会議室資産の運用効率を最大化
貸し会議室に代表される賃借サービスは、いかに資産である会議室の稼働率を高められるかが肝になってきます。そして同時に、その管理をどれだけ自動化し、ユーザーにも管理スタッフにもストレスを強いない状態を構築できるかも重要です。もちろん業務ミスや受注ミスを引き起こすことは絶対に避けなければなりません。
保有している会議室が、すべて単純に1室1室としてしかカウントできないものであればシステムもシンプルですみますが、部屋を連結して使用したり、オプションの設定があったり、さらに複数の拠点の会議室を1つのシステム状態で管理したかったりした場合、システムを柔軟に設計する必要があります。十分にシステムが柔軟でなければ、業務が破綻するのみならず、ユーザーの利便性を大きく損ねてしまいます。逆を言えば、こうしたサービスをうまくシームレスに連携することができれば、利便性も効率性も高い、競争優位性につながるシステムがうみだせることになります。
今回は貸し会議室の予約サイト・管理システムをどのようなポイントに気を付けながら構築すれば、複雑な要件にも対応でき、かつ柔軟な運用ができるのか、考えてみたいと思います。
Point.1 ユーザーには1IDで横断利用を可能に
既に複数拠点に貸し会議室を保有している場合はもちろん、現在は一拠点で貸し会議室サービスを行っている場合も、一つのIDとパスワードで横断的にログインできるように設計します。ユーザーからすれば複数のログイン情報を使い分けなくて済むことで利便性があがりますし、請求をまとめたり、ユーザー管理等でもメリットが大きくなります。情報をまとめて閲覧できたり、複数の予約を簡単にとれたりするので、ユーザー側からすると当然のように期待する機能の一つでもあります。
その一方で、運営側にもメリットが多くあります。システム投資が拠点毎にかさんでいかないので、良い物件さえ確保できればスピーディーに拠点を増やしていくことができます。最初にかかる費用も、運用・メンテナンスにかかる費用も結果として大きく抑えることが可能になります。一気にビジネスを拡大したい、というときに、システムが足かせにならないのは、地味ですが重要な点だと考えます。
情報管理上も、権限を細かくわけることで、A拠点のものはA拠点のスタッフにしか見せないという制限もできますし、コールセンターでまとめて予約を受ける場合には、全拠点の情報をアクセスできるようにするといった制御も可能です。組織の形態や物理的な位置、求められる情報管理のレベルにあわせて、柔軟な仕様を設計できます。
Point.2 顧客データは他サービスと連携可能に
貸し会議室を中心として周辺サービスをビジネス化されている会社も多いのではないでしょうか。貸し会議室の管理システムをそれだけで独立させて運用するのではなく、他サービスでもそのまま利用できるように統合します。こうすることでユーザーが何度も登録の手続きをしなくてよくなりますし、違うサービスへ申し込む際のハードルがぐぐっと下がります。
例えば貸し会議室とあわせてレンタルオフィスやシェアードオフィスを運営されているところも多いと思います。こうした業態であれば、レンタルオフィスの利用企業には貸し会議室の利用料を割引くなどの施策があることも多いと思うので、システム内でそうした複数の料金体系に対応できるようにしておくことが重要です。
同じシステム上にモジュールのように違うサービスを拡張していく前提で設計することで、将来的な事業展開に幅も深さも持たせることができます。結果として、顧客あたりの売上を高めるクロスセルが期待できます。顧客としても一つのアカウントで横断的にサービスを利用できることのメリットは大きいので、検討する価値はあるのではないでしょうか。
Point.3 予約の検索性・フローを徹底改善
ユーザーが自分の好きな日、好きな会議室の空き状況を簡単にチェックできるよう、予約サイト上に検索機能を実装します。この検索機能の機能性や予約申し込みの際のスムーズさを徹底的に追求します。ユーザーができる限り離脱しないようなフォーム設計にするのはもちろん、誤った情報登録を行わないような自動チェックも充実させるべきです。
日にちや会議室のサイズで検索できるのはもちろん、複数の予約をまとめて一度にできるなど、ヘビーユーザーの手間を低減する仕組みも実装します。また、施設予約の検索機能は乱暴に作るとレスポンスが著しく悪くなることが多いだけに、データベースのデータの持ち方やインデックスの張り方、検索プログラムの書き方まで、検索スピードに徹底的にこだわり、ユーザーがストレスフリーで空き状況を探せるようにします。
よく使う予約パターンを保存できるようにしておくのも一つでしょう。毎週何曜日、ですとか、毎月何日は、といった予約もあり得ますし、採用シーズンの決まった時期にいつも部屋をおさえるといったユースケースにも対応できます。
独自システムでユニークな価値を
ひとえに貸し会議室と言っても、その運営形態やサービス内容、こだわりのポイントまで千差万別です。自社のユニークさを最大限に活かすために独自システムを構築するというのは合理的な判断だと思います。
月額利用のASPサービスを利用するのも有力な選択肢ではありますが、「こういうことを実現したい!」という強いこだわりがある場合は独自システムの構築をお勧めします。高機能なサーバーの費用も安くなった今、システム投資が競合と差別化するために大いに役立つ時代がやってきているのではないでしょうか。