入居者満足度を高めるために

タワーマンションなどでは居住者向けの管理システムが普及してきました。オフィスビルも大規模なビルであれば何かしらのシステムが稼働している場合が多いようですが、中小規模になると紙やメールベースでのやり取りのところも多いのではないでしょうか。

電気工事や消防点検などの連絡事項の伝達や、荷物の搬出/搬入の手続き、各階での工事日程申請など、申請業務や連絡業務だけでも年間を通すと結構な量になります。また、共有のスペースがある場合はその利用申請を管理するのも手間のかかる作業です。利用率が低いからと、昔ながらのやり方を続けているとしたら、入居テナントの中で不満がたまっていることに気づいていないだけかもしれません。

今回のテーマは、こうしたオフィスビルの入居テナント向けの管理システムについてです。どういった機能を実装し提供すれば入居者満足度を高めることができるのか、いくつかのポイントで整理してみましょう。

Point.1 専用ポータルサイトを開設し、各種機能を統合

まず、入居しているテナント向けの専用ポータルサイトを開設します。ログインIDとパスワードを発行し、入居テナントごとに権限を設定しアクセスできるようにします。オフィスビル内のネットワークからのアクセスに限定しても良いのですが、専用線を引く会社もあると思うのと、ネットワーク内にサーバーを設置・保守するコストや手間を考えてクラウド上に構築してしまいましょう。

ポータルサイトには連絡事項が掲載され、そこからオフィスビル全体に関わることや自社に関わることをチェックすることができるようにします。通知設定を変更することで登録しているメールアドレス宛に通知メールを受け取ることができるようにし、チェックし忘れを防止します。

各種申請機能や共有施設の予約などもポータルサイトから行えるようにし、可能な限りペーパレス化しスピーディーに各種処理が行えるようにしましょう。従来の回覧や、書類の掲示よりも、閲覧率の向上が見込めますし、オフィスを長期間不在にしている相手にも届けることができるため、ポータルサイトでの表示に加えて、メールでの配信も検討すると良いでしょう。こうした作業がテナントの入れ替えのたびに確実に行われるようにするためにも、テナントの管理も簡単に行えるようにしておくべきです。

Point.2 連絡事項の投稿/編集はブログ並に簡単に

ポータルサイト上に掲載する連絡事項の更新を担当するスタッフがITに詳しいとは限りません。そこで、ブログを投稿するような感覚で連絡事項を投稿し編集できるような管理画面を構築します。PDF等のファイル添付にも対応し、申請書付きのお知らせの投稿も簡単にできるようにします。

また、掲載と同時に入居テナントの連絡先メールアドレスに一斉通知する機能も実装しておき、特に重要なお知らせが見逃されないようにするプッシュ動作を行えるようします。情報発信のレベルを使い分けることで、情報の周知徹底を可能な限り推進しましょう。メールアドレスの変更もありえるため、そうして情報の変更機能をもうけておけば、周知徹底は必要なものの情報更新が期待できます。緊急災害時の連絡手段としても機能します。通知先のメールアドレスはテナント側で変更できるようにしておくことで、担当者が変わったために届かなかった、などというトラブルを未然に防止することができます。

Point.3 共同契約や共同購入を推進

さらに進んだ取り組みとしては、テナント同士の交流を促進し、共同契約や共同購入といったアクションを推進するプラットフォームになることも考えられます。ポータルサイト上に共同で行うアクションの内容を掲載し、それに対して同調するテナント企業を募集するような形態が考えられます。

経費精算の方法含め、最終的なコスト負担の調整が必要ですが、同じビルに入居しているもの同士、共通化することでコストカットできる部分があると思います。資材購入からサービス契約まで、スケールメリットが活きることもでてくるのではないでしょうか。他のビルにない価値を提供できれば、入居率の改善につながる可能性もあります。おもしろい取り組みを行なっているビルとして話題になれば、思わぬ集客効果が期待できるかもしれません。

実験的な取り組みにはなりますが、こうした共同アクションを支える機能を実装することも可能です。付加価値となる管理システムの一つのかたちとして検討してみてください。

受け身ではなく攻めのプラットフォームへ

オフィスビルの設備自体は、なかなかすぐには改善したりできません。費用がかさむことばかりですし、新しくできたオフィスビルにはどうがんばっても勝てない部分もあります。ですが、こうした状況下で何もできないわけではありません。テナント向けポータルサイトの機能を充実させることもその一つだと思います。

オフィスビルの付加価値はこうした入居中のサービスも含めての価値だと思います。建てた後のサービス改善というテーマに、システムを是非有効活用してみてください。

開発スタッフのコメント
不動産運営はどちらかというと保守的なアプローチが多く、トラブル防止や解決に力が注がれることが多いのは事実です。ただ、どんどんと古くなっていく建物、設備のハードを補うのは、ソフト面だと考えます。このオフィスビルにしかない仕組み、利便性をうまく作り上げることができれば、継続率の向上にもつながるでしょうし、評判を聞きつけて入居率が向上することも期待できるのではないでしょうか。