共有する時代

シェアリングエコノミーという言葉がうまれてしばらく経ち、持たないこと、が一つの大きなトレンドになっています。カーシェアリングの例をだすまでもなく、移動手段もどんどんと持たない方向になっており、都市部ではますますその流れが加速しています。実際、都市部では特に駐車場代に代表される維持するためのコストが非常に高く、車を持つということ自体が贅沢な行為になりつつあると言えます。

その流れの中、集団での移動手段にも少しずつ変化が訪れてきています。空港へのリムジンタクシーなどはタクシー会社が運行していますが、ある地点からある地点へ、より柔軟に送迎バスを運行してくれるサービスもうまれつつあるようです。需要が大きく見込めない地方ではこうしたオンデマンド型に移行していく予測もあり、公共交通も含めて、移動手段の未来のかたちが模索されていると言えるかもしれません。

今回は、こうしたオンデマンド型の送迎バス、タクシーサービスのシステム開発について考えてみたいと思います。いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 マップからの地点指定で検索

こうしたサービスの肝は言うまでもなく使い心地です。理想的にはマップから地点を指定して、どこからどこまでかで費用の算出や予約可能なスケジュールを表示する方式です。この方式はぽちぽちと操作しやすいですが、スマートフォンでの操作時に正確な操作が難しいという面もあります。任意の位置にピンを指定して、ぐらいの操作粒度が限界かもしれません。

他にも住所で指定してもらう方法も確実です。入力された二点間の住所をもとに、当日の運行計画と照らし合わせて予約の可否を判定します。このあたりはいかに効率的な運行ロジックを書けるかが重要です。もちろん、メートル単位で計算する必要はなく、ある程度の範囲での計算で十分な場合も多いでしょう。利用者としても1円単位での費用を知りたいというよりは、目安となる金額を知りたいケースが多いはずなので、その精度で問題ないと考えます。

Point.2 定期運行に対応

送迎バスとなると、通学や通勤のように、「タクシーを毎回利用するのは辛い」「ある程度の人数が同時に移動する」といった需要がとりこめます。こうした人たちには定期予約といった機能を解放し、たとえば平日すべて、といったかたちで予約やディスカウントを行ってしまう方法がおすすめです。

朝や夕方に需要が集中するので設備の稼働率という意味ではコントロールが難しい面もありますが、一度に移動する人数の下限を決めて運行するなどして、一運行あたりの収益を確保する等の方法で対策するのも有効です。自前の車両だけでは限界がすぐに来ますので、朝や夕方の時間だけ、バスを余らせている事業者との連携を深めるのも一つでしょう。

予約だけして乗らないというのは空席を作ってしまいますので、定期予約でディスカウントを行う場合には、先にまとめた分の支払いを受けるのが良いでしょう。先払いの期間にあわせて割引率が変動すれば、より長期での利用予約につながります。

Point.3 すべて事前決済

運行中の時間ロスやドライバーの負担を減らすため、利用料金はすべてキャッシュレスにし、事前精算を原則にしましょう。当日急ぎで、という場合でも、決済はWEB/アプリから行ってもらうよう徹底することで、料金収受の手間が減るのはもちろん、釣り銭準備の手間や、ドライバーによる不正の防止といった効果が見込めます。決済をもしすべて事前決済や事後決済にできれば、料金収受に関わる一切が劇的に効率化するため、ドライバーの負担はもちろん、運営スタッフの負担も大きく減少するでしょう。

一度利用すれば継続的に利用してもらえることが多いので、安全なかたちで決済がしやすいように配慮しましょう。決済代行会社間でのみ有効なトークンのかたちでカード決済情報を保持しておけば、情報漏洩のリスクを無くしながら利用者の利便性を高めることができます。決済代行会社の開発者向けサービスには便利なものも多いので、積極的に活用することをお勧めします。

いかに効率的に切り売りできるか

シェアリングエコノミーは、切り売りする時代と言えるかもしれません。従来はいかに大量に買ってもらうか、ボリュームの時代でしたが、1時間単位だったレンタカーが15分単位のカーシェアリングに変わっていくように、どんどんと切り売りする粒度が細かくなってきています。

この状況下で差異化できるかどうかは、いかに効率化できるかです。切り売りと効率化は相反する概念のため、普通にやると収益が悪化します。この中で事業運営含めた効率的な仕組みを構築できるかどうかが問われているとも言えます。安易なサービスの切り売りの前に、十分な効率化が可能か、勝算はあるのか、しっかり検討してみてください。

開発スタッフのコメント
過疎化が進む地域ではますますそうですし、都市部でも特定の用途を共有する集団に対して、より小さな単位での移動手段が存在感を増していくことが予想されます。コストの面からも乗り合いバスは理にかなっており、予約や運用の仕組みを高度化できれば、事業としての不安定さを軽減できるのではないでしょうか。利用層によっては効率性を多少犠牲にしないといけない局面も出てくるかもしれませんが、システムを有効活用することで高度なオペレーションが実現する分野でもあります。