伝統と革新の狭間で

和菓子は日本古来からのスイーツとして人気を保ち続けています。今でこそ洋菓子にかなり市場のパイを奪われている感はありますが、それでも一定のマーケットを確保し続けているように感じます。

伝統に立脚しながらも、新しい味、新しい菓子の創造へ挑戦しているお店もあり、まさに伝統と革新が入り交じるような時代になっているのではないでしょうか。この傾向と洋菓子との良き競争環境はまだまだ続くものと思われます。逆に言えば、こうした競争環境で適応できないお店は淘汰されていくということを意味します。ただでさえ高齢化が進展しており、今までの客層を相手にし続けていると先細りなのは目に見えて明らかです。

今回のテーマは、こうした和菓子屋のホームページ制作や、ネットショップ(通販サイト)制作についです。どういったところに注意することで、お店のブランディングにもつながるものを構築できるのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 通販対応も非対応も織り交ぜて紹介

ホームページは商品を紹介する場として最適です。ここはホームページとネットショップと明確にわけて構築するのではなく、ホームページとネットショップの境目をあまり意識せずに閲覧できるように統合して構築するようにしましょう。情報管理上も、あちらこちらに分散してしまうよりも、同じ場所にまとめられるほうが管理しやすいというメリットもあります。

商品一覧のページにいけば、現在取り扱っている和菓子の一覧を表示し、通信販売に対応しているものも、対応していないものも織り交ぜて紹介するようにしましょう。通信販売対応のものはわかりやすくその旨をアイコンか何かを併記し、そのままショッピングカートに追加できるようにします。理想的にはすべてが通信販売対応であることですが、保管方法や製造方法の絡みでそれが難しい場合もあると思います。通信販売限定の商品を用意することも有効でしょう。

また、商品一覧のページ以外にも、季節のご提案と称した特別ページも設け、月ごとの限定菓子がしっかりと訪問者の目につくように配慮してください。

Point.2 メールマガジンに積極誘導

ホームページをカタログと同じように考えて、商品を載せて、買えるようにしておけばそれでOKと考えている方がいらっしゃいます。それではホームページの存在価値を活かし切れておらず、非常にもったいないと言わざるを得ません。

その時は買わなくてもお店に対して好意を持って下さった訪問者に対して、「買う」以外の選択肢を提供することは重要です。それが「メールマガジン」であり「ブログ」だと思います。ブログは少し間接的な顧客リストになりますので、可能であればメールマガジンを整備することをお勧めします。季節限定で売り切れとなった商品も、再入荷通知を希望できるようにしたり、再販希望をリクエストできるようにしたりすることで、お店とのコミュニケーションが生まれ、次につながります。

とはいえ、放って置いて登録されるほどメールマガジンは甘いものでもありません。お店自体によほどの知名度があったり、カリスマスタッフが存在するなら別ですが、普通のお店ではあり得ないことだと思います。こういった場合は、ちょっとした誘因をつけることでメールマガジンへの登録を促しましょう。それがネットショップで使える10%OFFクーポンでもいいでしょうし、特別試食会への招待券でもいいと思います。広告予算として可能な範囲で最大の還元策をもって、メールマガジン購読へ誘導してください。

加えて、ブランディングの観点からも、動画で製造方法を紹介したり、職人の息吹を感じられるような、艶のある情報発信を行うのがお勧めです。昔ながらの工房があるからこそできる情報発信があると思いますので、写真や動画によるアピールを欠かさないようにしてください。

Point.3 店舗限定品もうまく使い分け

ネットショップがあるからといって、何でもかんでもネットショップで買えてしまうのも考え物です。既存のものでわざわざ店舗限定品を設定するのはあまり意味がありませんが、新しく店舗限定のものを開発することはお勧めします。

例えばより鮮度を重視したものや、形状維持のために輸送ができないものなど、通信販売にそぐわないもの、という切り口で自由に商品開発することでおもしろい新商品が生まれるのではないでしょうか。店舗限定にする明確な理由があれば、顧客の納得度も高まります。逆に、特に明確な理由がないものは、どんどんと通信販売に対応させていくべきとも考えられます。

店舗にいかないと出会えない魅力的な商品と、ネットショップでも手に入る定番の味の組み合わせを通じて、顧客基盤と売上の両方を伸ばしていってください。

挑戦あるのみの和菓子

和菓子屋が店をたたむという話もよく聞く話になってきました。百貨店や路面店でも、有名チェーン店が勢力を拡大しており、小規模の和菓子屋にとっては厳しい環境が続いています。こういった環境だからこそ、大手以上にうまいかたちでインターネット販路を活用する必要があるのではないかと感じています。できる範囲で工夫をしていくことをやめず、絶えず挑戦を続けていってください。

開発スタッフのコメント
行事需要や贈答需要は根強いものの、待っているだけでは売れない時代になってきました。InstagramやX(旧Twitter)でのバズを意識した商品開発など、洋菓子と変わらないマーケティング姿勢が求められているように思います。変わらないことも重要ですが、変えるべきことはどんどんと変えていくことも伝統産業の根幹だと思います。今までのやり方とは少し異なることにも果敢に挑戦してみることをおすすめします。