無在庫というビジネスモデル

インターネットの登場により、アフィリエイトという仕組みが一般的になってきました。amazonや楽天市場、Yahoo!ショッピングなど、各社もアフィリエイター向けのAPI(一定のルールでアクセスすると便利なデータを返してくれる仕組み)を開放し、自分達の経済圏を少しでも拡げようとしています。ブロガー向けのプラグイン開発も活発で、レビュー記事などに挿入されているアフィリエイトリンクを目にする方も多いのではないでしょうか。

アフィリエイトの仕組み自体は既に何年もの歴史を持っていますが、組み合わせ方や使いどころでの発想の余地は無限にあります。今回はAPIを活用し、ネットショップや比較サイト、情報サイトを構築するためのポイントについて考えてみたいと思います。

Point.1 深さと幅の自動登録

APIを利用することの最大のメリットは、システムによって正確なデータが大量に取得できることです。手作業ではとてもとても間に合わないような量の商品を、充実したかたちで整理・登録が可能になります。少量の商品の紹介であればそこまでする必要はないかもしれませんが、大量の商品を掲載し、それらを効率的に管理したい場合にはシステム化が必須になってきます。

もちろんAPIの提供主毎に仕様が違うので初期の対応コストは大きくなりますが、一度構築すればそんなに頻繁に変更があるものではありません。また設計の際にAPIの仕様変更にも柔軟に対応できるように配慮を行います。通常各社のAPIはバージョンをきって管理されるため、システム側もそのAPIのバージョンにあわせて動作が変更されるように構築することで整合性をとりやすくなります。

またAPIから提供されるデータをそのまま表示するだけではなく、独自の見せ方や集計の仕方、比べ方をうまく工夫することでユーザーに対する価値が向上します。ただの情報の羅列ではユーザーにとっての価値は高くなりませんので、どう付加価値をつけるか、どうオリジナルの見せ方、情報を追加していくかが、マーケティング上は重要になります。APIを提供しているモールやシッピングサイトと同じような情報提示しかできないのでは、ユーザーに提供する便益は小さく、利用してもらうにたる価値がないことになってしまいます。

Point.2 APIを提供していない会社にも対応

魅力的な商品を取り扱っていたり、お値打ちな価格を実現していたりするお店がAPIを公開しているとは限りません。こうした、APIを公開していないお店の情報も自動で取得できるよう、取得プログラムを開発します。もちろん、手作業でやっていては人件費ばかりがかさみますので、クローラーと呼ばれる巡回する仕組みを作ることが一般的なアプローチになります。

ただ、何の配慮もない自動取得プログラムは、大量のアクセスを短時間で送り込むことになり、相手のサイトに迷惑をかけてしまいます。単位時間あたりのアクセス数やアクセス方法など、Googleの検索ロボットが公開している基準や調整方法に準じて開発すべきです。また、さらに相手側に配慮するのであれば、巡回取得拒否の申立ができるような窓口を設けておくのも良いでしょう。あくまで商品データはその販売会社に帰属するものであり、コンプライアンスではないですが、最大限の配慮を行うのは当然必要になります。

API非対応のお店にも一つ一つ対応することで、既にAPIを活用しているWEBサービスとの競合優位性にもつながります。

Point.3 インセンティブ設計も可能

単純な比較サイトであれば以上、というところですが、ユーザーが会員登録を行い、自社のリンクを経由した上で購買してくれた場合にキャッシュバック等のインセンティブをつけるという一歩進んだ運用も可能です。少しでもお得にしたい、というユーザーは意外に多く、Win-Winの関係が実現できるのであれば、こうしたインセンティブ型のサイト運営も視野に入ってきます。

ただ経由するだけ、というのではユーザーにとっての価値は低くなってしまうので、欲しいものを保存して管理できたり、サイトを横断して機能や価格を比較、ある一定条件での通知メールを受信できたりするようにするなど、会員ならではの便利な機能を充実させましょう。会員になることのメリットをいかに高められるかが、サービスが人気を集められるかどうかの分かれ目になります。こうした独自メリットの強さが、ビジネスの成否を左右するとも言えるかもしれません。

溢れる情報のキュレーターに

情報を紡ぎ、価値あるものに整理してくれるキュレーターという存在が注目を集めています。大手のショッピングモールを中心に、商品が溢れ、普通の人には使いにくいレベルに達していると言える中、存在価値を発揮するのが今回のようなキュレーター的WEBサービスではないでしょうか。

自ら商品を提供しているわけでもないので、有用な情報をいかに提供できるか、どれほど便利な機能を提供できるかといった土俵での勝負になってきます。道のりは長くとも、確実に情報を充実させ、他にはない情報も統合していくことが成長の秘訣のように感じます。

開発スタッフのコメント
還元型サービスが溢れてきています。各社ともにインセンティブをもうけることで自社サービスを使ってもらおうと躍起になっている中でサービスとして埋没してしまうリスクが高いのも事実です。かつては情報量だけで戦えた状況が、使い心地やかっこよさ、のような部分での勝負に移行してきている部分もあり、アフィリエイトサイトだからといって、規模を狙うのであればそういった面もケアする必要がでてきたと言えます。