息をするように読む

読書の価値が改めて見直されています。読書習慣のある人とない人で生涯年収に差があるだとか、様々な研究がなされていますが、その研究結果を待たずとも、読書が人生を豊かにするということに反対する人はあまりいないのではないでしょうか。小説や実用書、そのジャンル的な好みはあれど、人類が培ってきた知や美を簡単に得られるエンターテイメントとして、読書が今後も愛され続けていくことは想像に難くありません。

電子書籍は端末側の進化も大きく、確実にその利用数を伸ばしています。一方でまだまだ紙ベースの本の流通も多く、まだまだこの混在は続くことが予想されます。電子書籍が普及し始めたときは、このまますべて電子書籍に置き換わるなどと声高に叫ばれましたが、紙の需要は思ったよりなくならず、電子書籍サービスの終了などの背景もあって、このまま電子書籍と紙の本が共存していく未来が当面は続くことが予想されます。

息をするように本を読む多読家の方向けに、インターネットを活用したサービスが多数登場しています。読んだ直後の感動や学びを書き留めるサービスとしてレビューや口コミを投稿するサービスが人気を博していますが、今回はこうしたサービスのシステム構築について考えてみたいと思います。早速、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 スマホ入力に便利な機能を実装

本当にしっかりとしたレビューを書くのであればパソコンからかもしれませんが、お気に入りのカフェなどで本を読んで、そのままカジュアルに読書ログをつけていくのであればスマートフォンでのメモが便利です。こうした出先入力を簡単にするために、スマートフォンでの入力に便利な機能をできるだけ多く用意しましょう。

例えば、スマートフォン内蔵のカメラでバーコードを撮影すると該当の本を自動的に呼び出してレビューが書けるようにしたり、書籍の表紙画像を自動で設定してくれたりといった機能を用意するだけで、とても便利になります。他にも読書家が欲しいような細かい機能もあると思いますので、そのあたりは自社内や、ターゲットユーザーへのヒアリングを通じてしっかり吸い上げるのも良いでしょう。

また、本の注文メールを貼り付けると自動的に書籍名を抽出して登録してくれる、というのも良いでしょう。その販売サイトがAPIを提供しているような場合には、自動的に取得するような機能も検討可能です。読書記録以外の部分は、何も頭を使わずにできるような機能を用意してみてください。

Point.2 視覚化で楽しく

読書のように、淡々と積み重ねていくものは、その積み重ねが視覚化されることがさらなるやる気につながります。グラフ化、バッジ付与、色々なやり方がありますが、ほどよいゲーム性がキーワードになります。

あまりにゲーミフィケーションを追求してにぎやかでうるさい、いわば煽りすぎるサービス設計にするのは危険です。読書ログという性質上、適正なレベルというのはソーシャルゲームとは違う位置にあるはずです。レビューの数やジャンルのカバー度、他のユーザーとの簡単な比較等、あくまで控えめなレベルにとどめるのが良いのではないでしょうか。たまに振り返れば遠くに来たものだ、という程度がちょうど良いと思います。

読んだ本のカバー写真が視覚的に積み上がっていくのも良いでしょう。積ん読の本が文字通り積み上がっているのもおもしろいかもしれません。シンプルにこうした遊びがないサービスも良いかもしれませんが、本を読む行為が楽しくなるような仕掛けの検討もしてみてください。

Point.3 提案での拡がりが肝

自分が選んだ本を自分が選んだペースで淡々と読んでいく、そういった人に便利なサービスであることは絶対条件ですが、せっかく多数のレビューが集まるのあれば、そのデータを活かして、もっと読書体験がおもしろくなるような提案機能を積極的に実装していきましょう。

わかりやすい例であれば同様の好みを持ったユーザーがどういったものを他に読んでいるかといったお勧め機能が考えられます。同じ著者であったり、同じようなテーマであったりと、提案のアルゴリズムの組み方はいろいろな方向性がありえます。本の販売サイトでも同様の機能が用意されていることもありますが、積読は含まずに読んだ人だけのデータなので、より精度が高いことが期待できます。

他にも新刊の情報がタイムリーに届いたり、読んだ後の本をリセールするのに便利な機能があっても良いでしょう。読書体験はまだ見ぬ良書との出会いで加速します。そういった良書との出会いも含めて提供できるサービスを目指してみてください。

一人のエンターテイメントが拡張する体験

読書は今も昔も一人で楽しむエンターテイメントです。ですが、インターネットの活用により、そのエンターテイメントが拡張しつつあります。

読みたい本との出会い、また、同じような興味を持った人との出会い。従来の読書体験では考えられなかったよう展開がまだまだ考えられるようになってきました。単なる記録を残すためだけのサービスを超えた、読書体験を新しい次元に持って行くようなシステム・サービスを構築してみてください。

開発スタッフのコメント
本に限らず、感想、というのは一つの立派なコンテンツです。本を媒介にしたこうしたアウトプットは、鮮度の高いうちに残すにこしたことはありません。システム設計として入力のしやすさや、手間の少なさは重要な指標になるでしょう。同時に、長く続けていくための楽しさや気持ちよさにも気を遣ってみてください。手に馴染むような質感がサービスに加えることができたとしたらとても素晴らしいと思います。