネットブラウザ上で好みの選択を行うだけで注文ができてしまうオーダーメイドサービスのサイトが続々と立ち上がっています。自分だけのものが出来上がるということで。人と違うのが良い、というニーズのユーザー層にヒットしているのは間違いありません。

HTMLのみのシンプルな注文フォームのものから、Javascriptや動きを多用したグラフィカルなものまで、そのサービスの世界観や思想によって多様な形態が乱立していますが、インターネットが少量多品種生産と親和性が高いことを考えると、今後もこういったサービスは発展し続けていくように思います。

今回はそういったオーダーメイドサービスの中でもビジネスシャツに代表されるシャツを販売するサイトがテーマです。どういったポイントに気を付けて構築すれば今の時代に即したかたちで構築することができるのか考えてみたいと思います。

Point.1 パソコンに限定せず、スマホ・タブレットにも対応

シミュレーションシステムというと、かつてはFlashをベースにしたものが多くありました。ただ、Flashのサポートは特にモバイル端末で弱く、iPadやiPhoneのようなiOSの端末ではFlashは使えません。そんな背景もあり今となっては廃れてしまいました。こうのように技術選定にはトレンドのようなものがあり、この瞬間と少し先のトレンドを先読みして技術選定をすべきです。

また、使用環境をパソコンに限定して割り切ってしまうのも一つですが、家ではタブレットしか使わないという家庭も増えている中で限定してしまうのは機会損失でしかありません。できるだけ多くの端末に対応することで、より多くの人に使ってもらえる環境を整えるようにしましょう。アクセスしている端末によって「利用できません」のメッセージが表示されてしまうのは最悪のユーザー体験です。未然に防止できますので対応端末はできるだけ広く準備すべきです。

iOSやandroidを含むスマホ・タブレットでも使えるように技術選択ならびにシステムを構築することで、機会の最大化を行うことができます。出先でも気軽に買い物ができるモバイル端末への対応は、この先の未来を見据えた時に避けては通れない判断になると思います。

Point.2 他のユーザーや人気のデザインを可視化

オーダーメイドとはいえ、自分のセンスに自信が持てる人ばかりではありません。むしろ、ベースとなるものがあってそれを自分好みにちょっとだけカスタマイズするという方が安心する人が多いのが実状ではないでしょうか。何でも自由にできる、というのは同時に非常にストレスフルであるのも事実です。全員が全員クリエイターなわけではないので、ある程度おまかせから選びたい人にも便利なサービスにすべきです。

他のユーザーのデザインを閲覧できたり、そのアクセス数で人気ランキングを作ったり、はたまた実際の販売数でランキングを作ったりするなど、参照できる情報を積極的に提供します。そしてそのベースとなるデザインからカスタマイズをスタートできるようにシステム化することで、余分な手間を省き、少ないステップで自分好みのデザインに仕上げられるようにします。

コラボレーション企画として、有名人のデザインした設定を用意するのも良いかもしれません。メーカーとのコラボや特殊な素材の提供などもアイデア次第でおもしろい展開になるでしょう。

Point.3 リピート注文には積極的なディスカウントを

少量多品種生産とはいえ、ユーザーはたくさん買うからには何かしらの割引が欲しくなります。そこで同一デザインの2回目以降の注文には積極的なディスカウントを行い、定番の白シャツなどのリピート注文を確実に取り込みます。受注生産とはいえ、全く同じものであれば多少とはいえ生産効率が高まったり、管理コストが低減できたりするはずなので、割引自体に消極的になる理由はそれほどないはずです。

さらに可能であれば一度購入した人にフォローメールを継続して送り、定番シャツを作った人にはプライベートでも使えるシャツを提案するなど、相手にあわせた提案を差し込んでいきます。このあたりの提案の土台はシステムで自動的に抽出し、スタッフはメールの文面を創造的にすることに集中します。あまりに間隔があいてしまうと体型が変わってしまう場合があるので、こうしたフォローアップは程よいタイミングを模索してみてください。こうした施策を組み合わせることで、生涯客単価も顧客満足度も両方の向上を目指し、精緻に行っていきます。

サイズがあえば徹底的な囲い込みを

オーダーメイド型、特にネットのみの非店舗型の販売では、サイズがあうかどうかが大きな関門になります。運良く最初の購入までいったユーザーがその後リピートするかはサイズ面含めたアフターフォローが重要なのは言うまでもありません。

初回返品可能やサイズ直し可能といった大胆な施策を展開するのもおもしろいと思います。一度サイズの山を乗り切ってしまえば、後は同じサイズで複数注文するのみなので、ぐぐっとリピートのハードルが下がります。そこを見越して販促に投資できるかどうかが成否を分けるとも言えるでしょう。

多彩な端末に長期間にわたり対応し続けるのはとても骨の折れる作業ではあります。ただ、今後のモバイル中心の社会を見据え、今このタイミングで対応していくことが競争優位につながるのではないでしょうか。

開発スタッフのコメント
自分のオリジナルのものを作ることができる、というのはオーダーメード系サービスの疑いようのない付加価値ですが、それだけで選んでもらえる時代ではないように思います。あくまでファッションアイテムだという認識で、コンテンツマーケティングとサービス全体が連動していくような取り組みも行うべきでしょう。社内のスタイリストがコーディネートした組みあわせをページ上で紹介し、ボタンリンクをクリックするとそのままそのデザインを基にオーダーができるような動線ができるようにする等、細かい部分での完成度をあげていくことをお勧めします。