働き方が多様化し、社会全体が在宅勤務を取得しやすい雰囲気になりつつあります。ある程度の規模で福利厚生のしっかりした企業であれば日数の制限はあれど、在宅勤務はもはや特別なことではなくなってきたのではないでしょうか。小規模な企業やベンチャー企業でも、優秀な人材を確保するために地理的な制約や時間的な制約が緩くなるリモートワークの活用に積極的です。

とはいえ、リモートワークには、従来の集合型勤務スタイルとは違った管理の仕方や、違ったコミュニケーションが求められます。あまり考えずに運用すると、パフォーマンスがあがらないのはもちろん、社内全体の士気にも影響が起こりえます。導入はしたものの、結局しばらくしたら元通り、というパターンにならないためにも、しっかりとした取り組みが必要なのは言うまでもありません。在宅勤務から再びオフィス勤務前提に戻すと、それはそれで従業員からの反発を招くことが多いため、どこでバランスをとるべきかも判断に迷うポイントになるでしょう。

在宅勤務・リモートワークを成功させるうえで、気をつけるべきポイントについて、考えてみたいと思います。

Point.1 在宅勤務者を過度な管理ストレスにさらさない

在宅勤務・リモートワークというのは、自宅などの快適な環境で仕事ができて楽、というイメージがあるかもしれませんが、実際には電話やメール、チャットがひっきりなしになり、会社以上に「管理されている感」が強くなる傾向があります。

会社で仕事をしているときには、四六時中監視されていることもなければ、複数人から同時に話しかけられることはないでしょう。しかし、在宅勤務の場合、複数人から同時にチャットで話しかけられ、当然のように素早いレスポンスを求められてしまいます。会社にいれば「あ、今はちょっと忙しそうだな」という配慮が一切なくなるため、油断すると在宅勤務者は会社にいるとき以上の管理ストレスにさらされてしまいます。バーチャルオフィスサービスを使っている会社であれば、こうした見えない問題は多少解決されるかもしれませんが、また別の監視されている感がでるのが悩ましいところです。

こうした状況に魔法のような解決策はないため、会社にいる側のスタッフのリテラシーをあげていくことに尽きます。「在宅勤務は楽しているんでしょ」といううがった見方がはびこるようでは危険です。ちょっとした何気ない一言が在宅勤務者を追い込んでいきますので、在宅勤務・リモートワークがどういったものか、表には見えないストレスの部分も含めて社内全体で周知していくことが重要です。

出社している人が正しくて在宅勤務者がイレギュラー、といった考え方では行き詰まるので、会社以外の人が主である、という位置付けが適正でしょう。どこにいても同じ条件、同じ意識で働けるのが理想なだけに、意識のスタートポイントを揃えてみてください。

Point.2 無理に適用範囲を拡げない

在宅勤務・リモートワークに向いている仕事と向いていない仕事があります。子供の病気など、緊急事態的な在宅勤務では仕方ありませんが、長期にわたる在宅勤務・リモートワークが機能する仕事かどうかは見極める必要があります。

細かい報告や相談が必要なものや、作業管理が定量化できないものは基本的には在宅勤務やリモートワークには向いていません。エンジニアやデザイナーなどのような専門職は成果が定量化しやすいので向いているといえます。ただ、こうした定量化しやすい職種であっても、1日の仕事量をコントロールできる組織でなければ、在宅勤務者に過度の仕事を押しつけることになり、見えない残業をうみがちです。結果として在宅勤務者の燃え尽きを招いてしまいます。ストレスを低減するための在宅勤務がいつのまにかストレスを与えるものになってしまっては本末顛倒です。在宅勤務者の性格によっても、ついついオーバーワークになってしまいがちな傾向がでるので、人によって運用を変えることができるならそれが理想的な場合もあるでしょう。

その仕事は在宅勤務・リモートワークに向いているか。1日の業務量を適切にコントロール・管理できるか。この2つの視点で、自社が適用できる範囲を設計してください。

Point.3 外注化もあわせて進める

在宅勤務・リモートワークに向いている仕事は、外注化しやすい仕事と共通点が多くあります。事業の核となる部分であれば簡単に外注とはいきませんが、単純な作業や、一定のレベルに達していれば問題ないような類の仕事であれば、外注化に踏み切るのもお勧めです。

コスト削減かクオリティアップにつながらないのであれば意味がありませんが、多様な働き方、多様な人材活用という意味で、視点を広く・高く持つことも重要です。在宅勤務者にとって働きやすい会社は、外注スタッフにとっても連携しやすい会社であることが多いため、業務の効率化のオプションが増えることになります。積極的に活用できないか検討してみてください。

もっと楽しく働ける職場づくりを

事業は人です。優秀な人が活き活きと働けることが、会社が成長し続けていく大前提ではないでしょうか。在宅勤務もリモートワークも、つまるところはより働きやすく、より楽しくするための手段です。負の側面はしっかりと対策したうえで運用することで、今以上に働きがいのある職場に生まれ変わることは十分に可能です。「今風の会社のトレンドでうちの会社には関係ない」とあきらめず、場所に依存しない人材活用の方向性を是非模索してみてください。